欠けた記憶
次々襲いかかる敵。
「めんどくせぇ…」
「一旦体制を整えましょ…って」
半妖の王が4人の前に出る。腕を上にあげると黒い霧が周りに現れる。
ヒュッと音を鳴らし腕を前に出すと無数の槍。
一斉に敵を仕留める。
「あれが…半妖の王なゆたの力…」
「本当に半妖なの…あれ…有り得ないほどの妖力じゃない…」
数えれないほどの敵は一匹残らず消える。
それを確認したかのように半妖の王はその場を去ろうとした。
だが、
ヤマトによって塞がれる。
「待て。お前は一体何だ?どうして助けた」
半妖の王は動かずジッとお面をヤマトに向ける。
「俺とお前はどんな関係なんだ」
半妖の王は黒い霧から短剣を取り出す。素早くヤマトの喉を狙うもヤマトは手で止める。
「答えろ。俺はお前の名前を時折、呼んでしまう。お前は一体誰なんだ」
短剣をパッと離し消す。ヤマトの手を払い除け、
ヤマトの口に人差し指を当てる。
「…は?」
そっと離れ最初からそこにいなかったかのように消える。
「なんで…答えてくれねぇんだ…」
「ヤマト」
後ろを振り返ると白夜が立つ。
「なんのせ俺らは助けられた。今はそれで良しとしようや」
「あぁ…」
ゆっくり立ち上がり振り返る。
半妖の王、なゆた。
リンネを見るとその名前が出てくる。
人間なのに帳の中に入れる。
妖怪の可能性。
それでも、俺はリンネを愛してる。
愛しているからこそ、半妖の王なゆたを殺さなきゃいけない。
「リンネに会いてぇなぁ…」
小さなため息。
帳が無くなった店は静かだった。
「なぜ今回、異型ではなく特殊部隊が来た?」
「そもそもどうやってここを嗅ぎつけた」
「…誰か客にスパイがいる…?」
「そう考えるのが妥当だな」
パンッと大きな音。
「ほらほら、考えてもしゃーない!そん時はそん時でなにか対策をしたらええ。帳が落ちて来る度に現れる半妖の王なゆた…なんの目的があるのか調べなあかんな」
「ヤマト」
白夜はヤマトに目を移す。険しい顔で思い詰める顔。
「なぁ、白夜」
「半妖の王なゆたってどんな姿なんだ」
「わからへん。素性は出てへんけど、鬼で黒いお面を被っとるってことだけ。まさにさっき現れた鬼に一致する」
「そうか…」
「最近、妙に異型が多くなっとる。いつ襲われるかわからん。ヤマト」
白夜はヤマトに札を渡す。
「前にひとつ使ったやろ?持っとき」
「あぁ…すまねぇ」
姿を消す札。リンネを助けた時に使ったものと一緒。
「ねぇ。もう、妖怪の国に行って半妖の王を倒すのは?」
「焦ったらあかん。巫女の特殊部隊でさえ俺らは足止めされた。それを上回る強さの王…勝てっこない」
「それも、そうね…」
「とりあえず、片付けをして一旦休もう。追々、考えればいい」
サクヤはキッチンに入り食器を洗い出す。
「私、机拭くわね。あ、ヤマト」
「ん?」
「物置部屋から机拭きの詰め替え取ってきて」
「わかった」
階段を上がり、部屋に行く。
「えーっと、詰め替えは確か…」
肘が箱に当たり落ちる。
「はぁ…」
しゃがみ、箱から出た物をしまう。
「…これ…」
出てきたのはひとつのノート。ヤマトは無意識にページをめくる。
「如月…白雪…有馬…?それって俺らが倒した特務退魔課の連中…」
次々、ページをめくる。初めて見る字。
「これ、誰のだ…?」
「巫女…陰陽師…祢々切丸…」
祢々切丸?妖怪の国に封印されたと言われている妖刀。
「祢々切丸に能力を宿し…ヤマトの能力を戻、す…」
あれ…?俺…そういえばなんで能力のこと忘れてた…?
誰が戻そうとしてくれていた?
「神咲、桜木…?」
ページを捲ると今までの小さな文字とは違いペンを潰したような大きく殴り書きされた文字。
"まだみんなと一緒にいたい"
「誰、だ…」
"兄ちゃん"
"またヤマトが意地悪言う…"
"だれも教えてくれないならボクが全部壊して知るだけだ"
"過去は消えない。消えない過去を背負いどう前に進むか。生き物は後ろを向いて歩けない"
"ただ前だけ見ろヤマト。お前はこの国の総大将だ。王であるボクの護衛だ。そして、ボクの"
"兄ちゃんでしょ"
「あ"…っ?」
フラッシュバックする記憶。
小さくて
儚くて
今にも消えてしまいそうな
影。
思い出そうとしてもノイズがかかる。
黒く塗られた記憶と人物。
「俺は…誰の兄だった…?護衛…?俺は黄泉の、護衛で…じゃあ、鍛錬をしていたのは誰だ…?」
"誰"という言葉で脳が支配される。
「俺はなにを忘れてる…?」
"記憶のない中で生きる辛さが分かるの?!"
「俺…俺は…っ」
「ちょっとヤマト遅い…ヤマト?!」
蹲り浅い呼吸を繰り返すヤマトのそばに行く。
「ちょっと、どうしたのよ!」
「わか、らない…誰だ…?俺は誰を忘れてる…?なん、で…俺は…」
重い頭痛。
頭に響く声。
頭を抱え蹲る。
"ボクの兄ちゃんはこれまでもこれからもヤマトだけだから"
「俺は…っ!!はっ、はぁ…っ、」
「分からない…っ忘れて…っ」
「ヤマト…!ヤマト!!ちょっと!」
ニコの声すら届かない。
プツンと糸が切れる感覚。
「う"あ"ぁぁぁあ"ぁっ!!!!」
部屋に響く声。
溢れる涙。
なぜ泣いてるのかは分からない。
なにを忘れてるのかも
分からない




