ACT.101 落涙の聖泉(Ⅰ)
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「さて、さっそく最初の観光名所がこちら!」
気を取り直して、みたいなあからさまな元気でセリアは両手を広げる。
そんな大袈裟な仕草で彼女は、到着した最初の目的地を紹介する。
「落涙の聖泉!」
そこは、ベネトナシュの観光名所の一つである不可思議な泉であった。
幅が大体20mくらいのほぼ円形に近い形をしていて、泉の中数カ所から懇々と青い水が湧き出ている。
──そう、青い。
この泉から湧き出る水は、何故か絵の具を溶かしたかのような半透明な青色をしているのだ。
「女神様が創世の片割れであった男神を追放した時に落とした涙の跡から、この泉が湧き出した──とかなんとか?」
そう言いながらセリアはライの手を引いて、泉を囲む観光客の山に入り込む。
彼女の話を聞きながら泉の淵に立ち、中を覗き込む。
湧水の色は、涙というにはあまりにも青過ぎて。
「──これが本当に涙だとしたら、ワザとらしいというか嘘くさいというか」
うっかりそんな言葉が喉元まで出かけてしまい、ライは慌てて閉口する。
この場で聖教会の女神に対して不敬とも取られかねない言葉を口にする危険性をライは十分承知していた。
それでもなお、口をついて出そうになったのはライの中で女神のイメージが聖女ステラの姿と重なって見えたからだ。
聖女ステラは確かにライを好いていて良きにはからってくれはするが、その真意はまるでこの聖泉のように不透明だ。
それゆえに、ライはずっと彼女に対して不信感が拭えないでいる。
そして、聖女と女神の関係性は聖教会内では──。
「それにしても、やっぱり不思議だよね」
ライの思考が聖女ステラに及びかけた時、セリアの言葉が彼を現実へ引き戻す。
「誰も何もしてないのに、自然とこんな色なんだって?」
不思議そうに、それに少しワクワクとした表情でライにそう語るセリア。
そして、ライは以前この聖泉の水についてある同僚から話を聞いていたことがあった。
「僕も聞いた話だけど、この水には──」
「──落涙の聖泉の湧水にはある金属が微量に含まれてて、それが光を屈折させた結果がこの色ッスね」
ライの台詞が途中で攫われる。
驚いたふたりがその声の方へ振り返ると、そこには軽薄そうな青年が。
ライにとっての歳上の後輩兼同僚であるその青年──ノア・ローは、ライに対してパチンとウィンクしてみせた。




