吾輩は狼である。断じて犬なのではない!
バン!!!
扉が勢いよく開いた。
その扉の先には、ついさっき見たあの犬がいた。
「え、あ゛!?なんでみんな集まってんだ?」
犬の疑問を無視して里香が叱った。
「コラ!マルコ!扉は優しく開けなさいっていつも言ってるでしょうが!」
「ごめんなさい。」
犬って、そんなに首曲がるんだ。
「分かれば良し。」
「ところでだが里香。」
「なんで、みんな集まってんだ?」
「あぁ、そのことね。アナタ聞いてなかったの?今日新人が来るって。」
「新人?そんなこと聞いてな...あーー!お前!」
「気づいてくれましたか、ポチ先輩!」
「誰だ!ポチ先輩って?」
「君のことですよ。」
「なっ!?吾輩の名前は、マルコ=ポチーロ・三世だ!」
「そ、そ、そうなんですか!?」
「そうだ!」
「でも、名前長いのでポチ先輩継続で良いですね!」
「うむ、分かってくれたら良い...って何も分かってないじゃないか!」
「ポチではない、マルコ=ポチーロ・三世だ!」
想像以上に怒るマルコ=ポチーロ・三世をなだめながら、里香が言う。
「まぁまぁ、いいじゃない。私達もアナタのことマルコって読んでるし。」
「それは、そうだが。」
「じゃ、じゃあ。ポチ先輩って読んで良いんですか?」
「いや、駄目だ。ポチ呼びはやめろ。」
「でも...。」
目をうるませながら訴える。
「ぐ、ぐぅ。」
「あーー!!もう分かったよ。分かったからもうやめてくれ。」
「良し!」
コッソリガッツポーズをした。
「これからよろしくお願いします!ポチ先輩!」
「よろしくな、新人。」
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「あぁ、それとポチ先輩。まだ自己紹介してませんでしたね。」
「自分の名前は、佐々木 亜門っていいます。」
「フンッ。」
拗ねてると思った瞬間、ポチ先輩が不敵そうにニヤリと笑った。
「そうだな....。」
「吾輩だけ、そんなポチ呼びなど癇に障る。」
「ここで一つ、お前にもあだ名を付けてやろう。」
「な!?」
「お前のあだ名は今日から、あもきゅんだ!」
自慢げにそう言う、ポチの姿は何処かおかしく思えた。
だが、驚きを抑えきれない。
「あもきゅん!?」
だか、感情を抑えきれていないのは、亜門だけでは無かった。
「ふっ。」
誰かの笑い声が聞こえ、亜門が振り返る。
そこには、アルファが口元を片手で覆い、肩を小刻みに震えさせる姿があった。
しかも、アルファの口角は今にも決壊しそうなほど、ピクピクと上に向かって吊り上がっている。
「アルファ先輩は、自分のことあもきゅんなんて言わないですよね!」
「あもぎゅんって言わないよね゛ぇーーーーーー!」
涙ぐみながら訴える。
「ちょっと待って、静かにして...。ふふっ、いま喋りかけられると、本当に...ぶっ、...あー、もう最悪。お腹痛い……」
「ねぇ、ちょっと。やめてあげたら、アルファ...フフッ。」
「そうだぞ、田中。笑うのは、よくない...ふっ。」
「すーぴー。」
「ねぇ、本当にやめてくださいよ先輩達。」
「えー、どうしようかな。」
ニヤニヤしている先輩達にあだ名呼びを阻止しようと奮闘していた時。
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プルルルルプルルルル。
「あ!電話だ。」
「あもきゅんは待ってて。」
「もう、あもきゅんって言わないでくださいよアルファ先輩。」
「しょうがないなー。」
アルファは亜門の懇願を軽く受け流しながら、電話の方へ向かう。
ガチャ。
「はい。もしもし。」
「そちら、アルファ様であっているでしょうか?」
「はい。そうですが。」
「仕事が入りました。」
「はい。どちらで?」
「異界門、第九並行世界です。」
「場所は?」
「首都です。」
「情報班からでは、首都にある、罠の迷宮。通称「シーカー殺しの迷宮」が近頃スタンピートを起こすそうです。」
「...そうですか。」
「ですので、現場支援部の皆様でスタンピートが起こる前にボスを倒してきてください。」
「分かりました。」
「あぁ、それと。瑠是社長から伝言です。亜門さんとマルコ=ポチーロ・三世を連れて行ってくださいのことです。」
「了解しました。明日にでも、出発いたします。」
ガチャ。
「ガル、マルコ、ドリム、亜門、里香。仕事だ。」
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次の日。
昨日のアルファの指示で大扉がある部屋に行った。
亜門が着いた頃には、既に自分以外の先輩達が集まっていた。
「集まったな。」
「すみません。待たせましたか?」
「いや、みんな今来た所だ。」
「とりあえず、行こうか。」
そう言うと、アルファは扉の前に行き何かを呟いた。
その瞬間、光がベールのように大扉を包んだ。
「何なんですか?これは?」
「驚いた?これはね。並行世界の行き先を変えているんだ。」
「通常の大扉...いや、門は通常時、第一並行世界に繋がってるんだ。」
「君も知っているはずさ。新人研修で行ったあの世界のことだ。」
「あそこが、第一並行世界だったんですね。」
「あぁ、そうだ。でもね、僕が今言った言葉を使えば、行く並行世界を変えることができるんだ。」
「その言葉はね。」
「並行と現軸の繋ぎ目よ。我々は、均衡を守るもの。乱すものを罰し、正義と使命に基づき今正す。開け、第九の並行世界アルス・メメント。」
「この言葉はね。前社長がこのゲートを作り、並行世界と今僕達がいる現軸を繋げた際に言った言葉なんだ。」
「だから僕達は、この言葉のことを始まりの継ぎ目って言ってるんだ。」
「始まりの継ぎ目?」
「今は、分からなくていい。そのうち分かる。」
「じゃあ、亜門行こうか。第九並行世界アルス・メメントに。」
「はい!」
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「よいしょっと。」
大扉...いや、門をくぐり抜けた瞬間。
眼の前に広がったのは、前に行った第一並行世界とは違う。
一面に広がる海だった。
「おーーー!」
「すごいですね!アルファ先輩!」
「あぁ、そうだな。」
「あれ?何か元気ありませんね。」
「いや別に、なんでも無いよ。」
アルファの何処か元気の無い姿を見かねたガルが突っかかる。
「何だ、何だ。お前らもっと楽しめよ、せっかくの第九並行世界だぞ。」
「お前はもっと、緊張感を持てガル。」
「へへ、通せ俺様が全部ボコボコにしてすぐ終わるだろうがよ。」
「何だと!僕の方がお前より多く敵をボコボコにしているからな!」
「言ってろ。俺様は強いからな!」
「ちょっとは落ち着きなさいよ。」
言い争っているアルファとガルを里香が注意する。
「今は、情報収集の時よ。」
「どうせ、まだスタンピートには、時間がかかるのでしょう?」
「確かにそうだな。里香の言う通りだ、なぁガル?」
「ぐぐぅ、確かにそうだが。」
「良し。もう口喧嘩は終わりね。」
「全く敵わねぇな、里香には。」
「だな。」
「ねぇねぇ、あのさ。ガルも里香もアルファも亜門も行かないの?」
「うわぁ!びっくりした。」
「何だよ、幽霊が出たみたいな反応してさ。」
「そりゃ、後ろから急に話しかけられたびっくりするだろ。」
「ふーん。」
「で?行くの、行かないの?」
「行くよ。」
「ほら、みんな。首都まで結構歩くから急ぐよ。」
「はーい。」
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2時間後。
「はぁはぁ、やっと着いた。」
「アルファ先輩、思ったより長かったですね。」
「だから言ったじゃないか亜門君、首都まで結構歩くからって。」
「言っていましたけど、こんなに長いとは思わなかったですよ。」
「馬車とか使えなかったんですか?」
「だって、僕たちお金持っていないでしょ?」
「あ。」
「あはは、とりあえず行きましょうか。」
亜門が首都を改めてみると、首都は、亜門が思っていた以上にデカかった。
東京タワーとほぼ同じくらいの高さの門に、中央にはまるで漫画や小説から飛び出してきたようなきれいで壮大な城。
さらに、町中は商人が近くの海で採ったと思う魚や見たこともない料理がたくさんあった。
「ふぅ。ここに来るのは初めてじゃないけど、いつ見てもこの首都はデカいな。」
「アルファ先輩、ここに来るのは初めてじゃないのですか?」
「あぁ、そうだよ。僕が正社員になって2年ぐらい経ったときかな。」
「僕の先輩と行ったんだ。」
「その先輩は、何処に?」
「もういないよ。」
「そう...なんですか。」
「兎に角さ、今は情報収集の時だ。切り替えていこう亜門君。」
「はい。ありがとうございます。」
「おーい!早く!置いていくよ!」
「おっと、ドリムが呼んでる。」
「行くぞ、亜門君。」
「はい!」




