ACT.95 人間らしい営み(Ⅲ)
「それで、長期のお仕事が終わったからしばらくはこっちにいるのよね」
「そうですね、上司から休暇をいただきました」
手を引かれて有無を言わせずカウンター席に移動させられて、話を続けられるライ。
そこでいい機会だとライはカワード一家に質問をした。
「ところで、休みの日って何をするものなんですかね?」
「「「──ん?」」」
なんてことなさそうにスルッと話したライと、それを受けて頭上に疑問符をつけるセリアたち。
「普段は鍛れ──け、健康の為に運動したりするんですけど」
「確かにいつも朝に走ったりしてるね」
「今は怪我しちゃったので過度な運動は辞めろといわれてまして」
ライがそういうと、成る程といった表情でセリアが頷く。
セリアの代わりに口を開いたのは、父親であるカワード氏だ。
「なら普通に、それ以外の好きな事をすれば良いと思うよ」
カワード氏としては至極当たり前な事を言ったつもりであったが、一方のライは顎に手を当てて難しい表情で黙り込む。
「──好きな、こと?」
「趣味とか」
「──趣味?」
ライの予想外の反応に面食らったのは、カワード夫妻たちの方であった。
まだ少年と言っても許される年齢の子が、何が好きかもわからないと本気で悩んでいる風だったからだ。
「ここ数年ずっと仕事で、休みの日も仕事の準備と待機しかしてこなかったんで、あんまりそういうの無いんですよね」
「ライ君、聖教会って本当に大丈夫な職場──?」
聖教会の労働環境は基本的に優良である。
──粛清騎士以外は。
「そうかい、そうかい」
話を粗方聞いて、今まで黙ってカワード婦人が腕組みをして頷く。
そしてパンと大きく手を叩いて、何かを思いついたような顔をした。
「セリア、明日はアンタ休み!」
「え、何いきなり?」
何故か唐突に休めと言われたセリアは困惑しながら母を見つめる。
「ここは天下の観光都市のベネトナシュ、見るモノも楽しむモノも沢山あるわ。だから──」
そんな娘に対して、ニッコリと満面の笑みを浮かべながらこう告げた。
「明日、ライと一緒に遊びに行ってらっしゃい」
「お、おおおお母さん!?」




