あの日見た、笑顔
店に現れた傍観者。
なゆたは王として立ち向かう。
だが、そこに現れたのは────
客も寝り、ニコは肩を下ろす。
「忙しかったわね」
「にしてもあの情報…」
ニコが険しい顔。
「妖怪が殺されていく。しかも、異型みたいに理性を失ったやつではなく一つ目のおじさんみたいな普通の妖怪も」
「お客さんくるよ」
なゆたの声とともにドアが開く。
カラン
「こんばんは」
空っぽの笑顔。4人は険しい顔をする。が、ニコがすぐに笑顔を見せる
「いらっしゃいませ。傍観者さん」
ニコの妖艶な笑みはどこか吸い込まれていきそうなくらい美しい。
「今日はみなさんいつもと服装が違うんですね」
なゆたが前に出る。
待ってましたと言わんばかりに、
「今日のおすすめのカクテルは」
「ドライ・マティーニです」
無表情のどこかに強い意志。
その表情を見逃さなかった。
「あの日、何かあったんですか?」
「…なにもない。ただ君を待っていた」
「それは、お互い様ですね。話しをしませんか」
腰をおろし1口、カクテルを飲む。
「…ドライ・マティーニの意味は───」
「最終通告だ。知ってることを話してもらう」
傍観者が話す前になゆたが椅子を引き座る。
初めて会った忌み子の姿はどこにも無い。
ただ目の前にいるのは、
"王"
そう感じさせるぐらいの威圧。
「…」
傍観者は口を閉じ、なゆたの様子を伺った。
「その様子だと、壊れる準備は出来ている。という意味ですか?」
「ボクは、いずれ壊れる。壊れる前に知っておかなければならない」
ヤマトの表情が少し崩れる。
「あなた方が攻撃体制…というのであればこちらも正当防衛とさせていただきましょうか」
パチン
指を鳴らす。その瞬間、視界が暗くなりその場は店ではなくなる。
帳が降りた。
「人間ってあなた方、妖怪と違って日々進化するんですよ」
「どうすれば妖怪を殺せるか…ボクはあの日ずっと思っていた」
弟を殺されたあの日から。
床からヘドロのような化け物が次々、出てくる。ヤマトはすかさず大剣を取り出す。ニコとサクヤも武器を構えた。
ただ、なゆただけはその場で立っている。
「守られているだけの王はどこまで抗うことができますか?」
近かったはずの傍観者との距離は遠くなっている。広い帳。
相手の舞台に立たされている。
それでもなゆたは焦ることなくゆっくり、ゆっくりと霧の中から、
刀を取り出す。
大鎌ではなく、
刀。
「ヤマト、ニコ、サクヤ。ボクは今から王として君たちに命令する」
ずっと王を嫌がっていたなゆた。
それが今、自分の意思で王として目の前に立つ。
すぐさま、3人は跪き頭を下げる。
「ここにいる敵を全員、消し散らかせ」
「王の仰せのままに」
3人は強く1歩を踏み出しなゆたの後ろから前に出る。
無数の敵を切り散らかし数を減らす。
ヤマトは戦闘の中、チラッとなゆたを見る。
なにかを抱えている顔じゃない。
何があった?
いつから王としての自覚を持った?
いつからだ?
いや、起きてからだ。
なゆたは…姫様は何を見た?
それとも…
ひとつの勘が頭を走る。
あの過去の話を聞かれていた…?
敵は自我を持っていないため倒すのは容易い。だが、切っても切っても数が減らない。
「ちっ、めんどくさいな…」
敵がめんどくさい。だが、変わったなゆたに気を取られる。
あの男をさっさと切るか?
「ニコ、サクヤ」
「この雑魚どもはお前らに任せる。俺は──」
「ヤマト」
なゆたの声が響く。
「あの人間に行くならボクも行く。ニコとサクヤはそのままここで敵を倒して」
「仰せのままに」
すでに何体か敵を切った跡。
真っ直ぐ向けられた金色の瞳にただ一つの返事。
「仰せのままに」
ヤマトとなゆたは敵を切りながら一直線に傍観者に近づく。
「待ってました。2人が来るのを」
まるで最初からわかっていたかのよう。
「話し合いをするんじゃなかったのか?」
ヤマトが睨む。
「先に仕掛けたのはそちらでしょう?」
「プレゼントがあるんです」
札を1枚取り出しヒラヒラと落とす。
六等星の光が照らし2人は顔を覆う。
「やぁ、なゆた、ヤマト。久々だね。元気かい?」
聞き慣れた声。
ずっと聞きたかった声。
優しい笑顔。
綺麗な銀髪に、
澄んだ紫の瞳。
目の前にいるのは、
「黄、泉…」
ここまで見て下さりありがとうございます。
兄様…???




