亡き人
黄泉を前に動けないなゆたとヤマト。
そんな2人の前に現れたのは────
目の前にはあの日と同じ、死んだはずの
黄泉が立っていた。
わかってる。
これが本物ではないことを。
なのに、
身体が動かない。
待て、なゆたは?!
勢いよくなゆたを見る。
なゆたは、目を見開く。
まるで、思い出すかのように。
「ダメだ!なゆた!」
その言葉に表情が変わる。
「…っ、思い出せそうなのに…」
ダメだ。思い出すな。
思い出せば、
お前は終わってしまう…!
「ほら、思い出してみてください」
「あの日の声」
「あの日の光景」
「あの、日…?」
「てめぇ…っ!」
「なぜ貴方は思い出させたくないんですか?」
「壊れるのが怖いから?」
「それとも、」
「自分が兄でなくなるのが怖い?」
図星だった。
ただ、どちらに図星なのかは自分でも分からない。
チラッと黄泉の形をした人形を見る。
「ヤマト、そんな怖い顔してどうしたんだい?どこか悪い夢を見ているみたいだ」
ずっと会いたかったのに、
今じゃない。
「…っ、くそ…っくそ!!!」
動けない自分に腹を立てる。
なゆたは黙ったまま黄泉を見つめる。
「なゆた、そんなに見つめられたら照れちゃうな」
ゆっくりなゆたに近づく。
1歩
また1歩
なゆたはまるで思い出したくないように、後ずさりをする。
呼吸が荒くなる。黒い霧が少しずつ漏れ出る。
なゆた…どうしてお面をつけてないんだよ…!
「ぁ…ボ、ク…」
「なゆた…なゆた!」
「それはさすがにあかんやろ」
重く、
低い声が響く。
その瞬間、金色の尾が目の前。
黄泉を容赦なく切る。
気づけば、なゆたの手から剣は抜かれ、
白夜の手に握られていた。
「黄泉様を出すのはさすがに違わんか?なぁ、傍観者」
「九尾さん…あなた、一体どういうつもりで…」
「お遊びはここまでや。なゆたとヤマトの前に亡き人を出すんは、さすがに非道やで」
傍観者の表情が崩れる。
「僕に協力するって言ったじゃないか!!!」
「はて、俺がいつ"協力する"って言った?俺はただ"面白そう"って言っただけや」
「けど、ちっともおもろくないわ」
「なっ…」
思い返す。
確かに言ってない。
完全な早とちり。
「…っ!だから、僕に焦ってると…」
「どうやろうなぁ…なんのせ、お前はもう生かせん。黄泉様で2人を弄んだ罪は死罪より重たいで」
剣を振り上げ、思い切り下ろす。
その瞬間、ヤマトは舌を噛み刺激を与える。
やっと動いた身体はなゆたに向けられ視界と耳を塞ぐように抱きつく。
飛び出る血。
叫び声。
「きさ、ま…!よくも…!」
「裏切ったとか言わんといてや。最初から協力なんかしてへん」
「どういう…」
「お前の札なんて使ってへんってことや」
傍観者が白夜に渡した札。その札は、
白夜の炎によって灰になる。
「なゆたを傷つけるんは俺だけでええ。お前ごときの人間が、なゆたを傷つける理由にならん」
「僕は…っ!そいつに弟を…!」
「それはなゆたも一緒や。父も兄も失っても前に進んどる。邪魔せんとってや」
冷たい目。
傍観者は荒く呼吸をする。
ここで名前を呼ぼうとする。
だが、声が出ない
(なん、だ…術…っ?!)
頭に響く声。
──もう帰ってきなよ。柊。
その声になゆたは肩を動かす。耳からではなく脳に直接入ってくるような声。
その瞬間、傍観者の足元に六等星の光。その光に包まれ傍観者は消える。
消えたと同時に帳も消えた。
「…今の声、だれ…?」
「なゆた様…声、とは」
「ヤマト…ボクはいったい…」
「なゆた様?」
その瞬間、なゆたは不機嫌そうに眉間に皺を寄せる。
「ボク、前に言った。様呼びは嫌いだって」
帳が降りたから?
いつものなゆたに戻ってる…
「なゆた」
呼び直し、なゆたは静かに、
満足そうに
笑う。
ここまで見て下さりありがとうございます。
白夜の登場いいですね。
さて、ここで思い出して見ましょう。
Q,白夜は協力すると言ったか言ってないか
ヒント:32話




