表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
48/51

拾ってきたのは

ヤマトと黄泉が話すなゆたの真実。

そこになゆたが拾ってきたのは———

「なゆたは静かに暴走へ近づいている」


黄泉は遠くを見つめたまま言った。


その視線の先には、

虫を探して駆け回る小さな背中。


「そこで、お前の能力が必要なんだ」


「……存じております」


ヤマトは静かに頭を下げる。


黄泉は苦しそうに目を細めた。


「なんで、俺じゃないんだろうね」


「……え?」


思わず聞き返す。


黄泉は小さく笑った。


でも。


その笑顔は酷く弱々しい。


「俺が力を持ってたら、なゆたにあんな苦しい思いはさせてないだろうに」


風が吹く。


木々が揺れる。


だが。


ヤマトには、

返す言葉が見つからなかった。


兄妹の間にある感情へ、

簡単に踏み込めない。


黄泉は静かに続ける。


「なゆたが暴走した時」

「壊れた時……」


その声は、

微かに震えていた。


「お前は、あの子を止められるかい?」


「俺は……」


言葉に詰まる。

脳裏に浮かぶのは。


無邪気に笑う顔。


負けて頬を膨らませる顔。


悪戯をして怒られ、泣きながら鍛錬した顔。


どれも鮮明だった。

黄泉はふっと笑う。


「酷なことを聞いたね」


そして。


少し寂しそうに空を見る。


「俺はさ」

「ヤマトのことも大事なんだ」


ヤマトの目が揺れる。


「妖力が無い俺を慕ってくれているのは、ヤマトだけだよ」


静かな声。


「上下関係なんて無ければ、友達になれたのに」


その表情が、あまりにも悲しそうで。

気づけばヤマトは、黄泉の手を掴んでいた。


「別に!」


思わず声が強くなる。


「妖力があるとか無いとか、そんなの関係ない!」


黄泉が目を丸くする。


「俺は、あんたの人柄が好きだ」

「だから従ってる」


言った瞬間。


ヤマトの顔が真っ赤になる。


「あ、いや……その……」


慌てて手を離した。


「すみません……行き過ぎた真似を……」


その瞬間。


黄泉が吹き出した。


「っ、あはは!」


楽しそうに笑う。


「いいねぇ、今の!」

「昔のヤンチャなヤマトが出てた!」

「俺、あの頃のヤマトと仲良くなりたいな」


「俺は俺っすよ……」


ヤマトは気まずそうに目を逸らす。


「とにかく」


小さく咳払いした。


「俺は貴方様の側近です」

「無茶しないでください」


真っ直ぐ黄泉を見る。


「姫様のことで悩んでるなら、朝が来るまで一緒に悩みますから」


黄泉は目を細める。

風が静かに吹き抜けた。


「……ありがとう」


その小さな声は、風へ溶けていく。


だが。


次の瞬間。


「兄様ーー!!」


元気な声が空気を壊した。


二人は同時に顔を上げる。


「兄様ー!ヤマトー!見て見て!!」


なゆたがこちらへ走ってくる。


満面の笑み。


泥だらけの足。


そして。


その手には。


「……え?」


黄泉が言葉を失う。


ヤマトも目を見開いた。


なゆたが握っていたのは、

虫ではなかった。


一人の狐の少年。


綺麗な金色の髪。


狐耳。


大きな尻尾。


怯えたように身体を震わせている。


「な、なゆた……?」


黄泉が困惑した声を出す。


「その子は……」


「うん!」


なゆたは嬉しそうに頷いた。


「拾ったの!」


「ひろっ?!」


ヤマトが思わず声を裏返らせる。


「いやその前に……!」


狐の少年は完全に固まっていた。


逃げたい。

でも逃げられない。


そんな顔。


ヤマトはしゃがみ込み、

少年の顔を覗き込む。


「……てか、なゆた様」


ジト目になる。


「またそんな泥んこになって」


「王様、お父様に怒られますよ」


「うぐっ……」


なゆたの肩が跳ねた。


助けを求めるように、ウルウルした目でヤマトを見る。


「はぁ〜……」


ヤマトは大きくため息を吐く。


だが。


口元は笑っていた。


その横で。


泥だらけの妹と、怯える狐の少年を見て。


黄泉も小さく笑う。


その穏やかな光景を。


狐の少年は呆然と見つめていた。

ここまで見て下さりありがとうございます。


まさか…その狐って……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ