初めての感情
付き合ってから初めてのデート。
小学生みたいにソワソワして時間はまだ30分前。
「はぁ〜…」
ずっと張り付くあの顔。
好きという感情。
出会って間もない相手のことが分からない。
「…ヤマト?」
声がし顔をあげる。そこにはワンピース姿のリンネ。
「……へ?」
「あぁ、これ…?昨日、ニコから貰った。デートなんだからって」
ニコ!!!お前ぇぇ!!ナイスすぎる!!!
「……変?」
「すっげぇ可愛い」
立ち上がりリンネの傍に行く。
「随分と早いな」
「……楽しみだったから。そういう君こそ早いね」
「俺も楽しみだった。行こうか」
手を繋ぐ。恋人繋ぎ。
慣れてたはずなのにどこか恥ずかしい。
「今日はどこ行くの?」
「今日は少し遠くに行く。フラワーロードっていう花がたくさんの散歩ロードがあるんだ。電車に乗るけど大丈夫か?」
「うん、大丈夫。ヤマトは物知りだね」
繋がれた手。気温は暑いのに離れたくない。
駅に向かう途中にふと、店の窓に写る2人の姿。
「ボクら凄い身長差だね」
「そうだな。これだと恋人じゃなくて妹とかに見られてそう」
「いも、うと…?」
「ま、俺に妹なんていないけどな」
息が止まる。
自分がそうさせたのに。
「そうだね……」
初めての電車。一瞬で変わる景色にリンネは興味津々に見ている。
「リンネには兄がいるんだろ?」
「うん」
「どんな人?」
リンネは少し考える。
「兄は2人いる。1人目の兄は優しい笑顔をよく向けてくれていた。ボクが幼い頃に亡くなったからあまり記憶にないけど…」
「そう、だったのか…変なこと聞いたな」
「ううん。2人目はずっと傍に居てくれた。ボクが進みたい道を一緒に歩いてくれた。けど、ボクが突き放したんだ。幸せになって欲しくて」
ヤマトは黙ってリンネの話を聞く。
「2人目の兄は幸せにしている。ボクが居たら邪魔しちゃうから。2人目の兄は血が繋がってない。離れるべきだと思った。なのに」
結局、離れられなかった。
「辛い思いたくさんしてきたんだな。代わりになんて言わない。けど、」
「俺はリンネの力になりたい」
赤い瞳がリンネを貫く。強くなる手。
「…うん、そうしてくれると嬉しい」
しばらく歩くと花の香り。目の前には色とりどりの花。
「…すごい」
「ははっ、その顔が見たかった」
歩けば歩くほど花の匂いが鼻を刺す。
「これなんて花だろう…いろんな色がある」
「すごいよな」
「綺麗…」
リンネは花をジッと見つめる。
「あぁ、綺麗」
リンネの顔を引き寄せる。
「本当に綺麗だ」
顔の距離はゼロ。
キスを落とす。
顔を少し離すと顔を赤くさせるリンネの姿。
「ひ、人いるかもしれないのに…」
「ちゃんと確認したさ。初めてのキスはリンネからだろ?そん時は平気そうな顔をしてたのに」
「そ、れは……」
心臓がうるさい。
こんなの知らない。
キスは、一緒にいるって意味…大切な人とする事…
「あ…そう、いうこと……?」
「リンネ?」
腕で顔を隠し、しゃがむ。
「わ、からない…知らない……だっ、て…ヤマトは…あ、れ……?」
過去を振り返る。
独占欲
嫉妬
これは兄に向けて?
違う
ヤマトに向けて。
「なんで自分からはキスできるのにされるのは顔赤くしてんだよ」
「ボク、ずっと…ずっと好きだったんだ……」
「リンネ?」
一粒の涙。
流したいわけではないのに勝手に流れる。
ボクは妹だと思ってくれてた人を嘘で固めてしまった。
妹って言ってくれていたのに、
兄として見れてなかった。
「なん、だよ…それ……ボクは…」
優しい感触。
ヤマトは優しく抱きつく。
「大丈夫。キスしてごめんな」
「ちがう…!ボクは…ボクは嬉しかった…ただ初めてだったから…人を…誰かを好きになるのは…ニコやサクヤ、白夜とは違う"好き"を知るのは初めてだから…!わけわかんなくて……」
「そ、っか……俺が初めて……は、ははっ!俺もこんなに誰かを好きになるのは初めてだ。なぁ、リンネ」
赤い瞳は逃がさないと言うように見つめられる。
「俺の傍に居てくれるか?」
また大きな涙。
離れなきゃ。これ以上、深く進んじゃダメだ。
わかってる。
わかってるのに、
「傍に、いたい……」
この頭はどうしても言うことを聞かない。




