たい焼きと穴
買い出しに行くヤマトとなゆた。たい焼き屋を見つけたなゆたは少し昔に戻ったように見えた。
だがその裏で動く傍観者たち。一体何を考えているのか
「えーっと…卵買った、玉ねぎも買った…ってか、卵をレンジに入れるバカまだ存在したんだな」
「ボクでもわかる…」
「なゆたは賢いなぁ!」
犬を撫でるかのようにワシャワシャと頭を撫でる。
「さてと、買うもん買ったし帰るか」
「待って。まだ」
ヤマトの裾を引き立ち止まる。
「ん?まだ買い忘れあったか?」
「あれ」
指をさした方を見る。そこには新しくできたたい焼き屋があった。
「………なゆたさん…?」
「行こう。たい焼きが呼んでる」
昔から甘いもの好きで目がない。
甘いものを見た時のなゆたは、少しだけ
昔に戻ったみたいだ。
だが、
「行きませーん」
「…え」
「帰ったらご飯。食べれなくなるだろ?」
「食べれる」
「そう言って前も残してたじゃねーか」
「こ、今回は食べれる…」
弱々しく裾を掴み直す。
ヤマトは頭を抱え悩む。
その顔に弱いんだよなぁ〜!!!ダメって分かってるけどそんな顔されちゃダメって言いにくいんだよなぁ〜!!!!
「…ヤマト?」
「じゃあ、半分こ」
「それが嫌なら無し。それでもいいなら行こう」
「…!半分こ…」
ヤマトの手を繋ぎ、少し嬉しそうにたい焼き屋に向かう。
向かう途中、ふと視界に入る銀髪。
なゆたとは違う。
無意識に足が止まる。
繋いだままの手によってなゆたが引っ張られる。
「…っ、ヤマト…?」
「え、あ、あぁ…悪い。なんもない」
再び、たい焼き屋に向かい1つ買う。
「いただきます」
美味しそうに小さな口で齧り付く。
幸せそうに食べるなゆたを見てると懐かしさを感じる。
さっきの銀髪は…
少し過剰に反応しすぎか…
あいつはもう居ないのに。
たい焼きがなゆたの口から離れたのを確認して持ってる腕を引きそのまま食べる。
「うっま」
「ヤマト…」
なゆたが震える。
「ん?」
「1口デカすぎ…」
「なゆたが小さすぎるんだよ」
赤い空。
だが、あの日とは違う綺麗な色。
「あの夕日、ヤマトの目にそっくりだね」
「俺ってそんなに綺麗?」
「目の話ね」
冗談を言える。
なゆたも少しずつ笑ってきてる。
なゆたは俺がいないと壊れる。
そして、
俺もなゆたがいないと壊れる。
壊れたなゆたをもう見たくない。
思い出させたくない。
命令がいつの間にか執着し、本当の兄になりたいと思ってる自分がいる。
黄泉がいるのに。
誰にも壊させたくない。
◇◆◇◆
「たったらりーらーたー…」
「またひとりで出かけたと聞きましたよ。黄泉さん」
「君は本当に執着するね。柊。いいじゃないか」
柊はメガネを上げ、溜息を着く。
「君が俺を起こしたんだろう?とやかく言われる筋合いはない」
「ありますよ。貴方の妹、なゆたは暴走に近づいてる」
「知ってるよ」
「あの3人は何も分かってない。危険なんです」
「そうかな」
「黄泉さん!」
声を荒らげ机を叩く。そんな柊を横目にため息を吐く。
「なゆたが危険?それはあの子が生まれた時からじゃないか」
黒混じった紫の瞳は揺れる。
「純潔の妖怪がいるのがいけない。全部殺してしまえばなゆたはまた俺の元に帰ってくる。そして、あの側近たちも…」
目に映るのはなゆた。
赤い髪の少年の姿はどこにもなかった。
柊は部屋を出てまたメガネをあげる。
「馬鹿な奴ですよ本当。あの大事にしてた赤髪の側近にすら違和感を感じない」
「記憶をいじられ都合よく"穴"まで埋められている。本当に愚かだ」
「絶対にあの忌み子…鬼は手に入れてみせる。そうすれば僕の願いは…ふふっ、あはははは!!」
笑いながら消える影。
4人は机を囲って笑いながら束の間の日常を感じていた。
壊れる予兆が、すぐそこまで迫っているとも知らずに
ここまで読んでくださりありがとうございます。
卵をレンジに入れる時は割って黄身に穴を開けましょう。




