表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月下の半妖  作者: 霜月パラド
半妖の鬼とその仲間
PR
68/97

甘い味

4人でのお出かけだったはずが、はぐれたなゆたとヤマト。そこでなゆたは前に進もうと過去と向き合う。


そして、なゆたから発せられた言葉にヤマトが────

味噌汁の匂い。

そんな匂いがする前に起き上がる。

そっと階段を降りると誰もいない静かな空間。

冷蔵庫から豆腐を出し味噌汁を作る。


鮭の切り身を取り出し、グリルで焼く。


「…上手くできた」


そこに階段を降りる音。


「ん?誰かいるのか?」


眠たそうなヤマトが降りてくる。


「おはよう。ヤマト」


さっきまで眠たそうにしていたのにその顔が一気に吹き飛ぶ。


「……なゆた?」


誰よりも早く寝て、

誰よりも遅く起きる。


それがなゆた。


なのに、今日は誰よりも早く起きている。


ヤマトはすぐに駆け寄りデコに手を当てる。


「熱は…ないな…え、なん…」


動揺するヤマトをジッと見つめるだけ。


「おはよう」


「え?あ、あぁ、おはよう?」


寝起きにしては刺激すぎた。


あのなゆたが1番に起きている。


「ボクだって早く起きる日もあるよ」


そう言いながら朝ごはんの準備をする。


ヤマトはふと笑い、手伝う。


「鮭、ひっくり返すの上手くなったな」


「その顔、痛そうだね」


頬には大きな絆創膏。昨日のサクヤとの殴り合いは中々治らない。


「男の勲章ってやつよ」


「…変な勲章」


「あ、変って言ったな?!」


また階段を降りる音。しなやかな軽い音。


「ヤマト〜?おはよう…ってヒメ?!」


ニコが起きる。

ヤマトと同じ反応。


そこにまた頬を膨らませムスッとする。


「早起きなんて偉いじゃない!どうしたの?ちゃんと眠れた?」


「眠れた。もっと褒めて」


頭を突き出し

撫でろと言わんばかり。


「撫でる撫でる!」


ニコが手を伸ばそうとするとヤマトが先に頭を撫でる。


「なゆたはいい子だなぁ!!さすが俺の妹!優秀すぎる!!!」


「あー!ちょっと私が撫でようとしてたのよ?!」


「朝から騒がしい…」


不機嫌そうに階段を降りるサクヤ。

だが、なゆたの姿を見て固まる。


「あ、固まった」


「さすがのサクヤも驚くだろうよこれは」


ふんわりと広がる味噌汁の匂い。

何気ない日常。


4人はその日常を求めて生きる。


朝ごはんの支度もでき机を囲う。


「今日はどこ行こうかしら。1日、付き合ってくれるんでしょう?」


「あーーー…」


ヤマトは嫌そうに目を逸らす。


「ソウイエバ、ソンナコトモイッテマシタネ…」


サクヤも嫌そうに目を逸らす。


「ちょっと、言い出したのはあなたたちよ」


「俺は言ってない。ヤマトが勝手に言ったことだ」


「裏切るのはよくないって教わらなかったかな?!サクヤくん!!」


「くん呼びやめろ…言い出したのはしょうがない…」


なゆたはそんな会話を見て、首を傾げる。


「買い物…?」


「そう。2人が"勝手に"喧嘩をしたのにも関わらず私に傷を治せと言ってきたのよ。どう思う?」


「…喧嘩はよくない」


「……はい」


「……すみません…」


2人は小さくなりしょんぼりとした顔を見せる。


「買い物…ボクも行きたい。いいかな?」


「もちろ───」


「もちろん!!なゆたの好きなところに行こう!!どこ行く?!いやぁ!楽しみだなあ!!!」


「そろそろあなた、永久に眠らせるわよ?」


その言葉に何事も無かったかのように味噌汁を啜る。


「…!美味いなこれ」


目を見開きまた1口啜る。


「本当によくできてる。鮭の焼き加減も上手だ。どこかの猫とは違って」


サクヤも美味しそうに鮭を食べる。

そんな2人を見てニコは満天の笑顔を見せ静かに言う、


「ねぇ、ヒメ。これからは2人で暮らしていくことになりそうだけど大丈夫?男どもは居なくなるけど」


「はっはっはっ!冗談じゃないっすかニコ姐さん!前に作ってくれたカレー風のチョコも美味しかったし!」


「カレー風じゃなくてカレーよ!」


「カレールーの代わりとして全部チョコにするバカがいるか?」


焦るヤマトを見てニコは不機嫌に食べ始める。


「この4人の中で、ヒメが1番料理が上手だわ」


今日はオフの日。たまにはこんな日があっても怒られないだろう。それぞれ支度をし鍵を閉める。


「さーてと、買い物に行きますか!」


雲ひとつのない晴れた空。


見守るように1羽のカラスが飛び立つ。


◇◆◇◆◇


「で、なんで私とサクヤだけなのよ」


「2人が迷子になったからだろ」


サクヤは大量の買い物袋を持ちなゆたとヤマトを探す。


「せっかく4人でお出かけなのに…あ!サクヤ!この服ちょー可愛くない?!」


「さっきも買っただろ…」


久々の2人きり。


なゆたたちと出会ってからはあの2人が隣にいることが当たり前になっていた。


「ま、たまにはサクヤと2人ってのも良いわね」


「……そうだな」


種族は違えど正真正銘の双子。昔から気の強い姉、ニコに引っ張られる。

だが、それが良いとも思う。


「さ!2人を探しながら買い物もするわよ〜!」


「まだ買うのか…」


呆れるサクヤはどこか楽しそうに笑う。


◇◆◇◆


「完全に迷子だこれ…」


不安げなヤマトの横にクレープを頬張るなゆた。

フラフラどこか行くなゆたを追いかけているといつの間にかあの双子はいなくなっていた。


「…美味しい?」


「美味しい」


ヤマトもクレープを頬張る。甘い味が口いっぱいに広がった。


「…」


物欲しそうな顔でクレープを見るなゆた。

なんの躊躇いもなく差し出す。


「ほんと、甘いものは無限に食うよな」


「甘いものの大食い大会で優勝する自信あり」


吹き出すヤマトはどこか空を見る。


「こんな日が続けばいいんだけどな」


「そうだね」


「声に出てた?」


「ばっちり」


親指を立てながらもリスみたいにクレープを頬張る。

ふと、口元にクリームがついている。


「なゆた」


ヤマトはそっとなゆたの口についたクリームを指で拭い、そのクリームを自分の口に放り込む。


「イチゴ味の生クリーム」


また甘い味が広がる。


「なぁ、なゆた」


「ん?」


ヤマトはどこまでも澄んだ空を見る。


「なゆたは、これからどうなりたい?」


「…」


少し考えて、そして


しっかりヤマトの目を見る。


「ボクは、ボクを知りたい。何者なのか。どうして王なのか」


「今の生活が壊れても?」

「それでも、なゆたは知りたい?」


また黙る。


少し前までは「わからない」とだけ答えていたなゆたが初めて「知りたい」と言った。


そんな真剣な目で見られちゃダメって言いようがねぇな…


「知りたい。けど、」


「けど?」


そっと優しく、だけどどこか力強く、

ヤマトの袖を掴む。


「絶対に壊れさせない。だから、



付き合って」


「……」

「…え?」


ヤマトの情けない声が響く

ここまで見てくださりありがとうございます。


な、なななゆたさん????

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ