双子とお出かけ
朝早い時間、リンネは店の椅子に座りボーッとする。
今日はニコと出かける日。
「リンネ」
声がし顔を上げるとサクヤがいた。
「おはよう。サクヤ」
「おはよう。待っている間にパンでも食べるか?」
「いいの?」
「もちろんだ」
キッチンに戻りオーブンの音。
リンネは階段を見つめる。
「ヤマトが気になるのか?」
「…うん。お見舞いとか大丈夫かな」
「今は余裕がないように見えた。落ち着いてからどんだけでも会えばいいさ」
リンネは頷く。パンの乗った皿を置かれる。
「どうぞ」
「ありがとう。早いんだね、起きるの」
「あぁ…それは…」
「お待たせー!」
ニコが降りてくる。白いオフショルにロングスカート。
「それ食べたら行きましょうか。ちょっとサクヤ?何逃げてるの?」
「なんで俺まで行く必要があるんだ。2人で行ってこればいいだろう」
「荷物持ちに決まってるじゃない」
「荷物はボクも持つよ」
リンネは食べ終わり手を合わせる。
「じゃ!行きましょうか!狐ー?」
白夜が現れる。
「ヤマトのこと、頼んだわよ」
「任せとき」
3人は外に出る。
「どこに行くの?」
「服を買おうかなって」
「おい、つい最近買ったばっかだろ…」
サクヤはため息をつく。ニコは振り返り、腰に手を当てる。
「私のじゃないわ!」
クルッとリンネを見る。
首を傾げるリンネ。
「リンネちゃんの服を買うの!」
リンネの手を取り歩き出す。
後ろからサクヤも着いていく。
「んー、リンネちゃんはスタイルがいいから足を出した方が良さそうな…」
次々、服を当てられる。
「なにかこだわりはある?」
顎に手を当て考える。
「特には…あ…」
パーカーを大事そうに見つめ少し微笑む。
「これは脱ぎたくない…」
「それ、ヤマトのよね?よーし!じゃあそれに合う服を探しましょ!」
どのくらい時間が経ったのか、サクヤの手には大量の袋。
疲れきった顔でリンネとニコに着いていく。その様子をリンネはチラッと見る。
「ねぇ、少し歩き疲れたから休憩したい」
「そうね、小腹も空いたしあそこのカフェでも寄りましょ」
3人はカフェに入る。
「何にする?私はカフェラテにしようかしら」
「俺はコーヒー」
「ボクは…ミックスジュース」
それぞれ決まり、注文する。
「私ちょっと化粧直し行ってくるわね」
ニコが離れる。
目の前には疲れた顔をするサクヤ。
「ごめんね、付き合ってくれて」
「いや、いいさ。あんな楽しそうに買い物をするニコは久々に見た」
「サクヤってほんとお姉ちゃん思いだよね」
その言葉にサクヤは目を開く。
「俺らが兄弟って言ったか…?」
「…なんとなくそう見えただけ。姉に付き合わされる弟みたいだなって」
「そうか…本当に手のかかる姉だ」
「でも、楽しそう」
サクヤは目を伏せ笑う。
「あぁ、楽しいさ」
しばらくし、ニコが帰ってくる。既に置かれた飲み物。
「お待たせ〜何話してたの?」
「酒の話しだ。リンネは色々な酒を知っているから教えてもらってた」
「お酒好きだから勉強したんだよ」
「そうだったのね〜」
ニコも座りカフェラテに口をつける。
「ほんと、リンネちゃんがお酒好きだなんて意外だわ。高校生に見えちゃう」
「うーん…もっと大人なお姉さんになりたかった。ニコみたいな」
「なれるわよ。女は恋して美しくなるのよ?」
「恋…ヤマトは大丈夫かな…」
その言葉にニコは眉を下げる。
「ねぇ、リンネちゃん」
「最近のヤマトで変わったことない?例えば…」
「誰かを思い出そうとしてたりとか」
「…」
リンネは黙る。
その様子に慌てるニコ。
「あ!違うのよ?!過去の彼女とかの話じゃなくて…」
「うん。……特に無いかな。元気な様子だった」
「そう、なのね…」
「ねぇ、リンネちゃん…ヤマトのこと支えてくれる?」
「あいつは…人一倍元気でバカだけど人一倍寂しがり屋で1人で抱え込むの…」
「…知ってる。だからボクがヤマトを守るんだ」
ニコは悲しそうに笑う。
「ありがとう。私たちじゃ踏み込めないこともある。リンネちゃんが傍に居てくれたらきっとそれだけでヤマトは幸せなの」
「幸せ…」
その幸せはいつまで続く?ヤマトだけじゃない。ニコやサクヤ、白夜の幸せも奪うことになる。それでも進むしかない。
「ボクはヤマトが好き。けど、それと同じようにニコやサクヤや白夜が好き。あの店が好き。だから行く」
静かな空間。
小さく聞こえる音楽。
「そういえばニコ。リンネが俺たちが兄弟だってこと見抜いたぞ」
「え?!なんでわかったの?!」
「…顔似てるし、雰囲気とかも一緒」
「えぇー!このぶっきらぼうと?!」
「お前な…」
静かな空間に笑い声。気づけば空はオレンジ色に染まる。
「今日は楽しかったわ!リンネちゃんの服たくさん買えたし!」
「買ってくれてありがとう。今度、なにかの形でお礼させて」
「リンネちゃんがお店に来てくれることがお礼よ?いつも来てくれる感謝のつもりなの」
「今日はまだヤマトは起きれないと思うわ。どうする?」
「今日はこのまま帰るよ。ヤマトによろしく言っておいて」
「わかったわ。またお店で待ってるわね」
手を振りその場から去る。
当たり前にいた双子が今は遠くなる。
それでも行かなくちゃならない。
「早く、ヤマトに会いたいなぁ…」
呟く言葉が風に乗って消える。




