ニコと白夜
「ねぇ、こっちとこっちだったらどっちが合う?」
「ニコちゃんやったらこっちかなぁ…けど、もう1個は…あー、これと合わせたら良いグラデーションになると思わへん?」
「あんたを連れてきて正解だったわ」
ニコと白夜はコスメコーナーにいた。両手に持たれたリップ。白夜は他の商品に目を移す。
「それも可愛いわね」
「これは合わへんかもな。ニコちゃんやったらこっちが合うんちゃう?」
「なんでそんな詳しいのよ…サクヤだったらどっちでもいいとか変わりないとか言うのよね」
「ははっ、サクヤくんらしいわ」
ニコは真剣に両手に持つリップと睨めっこをしている。
白夜は2つとも取り上げそのままレジに向かう。
「あ、ちょっと!」
「悩むぐらいならどっちも買ったらええやろ?ニコちゃんはべっぴんやしどっちも似合うわ」
ニコが駆け寄る前にレジを終わらせる。ラッピングされた袋。
「これは俺からのプレゼントってことで。付けた姿、また見せてや」
「…ありがとう」
さりげないエスコートは慣れない。
いつも男を引っ張ってきた側。
それが今日、ずっとエスコートされている。
「慣れないわね…」
「慣れへんやろ?ヤマトもサクヤくんも我が道に突っ走るタイプやからねぇ」
「ヤマトとは昔から仲良いのだっけ」
「せや。昔はもっと荒れとったわ。俺は黄泉様から聞いた話やけど、幾つもの村を荒らした赤夜叉って呼ばれとった。それが今じゃ馬鹿面になり彼女できてから惚気話ばっか」
「ほんとにね」
足が痛む。新しい靴はまだ慣れない。
「…ニコちゃん」
「なによ?」
「どっか座って休もうか」
分かっててなのか、たまたまなのかわからない。けど、
「えぇ、そうしましょ」
さりげない助けが落ち着く。
カフェに入り座る。
「あんたってコーヒー飲めたのね…」
「そりゃあ飲めるで」
「お茶しか飲めないイメージあるわ」
「ま、狐やからね」
ニコはずっとマシンガントークで話す。その話しをニコニコと聞いていた。
「…ってことなんだけどどう思う?!」
「それはあらへんなぁ。まぁ、サクヤくんも悪気あってやないし」
ジッと白夜を見つめる。
「どないしたん?」
「その訛りって取れるの?」
「訛り?」
「ちょっと取って話してみて」
「えぇー、難しいなぁ…」
白夜は咳払いをひとつする。
「って言っても何を話せば…」
「なんでもいいわ。私ばっか話していると申し訳ないじゃない。そうね…じゃあ、このあとどうする?」
「…あー…そうだな…じゃあ、ニコちゃんが行きたいところに行きたいかな。あと、申し訳ないとか思わなくてもいいじゃん。ニコちゃんの話、楽しいから聞かせて」
ニコは目を見開く。
「……失格ね。やっぱ訛ってたほうがあんたって感じするわ」
「なんやねんそれ。まじでむずかったわ」
楽しそうに笑う。どこか心地がいい。ニコは外を眺める。
晴天。
そこに通る銀髪の少女。
「…リンネちゃん?」
「え?」
「今、リンネちゃん通った…」
「それは…追いかけるしかないなぁ」
白夜は先に立ち上がり会計を済ませる。
「あ、ちょ、お金…」
「楽しい話しを聞かせてくれたお礼や。ほな行くで」
ニコは白夜を追いかける。
「ちょっと、急がないと追いつけないわよ」
「足痛いんならゆっくりの方がええやろ」
やっぱ分かって…
「それに、見失わん距離や。大丈夫やで」
2人はリンネの後を追いかける。ふとリンネは路地裏に入った。
「あんなとこに用事…?」
チラッと顔を覗かせるとそこに居たのは、
ヤマトではない赤い髪をした大きな男がいた。
「誰…あれ…」
リンネと男はそのまま歩き出した。




