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鬼面の下

まさかの新事実発覚です

轟音が、境界を揺らした。


大鎌と大剣。


ぶつかり合ったまま、

互いの妖気が空間を軋ませる。


床が砕ける。

黒い霧が、暴れる。


「っ……!」


なゆたは、大鎌を強く握り締めた。


重い。


ヤマトの一撃が、

さっきまでとは比較にならないほど重い。


(違う……)


これはもう、

ヤマトの力だけじゃない。


九尾の妖気が混ざっている。


「いい顔や」


ヤマトの口が、笑う。

だが、その目は赤い。


「もっとやれるやろ?」


「……黙れ」


なゆたが低く吐き捨てる。


その瞬間。


ドォッ!!


ヤマトの大剣が、無理やり押し込まれた。


「っ……!」


地面が沈む。

腕が軋む。


「なゆた!」


ニコの声。横から飛び込む。


鋭い爪が、ヤマトの死角を狙った。


だが——


「遅い」


大剣が、一瞬で振り抜かれる。


「っ!」


ニコが防御する。


それでも勢いを殺しきれず、

吹き飛ばされた。


「ニコ!」


サクヤが槍を構える。


影が広がる。


「縛れ…!」


地面から無数の黒い影が伸び、

ヤマトの足へ絡みつく。


一瞬、動きが止まる。


「今だ、なゆた!」


サクヤが叫ぶ。


なゆたは、動けなかった。


(斬る……?)


目の前にいるのは、

ヤマトだ。


ずっと隣にいた。


支えてくれた。


手を引いてくれた。


その相手を——


「……っ」


迷った。


その一瞬。


ヤマトの目が、細くなる。


「隙やな」


影を引き千切る。


次の瞬間。


目の前にいた。


「——!!」


速い。


大剣が振り下ろされる。

咄嗟に、大鎌を構える。


ガキィンッ!!


衝撃。


空気が裂ける。


そのまま——


バキ、と。


小さな音が響いた。


「……え」


ニコの声が止まる。


なゆたの鬼面。


右端のひびが、

一気に広がっていた。


「なゆた、下がれ!」


サクヤが叫ぶ。


だが遅い。


ヤマトの剣が、

再び振り抜かれる。


真正面。


避けきれない。


「っ——!」


なゆたは、大鎌で受けた。


その瞬間。


バキィンッ!!


鬼面が——割れた。


静寂。


ひび割れた破片が、

ゆっくり地面へ落ちていく。


カラン。


カラン、と。


誰も動かなかった。

空気が、止まる。


黒い霧が、

なゆたの周囲から溢れ出す。

今までとは比べ物にならない。


濃い。


重い。


禍々しい。


「……」


ヤマトの動きが、

一瞬止まる。


落ちた面。


その下から現れた目を見て——


黒の奥に潜む瞳が、揺れた。


「……っ」


ヤマトの中で、何かが軋む。

九尾の支配が、わずかに乱れる。


「……そんな顔」


かすれた声。


今度は、

確かにヤマト自身の声だった。


「するなよ……」


「ヤマト!」


なゆたが顔を上げる。


だが。


次の瞬間。


ヤマトの体が、

大きく震えた。


「ぐっ……!」


頭を押さえる。


赤い妖気が、

体に絡みついていく。


——戻すな


声が響く。


——そいつを壊せ


「やめろ……!」


ヤマトが叫ぶ。


苦しそうに。


必死に抗いながら。


「来るな……なゆた……!」


その声に、

なゆたの胸が強く締め付けられる。

黒い霧が、さらに膨れ上がった。


境界が、揺れる。


扉が軋む。


空間そのものが悲鳴を上げ始める。


「まずい……!」


サクヤの顔色が変わる。


「境界が崩れる!」


「なによそれ!」


ニコが叫ぶ。


「このまま妖気が暴走すれば、ここごと飲まれる!」


黒い霧が、

足元を侵食していく。


なゆた自身、

止められない。


(……抑えろ)


そう思うほど、

逆に溢れていく。


怖い。


苦しい。


でも——


「返して」


小さく呟く。


視線は、ヤマトだけを見ていた。


「……兄ちゃんを返して」


その瞬間。空気が、止まった。

ヤマトの口元から、笑みが消える。


「……兄?」


初めて、九尾の声が揺らいだ。


「何を言うてる」


低く、確かめるような声。


「お前の兄は——」


一瞬、間が落ちる。


「お前が殺したはずやろ」


その瞬間。


ドォォッ!!


黒い霧が爆発した。


境界全体が、大きく揺れる。


扉が砕ける。


闇が裂ける。


サクヤが歯を食いしばった。


「……っ、これ……!」


ニコの顔から血の気が引く。


「嘘でしょ……」


空間が、

なゆたを中心に歪んでいる。


まるで——


“異界そのもの”が、

呼応しているように。


ヤマトの黒い目が、

ゆっくり細くなる。


そして。


口元が、笑った。


ヤマトじゃない。


あれは——


九尾。


「それや」


嬉しそうに。


心底楽しそうに。


「それを待っとった」


黒い霧が、

さらに空を埋め尽くしていく。


そして——


なゆたの瞳が、

ゆっくりと染まり始めた。

ここまで見てくださりありがとうございました。

まさかのまさかですね。

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