半妖の王
「ただいまー」
店に入るとニコが目を見開く。
「…え?ヤマ、ト……?」
「…んあ?どうした?」
ニコは信じられないようなものを見たかのようにヤマトを見る。
「な、なんで帰ってきてるのよ」
「はぁ?俺に帰るなって言いたいのか?」
不機嫌そうにニコを見る。
「そうじゃなくて!今までだったら付き合ってきた女がいたら朝帰りキスマが当たり前だったじゃない!」
「あー…そんなこともあったな…てか!それ絶対リンネの前で言うなよ?!」
「それが日付回る前に帰ってくるなんて…」
「あっちはあっちで用事があったんだよ。悪いか」
ニコは目を見開きジッとヤマトを見る。
「んだよ…」
「あんた、本当に惚れているのね…すぐ手を出す奴がこんな誠実になって…」
「まったくほんまやで??お前ヤマトか?」
「お前ら俺をなんだと思ってんだよ…」
ニコと白夜は目を合わせる。そして、同時にヤマトを見る。
「どうしようもないクズ」
「顔がいいだけのヤリチンクズ」
「よーーし!お前ら武器持て〜?死にたいやつから前に出な???」
「いやいや、あんたそんくらい女遊び酷かったからね?」
「1週間ごとに彼女が代わり、別れた理由が"なんか違った"とか"楽しくなかった"とか遊び程度だったのがこんなにも誠実になると思わないじゃない」
ヤマトはため息を付き、外を見る。
「俺はそんくらい真剣なんだよ。今回はすぐ手は出さない。俺が初めてっぽいし」
ニコと白夜はヤマトに背中を向けしゃがみこみ、ヒソヒソと話す。
「あれほんまにヤマトか…?」
「いや、ヤマトじゃないわあれ…逆にあんな誠実なヤマト気持ち悪いのだけど…」
「なんか最近、ニコちゃんと意見が合うわ…」
「お前ら俺の事嫌いなの??」
キッチンからサクヤが顔を出す。
ヤマトの顔を見て目を見開く。
「か、帰ってたのか…」
「お前までかよぉ…」
「そう思われてる過去の自分を恨むんだな」
「なんでだよぉ…」
「まぁいい。店が開く前に帰ってきたのはいい事だ。開店準備するぞ」
「へーい」
ヤマトは自室に向かい、店の服に着替える。
鏡に映るネックレス。
「これ…」
外したいのに外せない。
「はぁ…あ、そうか…」
上書きすればいいのか。
ボタンを閉め、腕を捲り下に向かう。
「どこまで進んだ?」
「材料切ってくれ」
「今日は楽しかったか?」
「最高に。ホテルじゃないデートもいいな」
「お前な…リンネが聞いたら悲しむぞ」
ヤマトは目を細め包丁を見つめる。
「本人の前では絶対に言わないさ」
サクヤは何も言わず、ヤマトの足を蹴る。
「いってぇ!暴力反対!なにすんだよ!」
「別に。変わったな」
「自分でもびっくりしている」
静かな空間、密かに感じる気配。
「…ヤマト」
「あぁ…」
ヤマトにとって2度目の帳が降りた。
「またかよ」
「またってことはさっきもあったのか?」
「あぁ…さっきは鬼の子供だった」
「鬼の、子供…?それって────」
その瞬間、
目の前には大きな異型。
「ちっ、開店前っていうのによ」
「ちょっと、なんで帳が降りてるのよ!」
「めんどくさい事になったで…でもまぁ、」
「ちゃっちゃと終わらせますか」
4人は武器を出す。一斉に飛びかかり剣を交える。
「かった…なにこいつ!」
「今までの異型とは違う…気をつけろニコ」
「分かっているわ、サクヤ」
ヤマトは走り大剣を振りかざす。
だが、腕で止められる。
「んだよこいつ!鎧以上に硬ぇ…!」
腕を振られ身体が宙に浮く。
「やっべ…」
すぐ着地し前を見る。
すでに異型は腕を上げ、下ろそうとしていた。
すぐさま、大剣でガードする。力が重く吹き飛ばされる。
「あ"…っ!」
受け身を取り膝を着く。
なんだこいつ…今までの異型より…いや、妖怪より強い…
真っ先に異型は4人に向かって走り出す。
「来るぞ!」
再度、武器を構える。異型が腕を上げた瞬間、後ろから影。
黒く
大きな
大鎌が異型を真っ二つに割く。
「……は?」
理解が追いつかない4人はただ見ることしかできない。
目の前に居たのは、
白いフードを被り、お面を付けた鬼の子供。
「お前…さっきの…っ!」
異型が消えるのを確認したあと、鬼の子供はゆっくり4人を見る。
そして、
大鎌を消し振り返る。
「おい!まて!誰なんだお前は!」
それでも足は止まらず離れていく。
「…まさか…」
白夜が目を見開く。
「お前、半妖の王か…?」
その言葉に足を止め4人を見る。
「半妖の王って……まさか、王なゆたか?!」
ただお面越しに見つめられる。
4人は武器を構える。
だが、鬼の子供は手を前に出す。
止めるかのように。
「なんで俺らを助けたんや。お前は俺らの敵やないんか?」
半妖の王はなにも答えない。そして上を見上げる。
「帳が消えていく…」
白夜はすぐまた前を向く。
「答えろ半妖の────」
だが、そこには誰もいなかった。
「また消えてる…」
「……ヤマト。お前が見たのはあいつか?」
「…あぁ…間違いねぇ」
重くなる空気。
敵の王が自分たちを助けた。
それは、
同じ半妖だから?
わからない。
「とりあえず、もう店が開く。一旦忘れよう。だが、いつ襲われてもいいように気は抜くなよ」
「あぁ」
4人はすぐ準備に取り掛かる。
「あんな雑魚、君たちに必要ない。雑魚の処分はボクがする。だから、君たちはボクを殺しに来て」
金色の瞳は4人を見つめ、影に消える。




