お呪い
「…お邪魔します」
「どうぞ」
恐る恐る部屋に入る。
綺麗に整えられた家具。
なのに物は少ない。
「適当に座ってて」
リンネはキッチンに行きお茶を出す。
「座らないの?」
「え?!あ、はい!座ります!」
スっと正座。
「なんで正座…?」
ダメだ…緊張する…彼女の部屋だぞ?!しかも2人っきり!!手は出さないとは言ったけど…!言ったけども!!
「はい、お茶」
「ありがとうございます…」
「なんで敬語なの…」
リンネはベッドに向かい、大事そうにぬいぐるみを置く。
ガラス張りのショーケースに目が行く。
綺麗に並べられた酒の瓶。
「これ…」
「お酒の勉強してるから。いろんなカクテルを研究中。どの組み合わせが合うかなって調べてたらいっぱいになった」
「本当に酒が好きなんだな」
「好き」
リンネはヤマトの隣に座る。緊張で手汗が滲む。
ふと目に映るゲーム機
「ゲーム機?」
「1人の時間が多いから暇つぶし。やる?」
「ぜってー負けねぇからな?」
「こっちのセリフだよ」
コントローラーを持ち対戦。
勝者は、
リンネ。
「負けたーっ!!くっそぉ…」
「ずっとやってるからね。ボクに勝とうなんざ100年早いよ」
「もう1回!もう1回チャンス!!」
「望むところ」
2人はゲームに没頭する。
「いやー、あんだけやって勝ったの1回。しかも、リンネの操作ミス」
「操作ミスしたのまだ後悔してる…」
「あっはは!根に持つなぁ」
後ろに手を付きリラックスするリンネ。パーカーがずり落ちる。
「それキャミコーデってやつ?」
「そうらしい」
「…へー…」
髪の隙間から見える肩。
目を逸らす。
「もうゲームはいい?」
「いーや、あと10回俺が勝つまでやるね」
「日が暮れそうだねそれ」
「なんだって??」
「やろうか。けど、その前に…」
ヤマトの肩に寄りかかる。
「…リンネさん…?」
「ヤマトって色んな人と付き合ってきたんでしょ?」
「あー…いや…まぁ…」
「慣れない?」
「慣れ?」
「ボクの前では恥ずかしそうにしているから。沢山付き合っても慣れないものなのかなって」
「いや、それはリンネだからだよ。リンネだから緊張してしまう」
「そっか」
手をニギニギと触られる。ヤマトはリンネの行動に大人しくされるがままになっていた。
「手、大きいね」
「リンネが小さいんだよ」
静かな空間は心臓の音がよく響く。
「リンネ、そろそろゲーム…」
「まだ」
「はい…」
ゆっくり顔を上げ、ヤマトの顔を見つめる。
無意識にヤマトは頬に触れキスを落とす。
「本当にリンネは可愛いな」
「それは…他の人にもやってたの?」
「…リンネ」
頬を撫で見つめる。
「今の話しをしよう。昔はどうでもいいんだよ」
「そういうもんなの?」
「そういうもん」
光るネックレスをなぞる。
「俺は今、リンネしか見てない。他のやつに話しかけられてもリンネのことで頭がいっぱい」
頬から首に手を下ろす。
そっと首を掴む。
「だから過去の女なんてもう記憶にない」
「首輪」
「え?」
「どこかに行ったら首輪をつける…」
「そうだな。俺の部屋にでも閉じ込めておこうか」
強い独占欲。
言葉にするのがダサいのは知ってる。
それでもこの気持ちをしまっておくのが難しい。
顔が近くなる。
リンネは反射的に目を閉じる。
首に違和感。
ヤマトの髪が頬を擽る。
「くすぐったい…」
強く吸われる感覚。
「いっ…な、に…?」
そっと顔を離す。
「ヤマト…?」
「ん?」
「なにしたの?」
首を傾げると指をさす。
「鏡、見ておいで」
言われるまま洗面所に向かう。
首に赤い痕。
「これは…?」
「俺のっていうお呪い。さ、ゲームの続きやろう」
「…俺のっていうお呪い…」
鏡に映る自分の顔は赤い。
「そう、だね…今だったら負けそうかも…」
初めての恋。
こんなにも甘いものなのかと不思議に思う。




