ACT.94 人間らしい営み(Ⅱ)
「おかえり!」
セリアからの予想以上の歓待に少し面食らってしまうライ。
ただまぁ、悪い気はしないのでライも釣られて少し笑った。
「ただいまセリア。長いこと留守にしてたから、これはお土産」
持っていた菓子の包みを渡すと、彼女は目をぱちくりとさせた。
「え、ありがと──ってライ君の手!?」
ここに来てようやくライの様子、右腕の添木と包帯を見つけて小さな悲鳴が上がる。
「怪我してるの!? た、大変!?」
途端にワタワタと慌て出すセリア。
表でのそんな彼女の姦しい様子にようやく店の奥から若々しく恰幅のよい婦人と背の高い筋肉質の男性が顔を出す。
二人──カワード夫妻は、我が娘の忙しない様子に苦笑いを浮かべる。
「セリア、少しは落ち着きな!」
カワード夫人の声に驚き、ぴゃっと小さく跳ねるセリア。
驚いた後にムスッとした表情で母を睨むも、当人はどこ吹く風といった所だ。
「すみません、ちょっと骨折してしまいまして。治療は終わってるので、あとは安静にしていれば」
あくまで平気であると、痛みもないよと軽く腕を振ってみせる。
ソレを見てホッと安心したような表情を見せるセリア。
「よかった。でも、ライ君って聖教会では事務方の仕事をしてるんだよね」
「あ、うん」
「聖教会の事務って、危ない仕事?」
「いやいや」
聖教会では、ライ・コーンウェルの表向きの所属は第四内部監査係という架空の部署となっている。
ライのみでなく、粛清騎士は身バレしないように一部例外を除いて聖教会内では別の所属と肩書を持つことになっているのだ。
ちなみに今回長期間留守にしたのは地方支部の内部監査調査の為という言い訳になっている。
「僕はただ、階段で転んでしまって」
ライの誤魔化しに、セリアは訝しげな視線を向ける。
「前から少し思ってたけど、ライ君って怪我とか傷とか意外と多いよね?」
その指摘にぎくりと内心焦るライ。
「聖教会の事務って、案外危ないの?」
セリアの指摘にブンブンと勢いよく首を振って否定するライ。
実際、ライが危ない仕事をしているだけで、聖教会の他部署はちゃんと安静で白い職場である。
「危ないことはなるべくやめてね、私はライ君に何かあったら悲しいよ」
心の底からコチラの身を案じるようなセリアの言葉に、ライは少し言葉に詰まった。




