ACT.99 聖なる観光都市(Ⅱ)
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ライとセリアは合流した後、ある場所に向かうため大通りを歩く。
大通りは様々な露店が立ち並び、活気と賑わいに満ちていた。
「今日も賑わってるね」
笑いながらそういうセリアに、ライは頷いて返事をする。
周囲を見渡すと露店で販売されているのは、菓子や軽食、土産物だったりする。
ベネトナシュには聖教会の本部がある為、参拝や巡礼に訪れる信者が一年を通して大勢いる。
そんな彼らに向けた産業──飲食や土産に宿泊業などが盛んになっていった結果、ベネトナシュは王国随一の観光都市となった。
「それにしても、ライくんってベネトナシュに住んでるのに観光したことないなんて珍しいね」
ぽつりと、セリアがそんなことを言った。
「そうかな?」
「うん。私みたいに生まれも育ちも、って人でも何回か見て回ったりしてるもの」
可愛らしく小首を傾げてそんなことをいうセリア。
実際、彼女の言うことは最もだった。
ベネトナシュの観光は聖教会と密接に関わっている。
外から来た者だけに限らず、聖教の信徒であるならばどこかで必ず見て回るくらいのことはしていても不思議ではなかった。
ましてはライの所属は紛れもなく聖教会そのもの。
本来なら職務に関連する事柄である筈なので、最低限一度は見て回っているのが当然といえた。
「それ、は──」
セリアの問いに答えに窮するライ。
ここで何かしらの誤魔化しをするべきか一瞬悩む。
しかし結局、ライは──。
「──そんな余裕、僕には無かったよ」
──隠す事ない本音を答えた。
家族と故郷を失い、アスラン師匠に師事し始めてからずっと。
ライ・コーンウェルという少年に、余裕なんてなかった。
ずっとずっと臓腑の奥で煮えたぎるような憎悪が、身を焦がし焼き尽くさんとする悪意が染み付いていた。
その黒い熱がいつか自分の身体を焼き尽くしてしまう前に一刻も早く、一人でも多くの転生者を殺したかった。
邪悪な衝動と焦燥感に身を任せて走って走って殺して殺して。
──そして今、うっかり立ち止まってしまった。
立ち止まって、気がついてしまった。
ライ・コーンウェルには、ソレ以外に何もない事を。




