水族館
約束の時間。そこに行くと、銀髪の少女が立っている。
いつものパーカー。
けど、短パンではなくミニスカート。
急いで向かう。
「すまねぇ、待った?」
銀髪を靡かせながら横を向く。
綺麗な金色の瞳。
「待ってないよ。ボクも今来たところ」
リンネはヤマトの元に行く。
「行こう。今日はどこ行くの」
「あー…決めてなかったな…ただ2人だけで会いたかったから」
「そうなんだ…じゃあ…」
リンネは振り返る。
「ボクの行きたいところに行こ」
手を引かれる。向かったのは、
水族館
「水族館?」
「そう。美味しそうだと思わない?」
「待って?水族館の魚を飯候補として見てる?」
リンネの天然さには驚かされる。だが、それも心地がいい。
「イルカショーだってさ。見てみたい」
「夜の方が綺麗みたいだな。夜行くか?」
「そうだね…その間、全て周って制覇しよう」
無表情。けど、どこかで楽しそうにするリンネ。
「今日はいつもと服違うんだな」
「そうかな。たまにはオシャレしようと思って…けど、このパーカーだけは外せない」
大事そうにパーカーを見つめる。
「リンネ」
顔をあげると手を伸ばすヤマト。
「行こう」
自然と手を出す。
しっかり握られた手は離さない。
滲む体温。
リンネは離さないように指を絡める。
ヤマトは肩を震わす。
「…リンネ?」
「ん?」
口元を押さえ小さなため息が出る。
「本当に期待してしまう…」
「何か言った?」
「いや…あ、ほら。いっぱい魚いる」
「サメいるのに食べられないのかな…あの魚たち」
「水族館はちゃんと餌が与えられサメは常に満腹状態。それに相性の悪い魚を同じ水槽に入れることで防いでるんだよ。あの魚たちはアジとかイワシ。集まって食べられないようにしてる」
「物知りだ…アジとかイワシ…美味しそう」
「まだ言ってらぁ…」
「弱い魚も集まれば強くなる…どこの生き物も一緒なんだね」
「そうだな。次行く?」
「うん」
2人は次々、魚を見る。綺麗に泳ぐ姿はリンネの目を輝かせる。
「見て、ヤマト。クラゲがいる」
子供のように興味津々のリンネに目を奪われる。
「クラゲか。俺このクラゲ好きなんだよな」
「どれ?」
「ベニクラゲ」
「ベニクラゲ…?」
ヤマトはガラスに手をつけ見つめる。
「こいつには寿命という概念がない」
「正確には若返るんだ。それを繰り返して生きている」
「俺はこいつみたいに永遠に仲間たちと過ごしたい。誰も死なせたくないんだ」
「…それは、ボクも一緒だよ」
リンネはヤマトの隣に行き、クラゲを見る。
もう、誰も死なせない。誰も失いたくない。失うのは"なゆた"という記憶だけでいい。
「次、見る?」
「うん、行こう」
ふと、屋台が見える。
「お腹すいた」
「あそこの屋台行くか」
2人は屋台のたこ焼きを食べる。
「水族館でたこ焼きって…また可哀想な…」
「そういえば、タコもいるのかな」
「あとで見てみようぜ」
ベンチに座り、ふとヤマトを見る。
風に靡く髪。
吸い込まれそうになる赤い瞳。
「ねぇ、あれ」
リンネは指を指す。そこにあったのは射的。
「1等はペンギンのぬいぐるみ…」
「よし!取れるまでやるぞ!」
食べ終わり手を引く。リンネとヤマトは鉄砲を構える。
目を閉じ集中。
色んな武器使ったけど、銃は初めて⎯⎯
その瞬間、
撃たれる父親。
向けられる銃口。
血飛沫。
「……っ」
リンネは指が震える。
「っしゃ!1等楽勝!って、リンネ?!」
青ざめるリンネの肩を掴む。
「大丈夫か?!」
「だい、じょうぶ…」
無意識にヤマトの裾を掴む。
リンネは深呼吸をし落ち着く。
「ごめん、もう大丈夫」
背中をさする顔は混乱。
「なにかあったか…?」
「なにもない…大丈夫だよ」
ペンギンのぬいぐるみ。
ヤマトは迷うことなくリンネに渡す。
「これは俺からのプレゼント」
「…ありがとう」
嬉しそうに両手でぬいぐるみを抱く。
「君に奢られてばっかだ」
「いいんだよ。俺が奢りたいの。そろそろイルカショーの時間か…1日経つのは早いな」
「そうだね。行こう」
2人はイルカショーに向かう。
ヤマトは深呼吸をし、歩き出す。




