ACT.107 ふたりの食事(Ⅰ)
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落涙の聖泉前の人集りから抜けて数分。
ライとセリアの間には奇妙な沈黙が流れていた。
その理由は、タイミングを見失って未だに繋いだままの手にあった。
緊張と恥ずかしさと、そして嬉しさを上手く取り繕えていないセリアは完全にのぼせ上がっていた。
一方のライは、セリアを離すまいとしながらも周囲に意識を割いていた。
そして先程から街行く人々を観察した結果、ノアが言った通りに私服の聖騎士たちが数名紛れていることにも気がついた。
一般の聖騎士とライたち粛清騎士は命令系統も役割も異なる為、共に仕事をしたことは殆ど無い。
だが、修練場の常連であるライはまた別に何人か顔見知りがいたりもしていた。
先程からそれとなく周囲を警戒していたが、それ相応の人数が配備されているのなら一先ず安心かとライは小さく安堵する。
「ところでセリア」
「は、はひっ」
未だ平常心とは程遠い精神状態のセリアは、不意にかけられた言葉に上擦った声で返事を返す。
その様子を少し不思議にライは思ったが、彼はまぁ良いかと構わず言葉を続けた。
「僕たちは今、どこへ向かっているの?」
「──あ」
ライの素朴な疑問で、セリアはようやく我にかえる。
そういえばなんとなくでこっちに来ちゃったけど──と。
「あ、ごめんライくん! これからお昼ご飯食べに行こうと思ってたんだけど!」
「じゃあ"驢馬の鬣亭"に一旦帰るの?」
「いや絶対に嫌だから!」
ライの口から飛び出たまさかの選択肢に思わず強く否定するセリア。
「|"驢馬の鬣亭"《ウチ》がベネトナシュで一番美味しいお店なのはわかりきっているけど、それはそれとして、だよ!?」
「──ふふっ」
表情をコロコロ変えながらワタワタとそう主張する彼女の姿が面白く、ライは少し笑った。
年相応の少年らしい笑顔であった。
「それじゃあ今日は、二番目か三番目のお店に行ってみるのかな?」
「そ、そうね確かこの辺だと──あ、あと二番目三番目とかいう話はここだけにしておいて?」
こそっと付け加えられた言葉を聞いたライは、思わず大笑いをしてしまった。




