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上書き

「あっっっつすぎない?!?ほんでなんでまたお前と買い物やねん!!」


「あーあ…このクソうるせぇ狐がリンネだったらいいのに…」


「惚気けやがってこのクソ犬!!」


街に向かう途中、ヤマトと白夜は暑さにやられる。


「買い出し最近多くなってきたな」


「客が増えた。もっと静かだったんだけどな。まぁ、売上も上がっていい事だし」


「それもそうか」


さすがに疲れたのか2人は日陰のベンチに座る。


「なぁ」


「ん?」


「リンネちゃんって普段何してはんの?」


「またお前は…」


「ちゃう」


白夜は真剣な顔でヤマトを見る。


「リンネちゃんが来た日、帳が降りたやろ?なんで人間が帳の中におるんや?そして、札は機能しとった。いや…」

「機能したように見えた」


「……白夜」


低い声。ヤマトは俯く。


「俺は妖怪だろうが人間だろうがどっちでもいいんだ。俺がどっちにも成れてどっちにも成れないから」

「俺はリンネという人物に惚れた。どっちでも俺はいいと思ってる」

「それに────」


「ボクがなに?」


2人は勢いよく後ろを見る。

そこには銀髪の少女、リンネが立っていた。


「リンネ?!」


「お出かけ?」


「やぁ!リンネちゃん!1人?」


「ボクは、仕事の帰り。今から帰るところ」


白夜は手招きし席を開ける。

リンネも察したようにヤマトの隣に座る。


「仕事ってなんの仕事しとんの?」


「あー…人助けみたいなこと」


「人助けね…」


長袖のパーカー。首筋から垂れる汗。ヤマトは咄嗟に目を逸らす。


「そのパーカー脱がへんの?」


「大事なやつだから」


「白夜」


ヤマトは立ち上がる。眉を顰めヤマトを見る。


「一旦帰ろう。リンネも」


ヤマトはリンネの手を引き、家に戻る。


「は?ちょ、ヤマト待ってや」


2人の後を追いかけ家に着く。


「おかえりなさい。あら!リンネちゃん!」


ニコはすぐリンネの元に行く。


「随分と暑そうね。今、お茶を出すわ。座って待ってて」


「…ありがとう」


リンネは椅子に座りボーッとする。


コトッとグラスを置く音。


「お茶よ。水分はしっかり取らないと。ところで、なんでこいつらと?」


「ありがとう。いただきます」


1口含む。

冷たい感覚が広がり暑さが飛ぶ。


「街でたまたま会った。ボクの名前呼ばれたから声をかけた」


「ほんと、最近のヤマトは口を開けばリンネちゃんのことばっかよ。嫌なことされてない?」


「うん。今のところは大丈夫」


「今のところじゃなくてこれからも大丈夫だよ。リンネ、それ飲んだらちょっと付き合ってくれ」


ヤマトがキッチンから出てくる。


「またどこか行くの?」


「あぁ。ちょっと個人的な買い物をしたくてな。せっかくリンネに会ったんだ。デートぐらいいいだろ。夜までには帰ってくる」


「わかったわ」


リンネはお茶を飲み干しキッチンに持ってこうとする。


「いいのよ、リンネちゃん。行っといで」


「うん、ありがとうニコ。じゃあ、行ってきます」


「行ってらっしゃーい」


"行ってきます"


そう長くは無いのに長いこと言ってなかった気がする。

ヤマトの横を歩く。


「どこ行きたいの?」


「そうだな…こことか」


着いたのはジュエリーショップ。


「…え?」


手を引かれ中に入る。

綺麗なシルバーやゴールドのアクセサリーが並ぶ。


「ヤマト…?」


「あー…なんていうか…それ…」


ヤマトはリンネの指をさす。


「その指輪、大事な人から貰ったって言ってたよな?なんか、それが嫌でさ」


あぁ、そっか…確かにそうだよな。けど、

外したくない。

これはまだボクがヤマトを兄ちゃんと認識したいから付けている。

けど、目の前にいるヤマトはもう違う。進もうとしている。


「たぶん、外したくないんだろ?強要はしない。俺もなぜかこのネックレスは外せないんだ。誰から貰ったか思い出せねぇのに…」


懐かしそうにネックレスを見つめる。


嫌だ。


そんな顔で見ないでよ。


「今の…ボクを見て…」


「リンネ?」


俯き、ギュッと裾を掴む。それでもヤマトは優しくリンネの手を包む。


「だからさ、リンネ」


見上げる。太陽のように眩しいのにどこか優しい顔。


「別のところにリングを付けよう」


「別、のところ…?」


「そう。お互い今のアクセサリーは外したくない。だったら無理に外さなくていい。けど、そのままお互い知らない人の物を付けているのは苦しくなる。だから、上書きしてもいいか?」


本当にこの人はなんでこんなにも優しいんだろう。

今のままでもいいって思ってたのにどうしても過去が捨てられない。

忘れろって人に言ってるのに自分が忘れられない。


「……うん、それがいい」

「そうして欲しい」


「よし!じゃあ決まりだな!」


「ボク、センスないからヤマトに決めて欲しい」


「えー、一緒に選ぼうぜ」


リングを見る。輝くシルバーにほんのり金色で黒い瞳が映る。


"いつまで夢を見るんだ"


いつまででも


"仲間が死んでもいいのか?"


死なせない


ボクはリンネとしてヤマトを守り、


なゆたとして殺される。


誰にも邪魔なんてさせない。


だから、まだこの幸せな空間を……

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