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妖の牙

敵だったやつが助ける展開、熱いですよね

赤い目が、闇の中で光る。


森の奥。


屋根の上。


崩れた建物の影。


無数の妖怪達が、

四人を囲んでいた。


低い唸り声。


獣の臭い。


濃すぎる妖気が、

空気を重くしている。


「……数、多すぎでしょ」


ニコが爪を伸ばす。


鋭く伸びた黒い爪が、

月明かりを反射した。


「歓迎されてねぇのは分かってたけどさ」

「ここまでとは思わなかったわ」


サクヤは槍を静かに構える。


長槍の切っ先が、

わずかに妖気を帯びた。


「半妖が戻った」

「それだけで十分騒ぎになる」


ヤマトは大剣を肩へ担ぐ。


「なら——」


口元を歪めた。


「黙らせるしかねぇな」


その瞬間。


妖怪達が一斉に動いた。


ドッ!!


地面を砕きながら、巨大な獣妖が飛びかかる。


「っ!」


ニコが前へ出た。


爪が閃く。


ギィン!!


硬い皮膚と爪がぶつかり、火花が散る。


「硬っ……!」


獣妖が腕を振り下ろす。


だが。


「遅い」


サクヤの槍が横から突き抜けた。


鋭い一撃。

槍先が妖怪の肩を貫く。


「ガァァァッ!!」


咆哮。


同時に、別方向から妖怪達が飛び出した。


「なゆた!」


ヤマトが叫ぶ。


なゆたは静かに鬼面へ触れる。


黒い霧が、足元から溢れた。


「——来るな」


その声と同時。


大鎌が、闇の中から姿を現す。


黒く歪な刃。


霧を纏った巨大な鎌。


「っ……!」


妖怪達が一瞬怯む。なゆたは、そのまま地面を蹴った。


速い。


一瞬で距離を詰める。

大鎌が横薙ぎに振るわれた。


ズバァッ!!


黒い軌跡。


数体の妖怪がまとめて吹き飛ぶ。


「……っ!」


ニコが目を見開く。


「相変わらず滅茶苦茶ね!」


なゆたは答えない。

割れたお面の隙間から瞳だけが、静かに妖怪達を見据えている。


その姿を。


少し離れた場所から、九尾は狐火越しに見ていた。


「……ほんまに似とる」


小さな呟き。


昔、あの大鎌を振るっていた人物。

その面影が、なゆたに重なる。


だが。


「まだ甘いな」


狐火が揺れる。


次の瞬間。


一体の妖怪が、なゆたの死角から飛び込んだ。


「なゆた後ろ!」


ヤマトが叫ぶ。


だが、間に合わない。


鋭い牙が迫る。


その瞬間。


ボゥッ!!


青い狐火が妖怪を吹き飛ばした。


「……は?」


ニコが固まる。


狐火が、なゆたの前で揺れる。


九尾の声が落ちた。


「油断しすぎや」

「敵に背中見せるな」


ヤマトが眉を顰める。


「お前……助けたのか?」


「勘違いすんな」


九尾は低く笑う。


「死なれたら困るだけや」


だが。


その言葉とは裏腹に、狐火はなゆたの近くから離れなかった。


その時。


ズン——


空気が震えた。


妖怪達の動きが、一斉に止まる。


「……っ?」


サクヤが目を細める。


遠く。


城の方角から、巨大な妖気が近づいていた。


重い。


まるで空そのものが落ちてくるような圧力。


妖怪達がざわつく。


「おい……」


ヤマトの表情が険しくなる。


九尾の狐火が、

わずかに揺れた。


「……面倒なん来たな」


その声に、

初めて緊張が混じる。


闇の奥から、

ゆっくり“何か”が現れる。


巨大な影。


黒い鎧。


そして。


人形のように感情のない赤い目。


「……誰」


なゆたが低く呟く。


九尾は静かに答えた。


「王側の連中や」


狐火が揺れる。


「あいつらは、俺の言葉も聞かへん」


影が、ゆっくり大剣を持ち上げる。


その刀身には——


無数の呪符が貼り付いていた。


「人間の術……?」


サクヤが顔を歪める。


「まさか」


九尾の声が低くなる。


「もうここまで入り込んどるんか」


その瞬間。


黒鎧が、

なゆたへ向かって一直線に突っ込んだ。

ここまで読んで下さりありがとうございます。

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