赤い空
襲ってくる人間から逃げる黄泉となゆた。
だが、なゆたの暴走が広がり目にしたのは────
無数の叫び声。
転がる首。
黄泉はなゆたを抱え走る。何も見せないように頭を抱え。
「こっちにも妖がいるぞ!」
見つかった…っ!
銃口が向けられる。咄嗟になゆたを庇い死を覚悟した。だが、相手の叫び声が聞こえる。
「黄泉様!姫様!」
「ニコ!」
「こちらから向かってくる敵を複数目撃しております。こちらは危険です!」
ニコが別の方を指さす。まるで、
そっちに行け
と言わんばかりに。
「ニコ、俺は君たち双子も気に入ってる。生きて帰ってきてくれ」
「仰せのままに」
その言葉と共に敵の方へ走り去る。
「兄様…」
「大丈夫だよ。俺が着いてる」
ヤマトはおそらく敵の中心に向かった。クロガネと共に。
父が撃たれ残るは俺となゆた。
死なせない。
この子だけは命に変えても守り抜く。
「怖い…」
ポツリと呟く声はどこか違った。急がなくてはいけないのに足を止めてしまう。
「うるさい…怖い…違う…強く…ボクがみんなを…」
「なゆた!ダメだ!正気に戻れ!」
「強く…強く…強く強く」
あ、壊れたらいいんだ
その瞬間、なゆたを覆うように黒い霧が溢れ出る。
その勢いに黄泉は飛ばされる。
「なゆた!」
「お父様…みんな…」
その瞳は黒く、
笑っている。
「…っなんだ?」
敵と交戦中、空が赤く染まる。
まるで夕暮れのように。
その瞬間、
息もできないほどの殺気と妖力
「まさ、か…」
そのまさかが当たる。
ゆっくりなゆたが敵に近づく。
黒い霧に覆われながら。
「なゆた様!」
「あれが…王…」
前方に立っていた隊長らしき人物は口角を上げる。
「あれが王だ!皆、奴を狙え!」
「ダメだ!」
だが、撃たれた玉は霧によって弾かれる。
ゆっくり、ゆっくりと近づき、
大鎌を取り出す。
「死んじゃえ…みんな。みんな死んじゃえ」
目の前にいるのはなゆたなのにどこか違った。足が動かずただ見ている。
止めないと
分かっているのに
向かう敵を切り裂く。
ふと気づけば敵はいない。
隊長だった男も、もう動かない。
なのに、
なゆたは止まらない。
敵も味方も区別がついていないように。
赤い空。
笑う少女は、
もうただの化け物だった。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
人が壊れる時って、あっさりですよね。




