重ねる影
ずっと隠して見て見ぬふりした本音。
ヤマトとサクヤは隠した本音を殴り合う
「くそっ…木が邪魔すぎる」
ヤマトは大剣を振り回すも木が邪魔をする。
そんなことはお構いなしにサクヤはヤマトに攻め込む。
あぁ、もう何なんだよ。めんどくせぇな。
ほっといてくれよ。
お前が気にすることじゃねぇのに。
なんでそんな必死になってんだよ。
「それはお前も一緒だろ」
まるで心を読まれたかのような言葉。
「…っ?!」
サクヤの刃先がヤマトの喉を刺す1歩手前。
だが、それと同時にヤマトの剣もサクヤの腹を割く手前。
相打ち。
「昔のお前なら俺は足元にも及ばなかった」
「けど、今はどうだ」
「余計なことを考えてるせいでお前は死ぬ一歩手前」
「ちっ、うるせぇ…」
「何をそんなに下を向く理由がある?なゆたが生きてる。それだけで…」
「てめぇにとってはそれだけなんだろうが俺にとっては黄泉がいる!!!」
剣を下ろし俯く。
「居ないことぐらい…死んだことぐらい分かってんだよ…怖いんだよ。思い出した時、なゆたはまた俺から離れる。物理的にも心の距離的にも…」
「お前に分かるか…?ずっと縛られてる言葉の重みが…あの顔が!!」
「お前はなゆたをどうしたいんだ。それは本当に黄泉様の言葉に縛られてるだけなのか?」
「俺は…」
これは呪いなんだろうか。
それとも自分の意思で兄で居たいんだろうか。
2人が羨ましかった。
兄弟のいない俺にとって、
あの2人は直視できないほど眩しくて輝いていた。そんな2人の中を割く俺がただ笑ってなゆたの兄でいていいんだろうか。
「俺は、まだ…黄泉が生きてるんじゃないかって思ってしまう。そう思えば思うほど、なゆたは俺から離れていくんじゃないかって…俺は本当の兄という記憶の中でまだ居たいんだ…」
隠してきた本心。
ずっと見て見ぬふりをした。
その結果、自分で自分に呪いをかけている。
黄泉の術ではなく、
自分で呪いを。
兄になれないことなんてわかってる。
血の繋がりが無ければ、立場も違う。
それでも、
「それでも、黄泉は…黄泉様は俺に託したんだよ…」
サクヤの拳が強く握られる。
その瞬間、
頬に強い衝撃。
すぐ殴られたんだと理解する。
「…は?」
「くだらない。それでもお前はあいつの…なゆた様の兄であるんだろ!」
サクヤが声を荒らげる。そのままヤマトを押し倒し馬乗りになり何回も、何回も殴る。
「呪い?!馬鹿か貴様は!!与えられた使命、預けられた命を呪いという言葉で簡単に言うなよ!!!ヤマトは…俺らの総大将はこんなにも弱いのか?!なぁ!!!」
噛み締め、殴ろうとした手を止める。
「黙って聞いてりゃ好き放題言いやがって…あぁそうだよ!!俺は弱い!!強く見せてるだけですぐ怯える弱虫だよ!!」
そのままサクヤを殴り返す。
「怯えて何が悪い!!」
「悪いからこうやって話してるんだろ!!!!」
「なゆたの記憶が戻れば楽になる話じゃないのか?!」
「戻したところで昔みたいに…昔みたいに笑える保証がないだろうが!!!!!」
強く、
重い一撃。
息が上がり2人は座り込む。
「どうすりゃいいかわかんねぇんだよ…実は死んでなくて生きてました。って何回願った…?けど、どこかでこのまま俺が兄として傍に居たい…だからそのまま安らかに眠ってて欲しいって思ったこともあるんだよ…俺は最低な奴だ…自分の主を悪く言う従者が何処にいるんだよ」
息を吸うことなく話し続けるヤマト。
サクヤは静かに口を開く。
「さっきからお前には黄泉様しか映ってないように見える。なゆた様が見えていない」
「そんなこと…っ!」
「あるから言ってる。なゆた様を理由に黄泉様にまだ縋ってる。お前にとってなゆた様は黄泉様の言い訳にしか使ってない」
「違う!!俺はちゃんと…っ!」
言葉が出てこない。
口は開くばかりでなにも出てこない。
「なぁ、ヤマト。黄泉様は死んだ。だが、思いだけは生きている。生きているからヤマトや俺にニコ。そして、」
「なゆた様を縛ってる」
「俺は…」
「なゆた様はお前を必要としている。お前が兄だからだ。けど、お前はそんななゆた様をおもむろに扱っていいのか?」
「だから俺は…」
サクヤはヤマトの言葉を、
言い訳を
聞きたくないかのように遮る。
「今のなゆた様にとって家族はお前だけなんだ。兄を演じろじゃなくて、本当に兄になってるからなゆた様はずっとヤマトの後ろを着いてくるんだろ」
違う。それは
「黄泉と俺を重ねてるんだよ…」
心に閉まってる声は自然と出る。
「いい加減気づけ。黄泉様とお前はもう一緒なんだ。お前が黄泉様になれないように、」
「黄泉様もお前になれない」
「なゆた様が記憶を無くし、起きた時のあの顔は忘れられない」
ずっと会えなかったような顔で抱きつくなゆたの記憶がふと蘇る。
「それがあるから、お前は兄なんだろ。これは呪いでも黄泉様の術でもない。お前の意思なんだろ」
「俺は…」
ヤマトは勢いよく顔を上げ、両手で自分の頬を思い切り叩く。
「俺はなゆたの兄ちゃんだ。これからもずっと」
その目に迷いは無い。
綺麗な赤の瞳が輝く。
「…ニコ起きてっかな…」
「いや、さすがに寝てるだろ…」
コソコソと静かに家の中に入る。
電気がついてないことを確認してホッと息を吐く。
だか、そんな安心もつかの間。
「おかえりなさい2人とも♡」
「ひっ…」
「…っ!」
電気をつけると黒い笑顔のニコが立っていた。
「随分とまぁ、遅かったじゃない?」
「お、起きてらっしゃったんですね…ニコさん…」
「起きてらっしゃったんですね…じゃないわよ!!乙女にこんな時間まで起きさせといて!」
怒るニコに2人は宥める。
「ね、寝てりゃいいじゃねぇか」
「もう寝るわよ!ったく心配ばっかかけさせて!」
振り返りチラッとヤマトを見る。
先程までの思い詰めた顔はどこか飛んだみたいに無くなっていた。
そんなヤマトを見てニコは静かに笑う。
「ところでニコさん?」
「なによ」
「この傷、治してほしいなーなんて…あはっ…」
「はぁ〜?治すわけないでしょ?!あなたたち勝手に傷つけ合ったんだから自分たちで手当てしなさいよ!」
ヤマトは両手を合わせヘラっと笑う。
「そこをなんとか!!1日どんだけでも買い物に付き合うから!!な!サクヤ!」
「俺を巻き込むな…!でもまぁ、1日ぐらいならいいだろう」
「サクヤはなんで上からなのよ…はぁ…」
ニコは軽く能力を使う。
傷は完全に治りきってない。
「深手は治したわよ。後の傷は反省として自分でやって」
ニコはそのまま自室に戻る。
残された2人は顔を見合せ笑い合う。
階段の影で小さな影が微笑み、銀色の髪を靡かせ部屋に消えた。
ここまで見てくださりありがとうございます。
なかなかにキャラが立ってますね。
あと、ニコは本当に怒らせたら怖いです




