目覚め
気づけば白い天井が見える。目を何度か瞬きさせ身体を起こそうとする。だが、それと同時に激痛が走った。
血液が巡っていない感覚。
起き上がることもできず首だけ上げる。
ベッドの脇には眠るニコ。
「俺は…なにして…」
「ヤマト…?」
ニコが目を覚ます。
「ニコ…俺は…」
「よかった…1日ずっと目を覚まさなかったから心配したのよ」
瞳が揺れ涙が溢れる。
「無茶してんじゃないわよ…っ!1人でも欠けたら百鬼夜は成立しないじゃない!」
「すまねぇ…」
痛みに耐えながら腕を上げる。包帯だらけの腕。
俺は、あの日…死にかけた。死にかけたところで半妖の王が庇った。なぜ庇った…?そして、どうやって意識が戻った…?
「なぁ、あの日のこと教えてくれないか?」
「なんや、目ぇ覚めたんか」
ドアが開き、白夜とサクヤが立っていた。
「お前ら…迷惑かけた…」
「ホンマやで」
「教えてくれ…あの日のことを…」
「リミッターが外れた。正直、お前は死んどってもおかしくない。間一髪で半妖の王がお前を引き戻した」
「俺らは背中しか見えへんかったから何したかまではわからん」
「リミッター…暴走か…」
「最悪なことをしたな…」
身体を無理に起こす。
「ダメよ!寝てなさい!あぁ、ほら…!また血が…」
身体全体に巻かれた包帯。横腹から血が滲む。それでもヤマトは身体を動かし深く頭を下げる。
「お前らに迷惑しかかけてない。1人で突っ走って怪我して助けられた…次は同じことはしねぇ」
「本当にすまなかった」
「お前がそんな風に謝るのは慣れん。俺は気にしてへん。頭を上げぇや」
「けど、次はないで」
「また次…リミッター外したら今度は俺がお前を切る」
「…そうしてくれ」
ニコは包帯を取り出す。
「包帯変えるからじっとしてちょうだい」
「半妖の王はあの後、どうなった」
「闇に消えた。ただ、消える前にヤマトの妖力はほぼゼロに等しかったが王の能力で元に戻した。その後の行方は知らん」
「なんで俺を庇って…」
遠い記憶の中に半妖の王を切った記憶。
それでも立ち上がる記憶。
曖昧ながらにも覚えていた。
「今日はまだ安静にしてちょうだい。能力が戻ったらまた来るから」
「能力を使わせてしまってすまねぇな…」
「どうってことないわ」
「今、食事を持ってこよう。食えるか?」
「あぁ、腹は減ってる」
「待ってろ」
サクヤは階段を降りる。
「ヤマト」
「ん?」
「王の顔、覚えとるか?」
「あの時、王はヤマトに跨りお面を取っとった。俺らからは見えへんかったからな」
思い出そうとする。だが、
「覚えてねぇ…」
「そうかえ…ま、なんのせ良かったわ。お前が死んだらリンネちゃんも悲しむやろうし」
「本当にな」
「ほな、安静にな」
白夜は部屋を出ていく。
ヤマトは身体を倒す。額に手を当て大きく息を吐いた。
神咲…あのノートは、誰かが全て分かって書いていた。あの日、カマをかけて正解だったのか…?いや、そのおかげで色々防げたかもしれない…
「ただここからどうするか…だよなぁ…」
後から辛くなる。あれは何を表している?どうして神咲は半妖の王を知っていた?姿を知っている?俺が神咲たちを暴いてしまった。もっと慎重に行くべきだった。
「ちゃんと責任取らねぇとな…」
今はただ治るのを待つ。そっと目を閉じ風の音を聞いた。
「ヤマト」
声がし振り向くと、サクヤがいた。
「飯だ。1日なにも食べていなかったから胃に優しいものを作った」
「あぁ、悪いな」
「どうってことない」
ヤマトは身体を起こし匙を手に取る。
「神咲という女、よく暴いたな」
「…カマをかけただけさ。否定もせずすんなり認めてくれたからよかった。けど、そのせいで迷惑をかけた」
サクヤはふと笑う。
その様子にヤマトは眉を顰める。
「迷惑なんてたくさんかけまくろうぜ…そう言ってたお前がこんな弱気とはな。白夜が言っていた通り、俺たちは気にしていない」
「むしろ、正体を暴いたことでこの店を守れた。立派なことをした」
「これは胸を張っていい。だが、1人で抱え込むのはこれっきりにしてくれ」
サクヤは立ち上がりドアに向かう。
匙を握る手が強くなる。
「ほんと、俺はお前らと出会って良かった」
「にしても美味いなこれ」
「おかわりもある。ゆっくり食べろ」
手を振りサクヤはその場を去る。
「迷惑なんてかけまくろうぜ…確かにその通りだな…ははっ」
痛む身体。それでも3人のお陰なのか心が軽かった。




