外れたリミッター
膨大な妖気。
ニコたちは立ち尽くすことしか出来ない。
「なによ…あの妖気は…」
「あれは…リミッターが外れた」
「リミッター…?」
「せや。俺ら妖怪は無意識に力を抑えとる。全力を出し続けたら身体も精神も持たへんからな」
「けど今のヤマトは違う。何かの感情が一気に溢れたんや」
「王が刺された瞬間から様子がおかしかった。あいつは王に対して俺らとは違う何かを感じとる」
「今のあいつは、自分で自分を止められへん」
ニコは言葉を失う。目の前にいるのはヤマトなのに別人のように見えた。
「やはり妖怪は暴走する…その状態だと危険なので私は引きますね」
「せっかくなので人形は増やしてあげます」
神咲は札を取り出し六等星の光とともに消えた。
敵がヤマトに襲いかかる。瞬きする間もなく敵が倒れ灰になる。
ゆっくり敵に向かって歩き出す。
ガリガリと刃が削れる音。
それでも敵は一斉にヤマトに攻撃をする。
ヒュッと音を立て刃を振りかざす。
1体だけではなく、まとめて何体か灰になる。
強く踏み込み、大剣を振るう。次々消える敵。
「は、ははっ…あっはははは!!!」
「全部、全部全部全部全部全部全部!!!!」
「壊せばいい」
狂気滲む笑顔は目に負えない速さで敵を消す。
「ニコちゃん、サクヤくん…敵対象が変わった」
その言葉でニコの目が揺らぐ。
「まさか…」
「ご察しの通り。敵はヤマトとなる」
「あれはもうヤマトちゃう。半妖でもない」
「ただの化け物や」
「今のあいつに話は通じん」
苦しそうな顔。それでもやむを得なかった。
「とりあえず、ヤマトがあの特殊部隊を全部倒してからや…それまでは極力動かんようにしとって…でないと、一瞬にして消えるで」
笑いながら敵に向かうヤマト。
身体を切られても構い無しに切り返す。
大剣が宙を舞う。
ヤマトの手から離れた。
ここぞとばかりに敵はヤマトに押し寄せる。
だが、
そんなのは気にもせず拳を握り殴る。拳が傷つき、血が出ても止まらなかった。
「ヤマ…ト…」
誰にも届いていない小さな声。
半妖の王はただ暴走するヤマトだけを見ていた。
「あっははは!!ほら、もっと来いよ…もっと楽しませてくれよ!!」
「ヤマ──」
「あかん」
白夜はニコの口を塞ぐ。
「だって、あれじゃ…ヤマトが…っ」
「それでも、まだダメや」
ニコの手は震える。落ち着かせるかのように白夜はニコの手を強く握る。
「まだ、まだ足りない…まだ…」
グルンと首が回る。
目が合った。
白夜は尾を逆立てる。
そこに居たのは確かにヤマトだった。
けれど、
ヤマトではなかった。
ゆっくり、
ゆっくりと、
スローモーションのような世界。
気づけば目の前にはヤマト。
剣を振り上げる。
「ヤマト!!」
声が届かない。剣を振りかざす。
ガキン
大きな音。
ニコが薄く目を開けると刺されたはずの王が大鎌で受け止めていた。
流れる血。
それでも王は3人の前から退けなかった。
「次は…お前が相手か?」
王は強く踏み込みヤマトの後ろに回る。襟を掴み遠くに投げる。
3人から距離を取らせた。
「さっきはすぐ死んでつまらなかった。お前はどうだろうなぁ!」
両者どちらからともなく踏み込み剣が交わる。
赤いのにどこか黒い目。
これがリミッターが外れるということ。
外れた先に待つ代償は、
命。
瞼から、口から血が流れる。それでもヤマトは止まらなかった。




