成り上がり
王に呼ばれヤマトが務めることになったのは───
「あれ?ヤマト、どっか行くのかい?」
「はい、王様に呼ばれて…黄泉様はこれからなゆた様の元に行かれるのですか?」
「あー!また様呼びに戻ってる。前みたいに呼び捨てでもいいんだよヤマトくん」
呆れたように息を吐く。
「あのですね、俺と貴方は王家とその側近の関係です。そう易々と呼び捨てで呼んでもらえるなんて思わないでください」
イタズラっぽく舌を出す。
いつものヤマト。
その姿に黄泉は少し安心した。
「いつか絶対、呼び捨てで呼ばせてやるからね」
「おっ、じゃあ俺は絶対呼びませんからね」
手を振り王の元に向かう。
息を吐きノックする。
「ヤマトです。入ります」
大きな角。威厳を纏った鬼の王は肘をつきヤマトを見る。
すぐに膝まつき頭を下げる。
「ご要件があるとお聞きし参りました」
「うむ。ヤマトよ。黄泉となゆたと上手くやっているか?」
「はい。黄泉様は術を覚える量も増え、なゆた様も剣術に磨きがかかっております」
「はっはっは、そうかそうか。それはヤマト。お前のおかげだな」
「滅相もございません」
「さて、本題だか…」
「軍の頂点としてまとめる気はないか?」
驚き顔をあげる。
「軍の頂点…ですか…」
「そうだ。なにやら人間界で暴れてるやつがいると聞いてこちらも対策をしなくてはならない」
困った。そう伝わる表情。
「そこでその歳にて王家直属のお前が頂点としてまとめてくれたら、大変助かるんだが」
「もったいないお言葉です。是非、お役に立てるのであればこのヤマト、命に変えてもこの国をお守りします」
「ヤマトならそう言ってくれると思ったぞ」
嬉しそうに笑う王。だが、威厳は消えない。膝が震える。
「それと」
王は遠くを見る。まるで庭で遊ぶなゆたを見るように。
「なゆたが暴走しやすくなってると聞く」
「……はい」
重い返事。自然と拳を握る。
「ヤマト、お前にしかできないんだ。なゆたのこと頼んだよ。それと、黄泉も」
「黄泉様…?」
「あやつ、なゆたのこと大好きだろ。そのせいで自分を追い込んどる。黄泉のことも気にかけてくれ」
「もちろんでございます。王と黄泉様、そしてなゆた様に救われた命、貴方様方に捧げる覚悟でおります」
その目はまっすぐ王を見ていた。その目を見て王も満足そうに笑う。
「軍の頂点にはクロガネというヤマトとは別の王家直属の剣士がいる。そやつと協力して、この国を守ってくれ。頼んだぞ。軍の総大将」
「はっ、仰せのままに」
王室を後にし、軍が集まる場所に向かう。
「軍の頂点、か…」
外は眩しいほど晴れている。まるで祝福されているみたいに。
「クロガネ…たしか、めちゃくちゃデカくて強くて冷酷と聞いたけど…やだなぁ。ぜってぇ合わなそうじゃん」
「俺がどうした」
ギクッと肩を震わせ後ろを向く。
大きな身体に黒い鎧。
冷たい目線がヤマトを突き刺す。
「…っ」
「お前がヤマトか…どんなやつかと思えばただのガキじゃないか」
「は?」
ガキ?今こいつ俺の事ガキって言ったか?
「ただの?ガキ?そう思うなら間違ってるぜオッサン。俺は成り上がってきた。王にこの身を捧げる為だけに」
「王にこの身を捧げるのは当たり前のことだ」
短い言葉に重みがかかる。
クロガネはヤマトを気にも止めず軍が集まる広場に向かう。
「あ、ちょっ、待てよ!!」
慌ててクロガネの後ろを着いていく。
見た光景は、数えるのが嫌になるくらいの軍の数。
「新兵諸君!訓練の元、選ばれたお前たちに人権はない。その身体、その心。全て、王に捧げる生贄となるのだ!」
なんちゅーこと言うんだこのオッサン…
「俺は訓練教官であり軍の副総大将、クロガネと申す!そして、」
目線がヤマトに集まる。息を小さく吐きまっすぐ前だけを見た。
「軍の総大将、ヤマトだ!着いてこれない奴は容赦なく切り捨てる。その覚悟で訓練に挑め」
「はっ!」
大きな返事がヤマトの耳を貫く。
ふと、目線を落とすと女性。いや、ヤマトと同じぐらいの少女がいた。
(へー、女でも軍になりたいやつとか居るんだな)
「その隣の八咫烏…あの猫又女と顔似てるな。妖気も一緒…」
兄弟か家族か。
そんなことはどうでもいい。
今は目の前に集中するだけ。
息を吐くヤマトを横目に、クロガネだけは気づいていた。
ヤマトの妖気が、普通の妖怪とも人間とも違うことに。
ここまで見てくださりありがとうございます。
クロガネが出てきます。全然雰囲気違いますね。
最後に出てきた2人ってまさか……




