ACT.103 都市心中の蟲(Ⅰ)
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「えー、緊急の呼び出しに応じて貰えて感謝します」
八つある円卓の席に座った三人の黒騎士たちに向かって、カーティス特務神父はそう言って軽く頭を下げる。
頬杖をついてそんな彼を眺めるのは、序列七位のノア・ローだ。
「良いッスけど、ジブンはエルトール伯──あ、元伯爵か。その件に関する仕事がまだ全然終わって無いッスよ」
ジトっとした半ばカーティス特務神父を揶揄するような視線と声色。
そういう反応を返されることは見越していたにもかかわらす、実際にされると凹むとカーティス特務は内心しょぼくれる。
どの組織だろうと、中間管理職というのは心労の絶えない役職である。
「申し訳ない、それより優先順位が高い仕事が発生しましたので」
「また転生者か?」
切り揃えられた顎鬚を摩りながら問いかけるのは序列五位ハワード・フーカー。
顎鬚と剃髪が特徴的な屈強な体躯を持つこの男は、アスラン・アルデバラン亡き今は最も在籍期間の長い粛清騎士である。
彼からの質問にカーティス特務は頭を振って否定する。
「それなら、あとは邪教関係かな」
カーティス特務の反応を見て、消去法でこれしか無いと口にするのは序列四位レオーネ・ゴドウェン。
つい先日に激闘を繰り広げていた筈だったが、既に気力体力充分といった様子だ。
その人間離れしたフィジカルに若干引きながらも、話が早いとカーティス特務は言葉を続ける。
「えぇ、邪教──混沌教団の構成員が何名かこのベネトナシュに侵入したようです」
──混沌教団。
聖教会が信仰する秩序と希望を司る女神の対となる、混沌と真実を司る男神を信仰する集団。
男神の使徒である転生者を崇める性質もあり、聖教会からは邪教と認定されて粛清対象に指定されている。
「何故奴らが聖教会の総本山に?」
「理由は定かではありませんが、破壊活動などの可能性もありますので可及的速やかに排除をお願いします」
そして、最も聖教会が危惧しなければならない事項がある。
「彼らが、ベネトナシュの人々を転生者にする前に」
混沌教団には、人の前世を想起させる秘術が──転生者を造る術があるという噂があった。




