深まる謎
カーテンが揺れる。ヤマトはノートを横に何か書く。
「半妖の王…祢々切丸…神咲という陰陽師…そして、俺の失われた能力」
ペンを止め、外を見る。
風が気持ちいい。
「リンネ、どうしてっかな」
再びノートに目を移し、書き加える。
ドアの隙間。3人はヤマトの様子を覗いていた。
「あのヤマトが書き物しとる…」
「久々にあんなヤマトを見たわ…いつぶりかしら…」
「ヤマトは感覚型だ…槍でも降るんじゃないのか…?」
「おーい?そこの3人聞こえてっからね?」
3人は気付かれ、部屋の中に入る。
ニコがノートを覗く。
「それ誰のノート?」
「分からない。ただ…」
「このノートは使える。これがあったから神咲たちに目をつけれた。俺は半妖の王と話しがしたい。もしそうなったら一緒に来てくれるか?」
3人は目を見合わせる。
「当たり前じゃない。あんた1人で行かせないわよ」
「また突っ込んで怪我するかもしれへんしな」
「お前が冷静に話せるのか心配だからな」
その言葉にヤマトは笑う。そしてノートを見る。
「色んなことが書いてある。しかも一つ一つ解決していってるわけじゃなくて同時に起こってる。整理付けるために書いてあるようなもんだこれは。ヒントしか書かれてねぇ」
ページを1枚1枚開く。そして、ペン先が潰れるほど殴り書きされた大きな文字。
"まだみんなと一緒にいたい"
「これを書いたやつは1人で抱え込みどこかに消えた。もしかしたら俺が忘れている記憶の中の人物かもしれねぇ」
「半妖の王、神咲の名前が書いてあるってことは少なくともそいつらはこの持ち主を知っている」
「だから、半妖の王と話しをしに行かなくちゃならない」
ノートを閉じる。強い意志を持った眼差しは揺らぐ。
「けど、その前に早く治してもらわないとお店が大変よ?ヤマトいないから回らないわ」
「ちゃんと治すさ。治さねぇとニコが使ってくれた能力が無駄になる。それに、早く元気になってリンネにも会わなきゃだし」
白夜はノートを手に取りページを開く。
「どうして俺ら4人の戦いまでも知っているのか…特務退魔課に大妖怪との戦い…俺ら4人以外は知らへんはず」
「この持ち主はその場にいた…けど何かしらの理由で…」
「記憶を書き換えた」
「そう思うのが筋だな。どうして記憶を書き換えたのか…俺らから離れる理由が何なのか。問題が多すぎるな」
白夜はノートを捲る手を止める。
「影にみんなを潜ませて一斉攻撃…?黄泉奪還…」
白夜はノートを閉じ机に置く。
あの日、俺らはどうやって特務退魔課に乗り込んだんや…?気づけば戦っていた。柊は俺1人で倒したけどどうやって倒した…?
「記憶操作の術…」
「術?」
「黄泉様が生み出した術。不完全で使われへんかったけどな」
「禁断の術や。使えば使ったやつの記憶が消え思い描いた道になる。あまりにも強すぎる術のため使うのは禁止されとった」
「けど、覚えてない部分が多すぎる。ヤマトの記憶の中の人物。それは多分俺らも知っとる誰か。ニコちゃんたちは忘れてとる人物の違和感はあるか?俺はない」
「私もないわ」
「俺もだ」
白夜はゆっくりヤマトを見る。
「ヤマトだけ違和感が残っとる状態。消した本人は、ヤマトにだけ躊躇した。もしくはお互いの気持ちが強すぎて効き目が俺らより薄いっちゅー可能性がある」
「お互いの気持ちが強い…まさか」
「兄ちゃん…」
「兄ちゃん…?」
「最近、頭の中で聞こえるんだよ。"兄ちゃん"って」
「誰の声かは分からねぇ」
「…ヤマトに兄弟はおらへん。けど、どこかで血の繋がりのない妹か弟がポッと出てきて、おったとしたら…字を見る限り女の子っぽいから妹やろぉな」
ヤマトは顔を顰める。
「一気に考えたって仕方ない。ゆっくり考えればいい」
「サクヤの言う通りだな…」
「俺はもう少し書き出す。お前らは?」
「俺らは店の掃除。倉庫とかホコリだらけやし」
「倉庫…」
「なんのせ、まだ安静にしときや」
3人は部屋から出る。また静かな空間。
「妹…俺の妹はどんなやつだ…?」
風によってページが自然と捲られる。
"まだみんなと一緒にいたい"
よく見ると涙の跡。
相当苦しかったんだろうな…どこの誰かは分からねぇ。けど、大丈夫。俺が絶対見つけ出してやるから




