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ぬいぐるみ

いつもの場所。


いつもの時間。


ヤマトはただ1人の人物を待つ。


「お待たせ」


「リン────」


顔を上げると、


大きな黒のパーカーに隙間から見える白の服。


「え、下…」


「履いてるよ」


パーカーの裾を上げると短パン。いつもは前を開けていたが今日は胸下あたりまでチャックを閉めている。

そのせいなのか下は履いてないように見えるような格好。


「わー…リンネさんはよく俺を試されることで…」


「試す…?」


「いや、なんもないよ。今日は前閉めているんだな」


「気づいたんだけど、開けていたらずり落ちてくるんだよね」

「それに…」


リンネはチャックを開ける。

開けるとへそが見える。


「おへそ見えて恥ずかしい」


「そっちのほうがご褒美ですけどね」


「じゃあ、開けとこ」


これか〜…ニコが言ってたコーデ…ありがとうニコ様…


「ねぇ」


リンネが振り向く。


「似合ってる?」


「あぁ、すっごく似合ってて可愛い」


嬉しそうに微笑む。


「ニコが買ってくれたんだけど、このパーカーだけは外したくなかった。そうしたらパーカーに合う服を選んでくれたんだよね」


本当にありがとうニコ様。今日からお前のことは様付けで呼ばせてもらうよ…


「じゃ、行こうか」


「どこ行くか聞いてもいいか?」


「ゲームセンター」


「ゲーム、センター…?」


「前、歩いてたときに前通ったんだけど…楽しそうだったから。けど、1人で行く勇気なくて…」


ヤマトはリンネの頭を撫でる。


「よし!大量に景品ゲットしようか!」


「ヤマトって頭撫でるの好きだよね」


「そういうリンネも裾掴むの好きだよな」


「……嫌なの?」


「逆。嬉しいの」


手を握ろうとして止める。

静かにヤマトは反対側に行く。


「行こうか」


ふと気がつく。

怪我をした右手。

ヤマトは左側に行きギュッと手を繋いだ。


「優しいね」


「普通だよ」


ゲームセンターに着く。ガヤガヤとした場所はリンネの足を止めた。


「こ、こんなにうるさいの…?」


「大丈夫か?」


「うん」


1歩踏み出す。


「いっぱい物が置いてある…どうやってやるんだろ」


「これは100円入れてやるんだけど、なんか欲しいもんとかある?」


リンネは周りを見渡す。ふと、赤い犬のぬいぐるみを見つける。


「あれがいい」


「おっけい」


100円を入れてヤマトはプレイする。


「んー…やっぱ確率か…」


「持ち上がらないね」


「やってみる?」


「…」


集中して操作。

隣でヤマトは黙って見ていた。


「あれ?確率来た?」


景品が運ばれ取り出し口に落ちる。


「めちゃくちゃ運いいじゃん!」


リンネは取り出しギュッと抱きしめる。


「…大きい…可愛い…」


目を細め微笑む。


赤い犬のぬいぐるみ。

ヤマトは少しばかり期待する。


「取れてよかった。他もなんか見てく?」


「うん」


お菓子の景品


音楽ゲーム


格闘ゲーム


全てが新鮮で楽しかった。

2人はカフェに行き休憩する。


「いやー、この歳であんだけ楽しめるとは侮ってたわ」


「お菓子いっぱいで嬉しい」


「楽しそうにしてて何より。にしても荷物多いな…まだ時間はあるし…」


ふとリンネを見る。ずっと大事そうに抱えるぬいぐるみ。


「リンネってさ、お嬢様かなんか?」


「なんで?」


「いや、ゲーセン知らなかったり遊園地知らなかったりとか結構箱入りっぽいなーって」


「…行く機会がなかった」


「じゃあ、これから色んなとこ行こうな」


「ヤマトとがいい」


「もちろん」


店の壁に貼ってあるチラシ。ヤマトは無意識に目を向ける。


「明後日、祭りか…祭り…祭り?」


「ヤマト?」


「なぁ、明後日さ一緒に祭り行かない?」


「行きたい。屋台…チョコバナナ…焼きそば…からあげ…」


「食いもんばっかじゃねーか。よし決まりだな!」


一昨日まで屍のように動かなかったヤマトは何処にもいない。

太陽のように眩しく笑う。


「荷物多いね」


「だな。どっか置いときたいけどロッカーあるかな」


「じゃあ…」


リンネは立ち上がり手を引く。


「荷物置きに行こ」


言われるまま着いていく。着いたのは普通のアパート。


「ここは…?」


「ボクが住んでるとこ」


足が止まる。


まじっすか…?

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