もう少しの我慢
「リンネ、シェリーの意味知ってるのか?」
「…知らない。けど、名前可愛かったから」
「そう、か…」
それでも、シェリーは期待してしまう。
「明日は時間あるか?」
「明日…うん、あるよ」
「じゃあ、また10時にいつもの場所に来てほしい」
「…わかった」
「それより注文…」
「なんだ、注文か?」
サクヤが現れる。
「作ってくるからヤマトは───」
「ダメだ。これは俺が作る」
ヤマトはすぐカウンターの裏に行き作る。
「なにを注文したんだ…?」
わけの分からないサクヤは眉を顰める。
リンネはふと笑い指を口に当てる。
「内緒」
「そう、か…」
「お待たせしました」
綺麗な赤い液。
リンネはグラスを見つめたあと、ヤマトを見る。
「君の髪と一緒だね」
「…っ」
この人は本当になんでこんなことを平気で…
綺麗な銀髪
綺麗な金色の瞳
なぜか全て奪われる。
「ヤマト、まだ営業中だ。仕事するぞ」
サクヤの言葉に足を動かす。
「リンネ、俺は───」
"兄ちゃん"
「…っ?!」
突然響く声。
直接脳内に響く柔らかい声。
咄嗟にリンネを見る。
「今、なにか言ったか…?」
「…?いや、なにも言ってないよ」
「そう、か…」
汗が流れる。
知らない声。
なのに、
リンネに似た何か。
あれは誰?
「ヤマト」
リンネの声。
「お酒、美味しいよ」
その言葉に、先程の声はかき消される。
「それは、よかった」
「じゃ、ゆっくりしてってくれ」
「うん」
ヤマトは他の客から注文を取る。
それを見つめるしかできない。
「リンネちゃーん」
ニコが抱きつく。
「はぁ〜リンネちゃん癒しだわぁ…こんな小さい子がお酒大好きだなんてそんなのギャップよ?変な男に連れてかれないか心配だわ…」
「ニコ…その柔らかいやつ当てるのやめて…」
「今日は何飲んでるの?」
「これはシェリー」
「シェ…っ?!だ、だだ誰に作ってもらったの?!」
リンネはヤマトを指さす。
「ヤマトォ!!!あんたリンネちゃんに何作ってんのよ!!」
「何の話だよ!ってそれ?それはぁ…あー、リンネからの注文だよ」
すぐリンネを見る。美味しそうに飲むリンネは首を傾げる。
「あのね…シェリーの意味はとても危ないのよ?」
「ニコは物知りだね」
「リンネちゃんはヤマトのこと好きなの?」
「…」
リンネは少し黙りヤマトを見たまま。そして、ゆっくり目を閉じる。
「好きだよ。本当に大好き」
リンネの表情を見て何も言えなくなる。
「…そう、なのね…でも!」
ニコは再びリンネに抱きつく。
「ぜーったいあんな男より私の方が幸せにできるわよ?!」
「ニコは女の子でしょ」
「女の子だなんて…っ?!」
ニコは恥ずかしそうにする。
気づけば客も静まる。
「そろそろボクは帰るよ。お酒美味しかった」
「リンネ」
ヤマトは嬉しそうに近づく。そして、優しく頬を包む。
「また明日」
「…うん、また明日」
振り返り店を出る。この帰る時間が息苦しい。
「酒呑童子…ボクはどうすればいいのかな…無力で何も出来ない…さっさと巫女たちを殺して…またみんなの元に…」
風が吹く。
「…そうだね。もう少し我慢だよね」
大鎌を取り出す。目の前には異型。
「我慢するから邪魔しないでよ」
額には角。リンネ…なゆたは無表情に異型を切り裂く。




