それはまだ付けれない
「リンネ」
名前を呼ばれ振り返る。
左薬指にはシルバーのリング。
けど、
リンネは付けられずにいる。
「付けないのか?」
「……なんか、今じゃない気がするんだ…」
「今じゃない?」
「ボクはヤマトが好き。本当に大好き。だからこそ、心の整理をつけなくちゃいけない」
リンネはシルバーのチェーンを取り出す。
「いつの間に…」
「この宝物はボクの気持ちが整理されるまでネックレスとして付けてもいい?」
「ごめん、ボクがこの指がいいって言ったのに…」
本当は付けて欲しかった。けど、真剣な眼差しは何も言えない。
「…わかった」
「そして、その時が来たら君が付けて欲しい。ボクのこの指に」
左薬指をぎゅっと包む。
「あぁ、もちろん。それに…」
チェーンに指輪を通して付けようとするリンネの手を止め、ヤマトがリンネの首にチェーンをつける。
そして、リンネの胸に指を当て微笑む。
「ここは心臓に1番近いからそっちでも嬉しいよ」
「…うん。付けてくれてありがとう」
「それと、もう1つ!」
ヤマトは手を叩く。
「それ、さすがに暑いだろ。せめて薄いパーカー買うから行こう」
「えぇ…これがいいのに…」
「汗だくで何言ってんだよ。熱中症なるぞ」
「じゃあ…」
リンネは裾を掴む。
「ヤマトの服、頂戴」
「俺の?」
「そう。離れている時でもヤマトを感じたいから」
恥ずかしそうに俯くリンネにヤマトは固まる。
「わ、わかった…これはよく着るやつだし…家にあるやつでもいいか?なるべく薄いやつ…」
「パーカーがいい。パーカー好き」
「わかった…探しておく」
「今日、お店に行くって約束してたしその時がいい」
ヤマトは無意識にリンネの頭を撫でる。
「わかった。来た時に渡すよ」
リンネは微笑む。その顔にヤマトは拳を握る。
「なぁ、リンネ」
ヤマトは立ち止まる。
「ん?なに?」
「…もし…もし俺が…」
普通の人間じゃなかったら?
「いや、なんもねぇ。行こうぜ」
笑いリンネの手を取る。
まだ伝えなくていい。伝えて離れてしまったら俺はリンネを閉じ込めてしまいそうになる。
あの子にしたかったように
「あ、れ…」
「ヤマト?」
「あの子って誰だ…」
「なんで俺は…誰かを忘れて…」
呼吸が荒くなる。
「ヤマト…!」
咄嗟に抱きつく。離れないようにギュッと
「ボクがいる。リンネがいるから…だから、誰も忘れてなんかないよ」
銀髪
金色の瞳
「そう、だよな…」
"兄ちゃん"
うるさい。お前じゃない。俺は…
俺はリンネしか要らない。
「おかえりなさい。いつでも開店はできるから着替えてきなさい」
「あぁ」
横を過ぎ去るヤマトに首を傾げる。
「リンネちゃん、なにかあったの?」
「…嫌なこと思い出しそうになっただけだと思うよ…」
ふと首にぶら下がるネックレスを見つける。
「それ、もしかしてお揃い?」
「うん。付ける日が来たら付ける」
「そう。楽しみだわ。机は拭いてあるから座ってていいわよ」
「ありがとう」
無意識に物置部屋に行く。
埃まみれの部屋。窓が空き、カーテンが揺れる。
「俺は…なにか大事なことを…いや…」
「もういいか。いつまででも過去を引きずってちゃリンネに悪い」
店の服に着替え1つのパーカーを持つ。
階段を降りると白夜と話すリンネの姿。
「リンネ」
名前を呼ぶと少し揺れる瞳。
「これ、小さくなって着れないやつ。って言ってもリンネにしたらだいぶデカイか」
「ありがとう。それでもいい」
リンネは大事そうに抱える。
まるで離したくないかのように。




