鬼の王
ついに白夜との決着がつく。
そこに駆けつけたヤマト。
なゆたが知らないはずの真実が口に出され、ヤマトは────
「はぁ…っはっ…」
一目散に走る。近づけば近づくほど鉄の匂い。
血の匂いだとわかる。
目の前に現れた光景は、
赤く染った床。
倒れてる白夜。
その隣でただ立ち尽くすなゆた。
「なゆ…た」
「なんだ…もう来たのか…」
黒い霧がジワジワと溢れ出ている。
行かなくちゃ
そう思っているのに足が動かない。
なんで、こうなった?
いつからそんな顔をするようになった?
ただ目の前にいるのはなゆたではなく、
鬼の王だった。
◆◇◆◇
時は少し遡る。
ただの短剣に押される。
早く無駄のない動き。
白夜は交わすこともできず、止めるので精一杯だった。
「いつの間に…っ、こんな…」
「前に白夜はボクを堕とした。その借り返し」
「そんな借り…返さんくてもええんやけど…っ!」
大きく刀を振りかざす。
まるで離れろと言わんばかりに。
なゆたは距離を取り白夜を見つめたまま投げた大鎌を片手で掴む。
「誰かがなにか吹き込んだやろ…あの傍観者か…?」
「あれは関係ない。いや、関係なくはないか…あの式神で出来た銀髪の男」
その瞬間、白夜は動きが止まる。
黄泉様のことを言ってるんか…?やとしたら本格的にまずい事になる…
ヤマト…何しとんねん…はよ来てこの化け物を止めんかいな…!
「話すのは終わってからにしよう」
「ほんっっま鬱陶しいわ!!」
白夜は地面に手を付く。その瞬間、周りに浮いていた狐火が集まり無数の異型に変わった。
「あの化け物を止めろ」
少しの時間稼ぎぐらいにはなるやろ…その間にあのバカ犬が来てくれれば理想的…
だがそんな願いもつかの間。
なゆたはゆっくり片手を上げる。
黒い霧が現れたと思えばなゆたの周りに散る。
そこから無数の槍が現れ、なゆたの腕が前に出された瞬間、
一気に異型を次々突き刺す。
「なん、やそれ…」
何十匹もいた異型は瞬きする間に消える。
これが王家の力…
こいつは一体なにを…
なんて考えてる間だった。大鎌ではなく、黒い刀。なゆたはただ冷たく白夜を切り落とした。
◆◇◆◇◆
「なん、で…そいつが倒れてんだよ…なぁ、なゆただよな…?」
「兄ちゃん、クロガネはどうしたの。クロガネを殺した?」
笑う顔は不気味に見える。
刀を地面に削りながらゆっくり近づく。
そして、振り上げ喉を狙う。
細く赤い血が首から垂れ落ちる。
「なんでこんなことしてんだよ…っ!」
「こんなことってどんなこと?勝手に家を出たこと?1人で妖怪の国に行ったこと?白夜を殺したこと?」
どこか黒いのになゆたの目は痛いほど綺麗な金色をしていた。
「全部に決まってんだろ!なぁ、なにか思い詰めてるんなら兄ちゃんに相談しろよ…!」
「兄ちゃん…兄ちゃんか…」
「でも、ボクたちって本当の兄妹じゃないでしょ」
その瞬間、ヤマトは片手で刀の刃を強く掴み、
もう片方の手で初めてなゆたの胸ぐらを掴む。
手から血が溢れ出るのも気にせず。
「冗談でも言っちゃダメなことぐらいあるだろ」
「本気だよ。ヤマトはボクの兄じゃない。ボクの兄は…
あの銀髪の青年でしょ」
「……っ」
手が緩む。その瞬間を狙ってなゆたは押し倒す。そのまま上に乗り、顔に剣先を向ける。
「嘘ついてないってことが嘘だったんだね。嘘つき」
「ちが、俺は…!」
「もういいよ。ヤマト」
なゆたはヤマトから身体を退かす。振り返るも剣は握ったまま。
「だれも教えてくれないならボクが全部壊して知るだけだ」
「ダメだ…なゆた!」
その言葉と同時に刀を目の前に突きつけられる。
「ダメでしょ。王に向かってその口の聞き方は」
記憶を取り戻した?だとしたらおかしい…知る場面がなかった。白夜か?いや、あいつは隠してくれていた。クロガネも絶対に有り得ない。
だとしたら、
なゆた自身がずっと探っていた?
辻褄が合う。
サクヤの術が切られたカラス。
急に変わった雰囲気。
まるで、
昔になろうとしている。
「なゆた…いや、なゆた様。今のあなたは1人で何ができるんですか?」
ヤマトはまっすぐなゆたを見る。
その言葉に顔を顰める。
「1人でやってみせる」
「無理ですね。知ってるか知らないかは俺に関係ありませんが、俺はずっと幼い頃から…
貴女を見てきている」
ヤマトは大剣を取り出しなゆたに向ける。
なゆたも応えるかのように刀を向けた。
そう、それでいい。
どうなってもいい。
確かめさせてよ。
兄ちゃん
ここまで見てくださりありがとうございます。
白夜……




