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奪われた刃

ヤマトが取られました

静寂が、重かった。

ヤマトは、その場に膝をついたまま動かない。


落ちた大剣。


荒い呼吸。


肩が、小さく上下している。


「……ヤマト」


ニコが慎重に近づく。


「今の、戻ったのよね?」


返事はない。

ただ、俯いたまま。


「おい」


サクヤが低く呼ぶ。


「聞こえてるか」


沈黙。


その時だった。


「……あぁ」


小さく、声が落ちる。


「聞こえてる」


ヤマトが、ゆっくり顔を上げた。


——その目を見た瞬間。

なゆたの背筋が凍る。


黒い。


ほんのわずかに。瞳の奥が、黒く染まっている。


「……っ」


ヤマトは立ち上がる。

ふらつきながら。

だが、その動きは妙に滑らかだった。


「悪いな」


笑う。

いつものように。


なのに。


決定的に違う。


「……ヤマト?」


ニコが眉を寄せる。


「なんだその顔」


ヤマトは首を傾げる。


「そんな警戒すんなよ」


一歩。前に出る。


その瞬間。


サクヤの槍が、ヤマトの喉元に突きつけられた。

ピタリ、と止まる。


「そこで止まれ」


低い声。

空気が張る。


ヤマトは、槍を見下ろした。


「へぇ」


口元が、歪む。


「戻ったってば」


「……お前、ヤマトじゃない」


サクヤが断言する。


「気配が違う」


沈黙。


そして——


ヤマトが、笑った。


「正解や」


空気が、凍る。

関西訛り。


一瞬で。


全員の顔色が変わる。


「九尾……!」


ニコが後退る。


ヤマト——いや。

“中にいる何か”は、楽しそうに目を細めた。


「全部やないで」


肩をすくめる。


「まだ残っとる」


胸を軽く叩く。


「この辺にな」


「ヤマトを返せ」


なゆたの声が落ちる。

黒い霧が、揺れる。


それを見て、“それ”は笑った。


「怖い顔するなや」

「取って食うわけやない」


「黙れ」


空気が、歪む。

なゆたの足元から、黒い霧が広がる。

鬼の面に走るひびが、また一つ増えた。


「……っ」


サクヤの表情が変わる。


「なゆた、抑えろ」


「でも——」


「今はヤマトが先だ」


その言葉に、なゆたの動きが止まる。


一瞬。


その隙を——

逃さなかった。


ドンッ!!


ヤマトの姿が消える。


「速——」


言い終わる前に、大剣が、振り抜かれた。


轟音。


床が割れる。


ニコが咄嗟に飛び退く。


「っ!!」


「避けるなや」


ヤマトの声。

だが、笑い方が違う。

獲物を追う目。完全な敵。


「チッ……!」


ニコの爪が伸びる。高速で踏み込む。


斬撃。


連撃。


だが。


ガキン!!


大剣一振りで、全部弾かれる。


「軽いなぁ」


振り返りざまの一撃。ニコが腕で受ける。


「がっ……!」


吹き飛ぶ。壁に激突。


「ニコ!」


サクヤが槍を構える。

影が広がる。


「——縫え」


無数の影が、ヤマトの足を絡め取る。

動きが止まる。


「今だ!」


サクヤが踏み込む。

槍が一直線に走る。喉を狙った、正確な一撃。


だが。


ヤマトは笑った。


「甘い」


影を——引き千切る。


「なっ……!?」


力任せじゃない。

妖気そのものが、違う。


槍を避け、懐へ入り込む。


「っ!」


サクヤの腹に、大剣の柄が叩き込まれる。


鈍い音。

サクヤが吹き飛ぶ。


「ぐっ……!」


「サクヤ!!」


残るのは、なゆただけ。


ヤマトが、大剣を肩に乗せる。

赤い目が、細くなる。


「ほな」


一歩。


「次はお前や」


黒い霧が、溢れる。なゆたの大鎌が現れる。


空気が軋む。


「返して」


低い声。


「ヤマトを返せ」


「嫌や」


即答。


「せっかくやしなぁ」


ヤマトの顔で、九尾が笑う。


「試したいやろ?」

「お前が壊れたら、どうなるか」


その瞬間。

黒い霧が、爆発した。


ドォッ!!


空間が震える。

なゆたの妖気が、一気に膨れ上がる。


鬼の面のひびが、さらに広がる。


「なゆた!!」


ニコが叫ぶ。

だが、止まらない。


「返せ」


一歩。


「返せ」


また一歩。

床が、沈む。


空気が悲鳴を上げる。


ヤマト——九尾が、

初めて目を細めた。


「……あぁ」


楽しそうに笑う。


「やっぱり、お前や」

「その力」

「最高やなぁ」


次の瞬間。


なゆたが、消えた。


「——っ!」


誰も見えなかった。

ただ。


ガキンッ!!!!


凄まじい衝撃音。

大鎌と大剣がぶつかる。


空間が、裂けた。

ヤマトの足元が砕ける。


なゆたの霧が、荒れ狂う。


拮抗。


だが——


なゆたの目が、少しずつ変わっていく。


黒く。


深く。


「……っ」


サクヤの顔色が変わる。


「まずい」

「あれ以上は——」


その時。

ヤマトの口元が、笑った。


「来い」


挑発するように。


「もっと見せてみ」


その一言で。


なゆたの中の何かが、


完全に揺らいだ。

ここまで見てくださりありがとうございます。

関西訛りが間違ってたりしたら本当にすみません

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