神咲
「にしてもリンネちゃんに義理のお父さんが居たとはね〜」
「でも、仕事の上司でもあるんやろ?父親と一緒に働いとるってことか」
閉店後、4人は片付けをする。
酒田という男の話題。
「2人とも口じゃなくて手を動かせ」
その瞬間、
カラン
ドアが開く音がした。
4人は一斉に目を向ける。そこには青いストレートロングの女性と黒髪の男性。
「あら!すみません…今日はもう終わっちゃって…」
「忙しい時にすみません!」
ヤマトはただじっと見つめる。
「お話しがあって来たんですよ」
「お話し?」
ニコは首を傾げる。そこにヤマトが前に出た。
「あんた、神咲か?で、そっちは桜木」
「ちょ、ヤマト!」
神咲は笑う。
「名前言いましたっけ?」
「あんた、陰陽師だろ」
その言葉で空気が冷える。
静かな空間に神咲は目を細める。
「どうして?」
「否定しないってことはそうなんだな。俺達が何なのかも知ってる。だからわざわざこんな森の中にある店に来た」
ヤマトは人間の術を解き、犬神の姿になる。大きな獣耳に尾。
「目的はなんだ。俺たちを殺すことか?」
「バレてしまいましたか…いえ、逆ですよ」
神咲は椅子に座る。4人をゆっくり見渡す。
「半妖の王…なゆたを殺して欲しいのです」
「なんですって…」
「あなたたちは半妖…あ、でもそこの九尾さんは普通の妖怪でしたね…調べさせてもらいました」
ヤマトは鋭い視線を送る。
その視線に桜木は神咲の前に出た。
「半妖の王は何れ世界を壊す。それを防ぎたいのですよ」
「じゃあ、なんで俺らに特殊部隊を送った」
「…あなた、感情で動くタイプだと思ってたんですが…」
「意外と頭が回るんですね」
神咲は笑う。
「おびき寄せるためです」
「不思議に思いませんか?あなた達に帳が落ちれば半妖の王がやってくる。それを狙いました」
「ふざけんなよ。俺らを囮にしやがって」
「ふざけてませんよ。どうですか?協力してもらえませんか?」
「断る」
サクヤが前に出る。
「半妖の王は俺たちの問題だ。ただの人間が出る場はない。それに、信用もできない」
「どうすれば信用してくれますか?」
「信用する気はない。帰れ」
「いえ、まだ帰りませんよ。協力に同意するまでは…」
神咲は手を前に出す。
次の瞬間、
帳が降りた。
「やっぱこうなるのね…」
「今ここであなたたちは負けます。負けたら協力してくださいね。半妖の皆さん」
帳の外に神咲は消える。
目の前に現れる特殊部隊。
「まじで何なんだあいつ…っ!」
「考えても仕方ない。行くぞ」
4人は武器を取り出し踏み込む。
「邪魔ばっかしてんじゃねぇよ!」
大剣は次々、敵を切る。
「数が多いな…」
ヤマトは左手にもう1本大剣を取り出した。
「さっさと終わらせる」
2本の大剣を振り、薙ぎ払う。
切っても
切っても
減らない敵。
どのくらい時間が経ったのだろうか。さすがのヤマトも息が上がる。
「…っはぁ、はぁ…っくそ!!」
「あかん…体力が追いつかへん…」
「何なのいったい…」
足が動かない。それでもヤマトはゆっくり前に出る。
「まだ倒れてねぇ…死んでねぇ…」
汗を拭い、また踏み込む。
「ヤマト!後ろや!」
左手の大剣で防ぐ。
「邪魔だ!!」
そのまま振りかざし切る。それでも減らない敵。
コツコツと遠くから音。
ニコは耳を動かし振り返る。
そこには
半妖の王がいた。
「なん、で…こんなときに…」
膝から崩れる。
「ニコ!半妖の王までも現れたか…っ」
サクヤは顔を顰める。
だが、半妖の王は無視して通り過ぎる。
黒い霧から大鎌を出す。力強く踏み込み一気に距離を詰め、
特殊部隊を切る。
それに気づいたヤマトは止まる。
「またてめぇか…」
そんな言葉を無視するかのように次々、敵を切る。
「やっと現れましたね。なゆたさん」
外にいるはずの神咲がタイミングよく現れる。
「なんであの神咲っちゅう奴がここに…」
「一体どうなっているの…?!」
「敵しかいない…気をつけろ」
半妖の王はただ黙る。
「…」
「姿、見せないんですか?」
「あぁ…そっか…あなた───」
次の瞬間、神咲の喉に短剣。
間一髪で神咲は避けた。
「…まだそうしたいなら付き合ってあげます。けどいいんですか?後からが辛くなりますよ?」
「なん、の話しだ…」
ヤマトは2人を見る。
意味がわからない話し。
「まだ人形はたくさんいるのでどうぞ遊びましょうか」
神咲の後ろから無数の特殊部隊。
ヤマトたちは構える。
その瞬間、無数の槍が敵を貫く。
横を見ると半妖の王が手を前に出していた。
「さすが王と言ったとこでしょうか。けど、これはどうでしょう」
「…っ?!ヤマト!後ろ!!」
「またかよ…っ!!」
間に合わない。もうすぐそこまで刃は来ていた。
ドンッ
押される感覚。すぐに顔を上げると目の前には半妖の王。手を広げ剣が身体を貫いていた。
「なん、で…」
お面の隙間、貫いた刃から流れる血。
その血を見た瞬間、忘れたはずの何かが胸を抉る。
"また失う"
"また奪われる"
そんな言葉が脳を埋め尽くす。
次の瞬間、
ヤマトの目は揺らぎ赤く燃える。
ひどい頭痛。
焼けるような心臓。
早くなる呼吸。
「待て…おい、ヤマト…」
白夜が何かに察する。
神咲はその様子を見て笑う。
「やっと壊れてくれましたね」
ヤマトの妖気が帳全体を支配する。
「殺す…全員殺す」
赤いはずの目は太陽のように燃え、
闇のように黒くなり、
暴走した。




