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与える王

明かされたなゆたの能力。

だが、当の本人は———

ギシ、と。


静かな音を立て、ヤマトは階段を降りる。


下から聞こえるのは、ニコとサクヤの声だった。


「祢々切丸は“特務退魔課”にあるって……」


ニコが苦い顔をする。

サクヤも眉を顰めた。


「一番関わりたくない組織だな」


重い空気。


店内には、まださっきの余韻が残っていた。

ヤマトは静かにカウンターへ近づく。


「それでも」


低い声。


「祢々切丸を諦めるわけにはいかねぇ」


ニコが顔を上げる。


「ヤマト……ヒメは?」


ヤマトは小さく肩を落とした。


それでも。

少しだけ笑う。


「可愛い顔してスヤスヤ寝てるわ」


ニコがふっと息を漏らす。


その言葉だけで。

少しだけ、空気が柔らかくなった。


ヤマトは視線をサクヤへ向ける。


「サクヤ、すまねぇな」

「嫌な役、押し付けちまって」


サクヤは首を横に振る。


「いや」


静かな声。


「あれは俺にしかできないことだ」

「気にするな」


そう言って。

ヤマトの肩へ、そっと手を置く。


大丈夫。


言葉はなくても、その意思だけは強く伝わった。


ヤマトは小さく目を伏せる。


そして。


ゆっくり椅子へ腰掛けた。


深いため息が零れる。


「……なゆた」


ぽつりと呟く。


すぐに。

その言葉を訂正するように。


「……いや、王は」


ニコとサクヤが顔を上げる。

ヤマトは苦しそうに眉を寄せた。


「だいぶ限界を迎えてる」


「知ってるわ」


ニコが眉間へ皺を寄せる。

指先が小さく震えていた。


サクヤは静かにヤマトを見る。

その目だけが鋭い。


「なぁ、ヤマト」


低い声。


「王は本当に、ただの半妖なのか?」


静寂。


ヤマトは何も言わない。

サクヤは続ける。


「俺たち半妖は、普通の妖怪より妖力が少ない」

「なのに俺たちは、普通の妖怪……

いや、それ以上の妖力を持っている」


サクヤの目が細くなる。


「王と出会ってからだ」


ニコもハッとしたように顔を上げた。


確かに。


昔の自分たちは、ここまで強くなかった。


「ただの……」


ヤマトが小さく呟く。


「いや、違う」


「違う……?」


ニコが眉を寄せる。


ヤマトは昔を思い出すように、静かに目を伏せた。


「王の能力は、俺と反対なんだ」


「反対?」


ヤマトはゆっくり口を開く。


「妖力を、分け与える能力を持っている」


その瞬間。


ニコとサクヤの表情が止まった。


言葉を失う。


だが。


ヤマトは構わず続けた。


「王家は昔から、妖へ力を分け与える“器”だった」

「だから王の周りには、強い妖が集まる」

「無意識に、周囲へ妖力を流してるからだ」


静かな声。


でも。


その内容は重かった。


「気づいてないんだ」


ヤマトが苦しそうに笑う。


「あの方は」

「自分が、周りへ妖力を与えてることを」


ニコの顔が青ざめる。


「じゃあ……」

「私たちが強くなったのって……」


「あぁ」


ヤマトは頷く。


「全部、王から流れてる妖力だ」


静寂。


カラン、と。


氷が小さく音を立てた。


「俺がいないと」


ヤマトは拳を握る。


「王は妖力を溜め込み続ける」

「それこそ本当に、壊れる」


重たい言葉だった。


ニコは思わず口を押える。


サクヤだけが静かに納得したように目を閉じる。


「……だから」

「ヤマトが側近として、ずっと王の傍にいたんだな」


ヤマトは答えない。


ただ。


静かに目を伏せる。


まるで。


自分の罪を噛み締めるみたいに。


「俺は……」


掠れた声が零れる。


「守ってるつもりだった」

「でも、本当に守れてたのかは……」


最後まで言えなかった。


その言葉の続きは。


誰にもわからなかった。

ここまで見て下さりありがとうございます。

兄ちゃんと比較になってるのがいいですよね。在り来りですが

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