俺の恋人
「お前…昨日からニヤニヤして気持ち悪いんやけど…」
店の営業中。ヤマトはずっと機嫌がいい。
「はぁー…俺このまま死んでもいいわ」
「おー、死ね死ね。そして二度と起き上がってくんなバカ犬」
「ここぞとばかりに酷すぎねぇ?!ったく…」
客は少ない。ヤマトは空を見る。
カラン
ドアが開く。目を向けると、
「やぁ」
「リンネ!」
ヤマトはすぐリンネに駆け寄る。
「昨日はありがとうな」
「こ、こちらこそ…」
リンネはどこかよそよそしい。目が合わない。
ヤマトは首を傾げる。
「いつもの席空いてるからそこ座る?」
「…うん」
「なんか作ってくるから待ってて」
椅子に座りただソワソワとする。
「どした〜んリンネちゃん」
ふと隣に白夜が座る。肩が跳ねる。
「…っくりした…」
「そんなビックリする?ところで、リンネちゃんっていくつなん?」
「えぇっと…」
指を折り数える。
たしか…
「20歳とかのはず。あんま覚えてない」
「俺の4つ下?へぇー、よく高校生とかに間違われへん?」
「うん、間違われる」
白夜はカウンターに肘をつきジッとリンネを見る。
「な、なに…?」
「20歳かぁ…へぇ…」
「おい、なにしてんだてめぇ」
顔をあげるとヤマトが白夜を睨む。
「なんやヤマト。今日はなに作ったん」
「今日はオムライス。はいどーぞ」
「あ、ありがとう…」
小さく呟く。白夜は目を見開く。
「なんか、今日のリンネちゃんよそよそしいっていうか、いつも大人しいけど今日は格別大人しない?」
「そんなことない…お腹すいてただけ…」
手を合わせる。
1口食べ微笑む。
「リンネちゃんって食べとる時、小動物みたいで可愛ええよな。こんな子と付き合ったら楽しいんやろうね」
その瞬間、ヤマトはメニュー表で白夜の頭を叩く。
「いって!それで叩くの何なん?!てか、何やねんマジで!」
「俺のリンネに何口説いてんだよ。やめろ。まじで」
「せやから、お前のじゃ…」
リンネは少し顔が赤い。ヤマトのリンネを見る目線が変わった。
「……え、まじ…?」
「そういうこと。ってことで残念だったな」
ヤマトの勝ち誇った顔に白夜は口を開く。
「ニ…ニニ、ニコちゃーん!!!!」
「なによ!うるっさいわね!」
「ヤマトが…ヤマトがぁ!!」
「はぁ?あ!リンネちゃん!」
泣きつく白夜を払い、リンネの元に行く。
「今日はオムライス?頬張ってる姿はリスみたいで可愛いわぁ」
抱きつこうとするニコの肩を掴み止める。
「なによ」
「やめてね?俺のだから」
「……は?」
いつも以上に真剣な顔に、ニコはその場で呆然と立つ。ハッとしすぐ白夜の元に行く。
「ね、ねぇ、まさかとは思うけど…」
「そのまさかですよニコちゃん…」
バッとヤマトを見る。
幸せオーラダダ漏れのヤマトと恥ずかしそうにするリンネ。
「どっち…?どっちから?!」
「あれは…ヤマトの方ちゃう?めちゃくちゃ惚れとったみたいし」
「え?!あのヤマトよ?!"俺、告ったことないんでドヤァ"とか言ってたあのヤマトよ?!付き合ってって言われて断るのがめんどくさいから付き合ったとか言ってるクズよ?!」
「おーーーい?そこの2人?俺が耳いいの忘れてないかー?バッチリ聞こえてんぞー?え?なに?喧嘩でも始まる?」
「聞こえるように言ってんのよ!!で、どっちからなの?!」
ニコは勢いよくヤマトの胸ぐらを掴む。
「なんでそこ気になるんだよ…俺からだよ」
ありえないという顔をするニコ。
「ま、まさかあんたから告白だなんて…これは夢…?」
「お前なぁ…」
そこにサクヤが現れる。
「お!おはよう。サクヤ。ニコの買い物大変だったって聞いたぞ」
「すまない…寝過ごした…で、なんだこの騒ぎは。客がいないからって…」
「いや、リンネがいたな」
「おはよう?」
サクヤはため息を吐く。
「何飲むか決まったか?」
「リンネは俺が接客する」
「お前はまたなんで…」
ふとニコと白夜を見る。来いと言わんばかりの顔。仕方なく2人の傍に行く。
その瞬間、
「は?!」
サクヤから聞いた事のない大きな声。そして、夢を見ているかのような顔でヤマトを見る。
「お前…マジなのか…?」
「お前からクソでけぇ声と"マジ"って言葉、初めて聞いたわ」
「だからお酒…」
「そうだった。なにがいい?」
「オススメ」
ヤマトは背を向け瓶を選ぶ。そして、手際よくアルコールとレモンジュースを混ぜる。透明なカクテル。
「XYZになります」
「まさか、ボクがもらう側とはね」
リンネは嬉しそうにグラスを回す。
「リンネちゃん、本当にこの男でいいの…?」
「…うん。ボクはヤマトがいい」
「あー!可愛い!俺の彼女ちょー可愛い!」
「うるっさ!ちょっとヤマト!こっち来なさい!」
ニコに呼ばれリンネから離れる。
「本当に大切にしなさいよ」
「当たり前だろ。初めて心から惚れた相手だ。手放す訳にはいかねぇ」
「はぁ…応援はするけどもう女の子を泣かせないようにね」
ヤマトとニコ。2人の距離は近い。
リンネはジッと見つめる。
「嫌だな…」
やっと手に入れた。
前まではなにも思わなかったのに。
なんで今は嫌なんだろう…
ニコも大好きなのに。
「ねぇ、サクヤ」
顔をあげる。リンネの目線はヤマトただ1人。
「大好きっていろんな感情があるの?」
「そうだな…けど、あの2人は…」
聞こえてないかのようにただ見つめる。
「リンネ」
名前を呼ばれサクヤを見る。
「あの2人はなにもない。だから大丈夫だ。ヤマトはお前のことが好き」
わかってる。わかってるけど、
ボクはずっと君を…ヤマトを独占していたい。




