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静かな予兆

その場に溶け込む白夜。

「ほんなら俺はそろそろおいとまさせてもらうわ」


白夜が立ち上がり、軽く伸びをする。

ヤマトは露骨に嫌そうな顔をした。


「おー、帰れ帰れ」


しっしっと、手で払うような仕草をする。


「言われんくても帰ろぉしとるやろーが!」


「二度と来んな」


「それは無理やなぁ」


白夜は楽しそうに笑う。


その空気が、どこか不思議だった。

敵だったはずなのに。いつの間にか、こうして言い合っている。

なゆたは、そんな白夜をぼんやり見つめていた。


狐火。


笑い方。


気怠げな声。


その全部に、妙な懐かしさを感じる。


(……こんな白夜、久々に見たな)


そう思った瞬間。


なゆたの思考が止まる。


(……?)


久々?


なんで?


胸の奥が、小さくざわつく。

思い出せそうで、思い出せない。

霧がかかったみたいに、記憶がぼやける。

なゆたは小さく首を傾げた。


「なゆた?」


サクヤの声に、はっと顔を上げる。


「どうした」


「……ううん」


なゆたは小さく笑う。


「なんでもないよ」


白夜はその様子を、静かに見ていた。


だが。


何も言わない。


ただ。


少しだけ目を細める。


そして。


「ほな、またな」


ヒラヒラと手を振る。

狐火がふわりと揺れた。


次の瞬間。


白夜の姿が、煙みたいに掻き消える。


まるで。


最初からそこにいなかったみたいに。


静寂。


数秒後。


ニコが盛大に息を吐いた。


「……本当に何しに来たのよあいつ」


そして。

ハッとしたように机を叩く。


「ってか!!」


突然の大声に、なゆたが肩を揺らした。


「私とサクヤ、そんなに顔似てる!?」


「まぁ、似てるよな?」


ヤマトが即答する。


「目元とか」

「雰囲気も」


なゆたが指を降りながら数える。サクヤは静かにお茶を飲む。


ニコは信じられない顔をした。


「ヒメまで!?」


なゆたもこくりと頷く。


「うん。似てる」


「えぇぇぇ……」


ニコはがっくり肩を落とした。


「こんなぶっきらぼうな顔と……?」


「おいニコ」


サクヤが呆れたように眉を顰める。


「それギリ悪口だぞ」


「だって実際無愛想じゃない!」


「お前ほど騒がしくはない」


「はぁ!?」


ヤマトが小さく笑う。


「でもまぁ、怒る時とか似てるかもな」


「自分で言う?!」


「事実だろ」


「認めるんだ!?」


騒がしい声が店内へ響く。


なゆたはそのやり取りを見ながら、少しだけ笑った。


平和だった。


少なくとも、今は。


サクヤは小さく息を吐き、キッチンへ向かう。

空になった湯呑みを片付けながら、ふと窓の外へ視線を向けた。


その瞬間。


サクヤの目が細くなる。


黒い影。


一羽のカラスが、窓枠へ止まっていた。


じっと。


こちらを見ている。

サクヤの表情が、僅かに変わる。


(……なんだ?)


普通のカラスではない。八咫烏の血を引く者にはわかる。


あれは。


“使い”だ。


しかも。


自分から来ることなど、滅多にない。


嫌な予感が、胸を掠める。

カラスは、静かに羽を揺らした。


まるで。


“急げ”


そう伝えるみたいに。

ここまで見て下さりありがとうございます。


その…なんだ…白夜…お前、最初と性格が違わないか…?

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