ネコの記憶
ニコが向かった先。白夜が探し、ニコが語ったのは────
「あれ、クロガネ。ニコとサクヤは?」
「お戻りになられましたか、王。サクヤは料理を運びに行かれました。ニコは…」
「用事があると言って出かけられました。すぐ戻ると思われます」
なゆたたちは城にもどる。
白夜は目を細めた。
「ほんならもうご飯やし呼んでくるわ」
「ボクも…」
「なゆたは待っときぃや。また兄ちゃんが心配するで」
サクヤと話すヤマトを見て頷く。
振り向き、歩く姿を見届けながら。
◇◆◇◆
屋根から屋根へ軽い足取りで渡り、辺りを見渡す。
ふと、揺れる長い桃色の髪に獣の耳。白夜はそこに向かう。
「やぁ、ニコちゃん」
「げっ…なんであんたがいるのよ…」
「みんな探してはったで」
ニコは嫌な顔をしながらも足を止めない。
「…どっか行きたい場所でもあるんか?」
「えぇ。もう着くけど」
辺りはボロボロの家が並んでいる。
「私たちはね、貧しいとこで生まれたの。母が猫又、父が人間。母の綺麗な容姿に見惚れ父は母と結婚したの」
足を止める。
白夜はふと隣を見ると焼け跡。
家が燃えた痕跡のある敷地を見る。
「ここは…」
「ここは、元々私たちの家よ」
しゃがみ、手を合わせる。
ジッと白夜はそれを見ていた。
「双子だと見破ったのはヤマトとクロガネ副将と、あなただけよ」
「ほかの妖怪が馬鹿なだけとちゃう?」
「帰りましょ。寄りたいところは寄れた」
「ねぇ、帰りながら私の話、聞いてくれる?」
「どんだけでも」
「私たち双子の母は妖怪ながらも人間である父を愛していた」
◇◆◇◆
「お母さん!見て!」
桃色の髪は草と泥だらけ。
「あら、ニコ。今度は何を捕まえてきたの?」
病弱ながらも笑顔を見せる母は優しく草を落とす。
「ヘビ!簡単に捕まえれそうだったんだけど、サクヤが大きな声出すから逃げちゃって…追いかけてやっと捕まえたのよ!」
「ニ、ニコが僕のこと押すからでしょ…!」
「サクヤってばすぐ泣く!ほんと、臆病なんだから!」
2人のやり取りに母は嬉しそう。
「ニコ、女の子なんだからお淑やかに。そして、サクヤはニコが危ないことしないように見守ってあげて」
「はぁい」
「うん…!」
ニコとサクヤ。
ニコには母と同じ猫の耳としっぽがある。
だが、
サクヤには耳もしっぽもない。その代わり、
カラスのような大きな羽が背中から生えていた。
「カラスのくせに弱っちぃの!」
「こいつすぐ泣くし泣き虫カラスだ!」
「半妖のくせに俺たち妖怪と遊びたいなんて生意気なこと言うなよ!」
サクヤは小さくなり涙を流す。蹴られようが石を投げられようが反抗することができなかった。
「こらぁー!」
「やべ…っ!ニコだ!」
「逃げろ!」
「私の弟をいじめるな!」
いじめっ子たちは一目散に逃げ、その場にニコとサクヤだけが残る。
「サクヤ、大丈夫?」
「…ニコ。ごめん…」
ニコは気にしない様子でサクヤに付いた泥を払う。
「帰ろ!」
手を差し伸べ素直に受け取る。
「あんな奴ら蹴散らせばいいのよ!」
「そんなことできないよぅ…なんで僕はネコじゃなくてカラスなの…?」
「サクヤは弱いなぁ。種族は違っても私たちは双子でしょ?それに、」
「お母さんが言ってたじゃない!私たちのおじい様が八咫烏だって。サクヤはその血を受け継いた凄い子なのよ?」
「…うん、ありがとう…」
家に帰ると母が料理を作っている。
「母さん、僕もやりたい」
「手伝ってくれるの?じゃあ、このお野菜洗ってくれる?」
「お母さん!服、解れてるよ」
「あら、本当だね。あとで直そうかしら。ニコはお水を汲んできてくれる?」
「もちろん!」
ニコはバケツを持ち外に飛び出た。
「僕もお野菜切ってみたい…」
「じゃあ、母さんと一緒にやろうかね」
小さな手でしっかり包丁を持ち、野菜を切る。
「サクヤが作ったってなったらニコ喜ぶよ」
「本当?がんばる」
ゆっくり慎重に、そして丁寧に。
野菜を切る姿を微笑ましく見つめる。
「お水持ってきてくれてありがとうね。ニコ」
「そんなのどうってことないよ!それより今日のご飯、少し味違う?」
「お、美味しくない?」
「今日はね、サクヤが作ってくれたんだよ」
目を見開き、輝かせる。
「サクヤが?!凄い!何杯でもおかわりできちゃうよこれ!」
サクヤは顔を赤くし照れる。
「もっとご飯作ってみたい…」
「サクヤは大きくなったら料理人さんかな」
そんな幸せを噛みしめるように母は2人を見る。
太陽が差し、母は起きる。
ふと着物を見ると歪に縫われた糸。
「あら…?」
「あ、お母さんおはよう!ごめんなさい…もっと綺麗に縫うつもりだったんだけど…」
「ニコがやってくれたの?」
「うん…」
指には沢山の絆創膏。
「おいでニコ」
「ありがとう。すごく綺麗に縫えてるわ。お母さんより上手」
そんな言葉に嬉しく笑う。
その瞬間、母は咳き込む。
「お母さん?!」
「大丈夫よ…嬉しくてむせちゃった」
「ビックリさせないでよ…!」
弱々しい笑顔。
母はいつも笑顔だった。
「あの日までは」
「あの日…?」
月が雲で隠れ、白夜を見るニコは寂しげに笑う。
ここまで見てくださりありがとうございます。
ニコとサクヤの過去編突入です




