シェリー
夜。ヤマトはボーッと外を見る。
「おい、くっそ忙しいの見えんか?働けバカ犬」
「…おー…」
いつもなら言い返すヤマトもどこか抜けている。白夜は呆れた顔をしてヤマトに近づく。
「もしかして、リンネちゃん待っとんの」
「…またスマホ持つべきかこれ…」
「まー!ハイカラな!!スマホですって!俺らに必要ないやろ」
「そうだけどよぉ…」
弱々しくしゃがむヤマトに白夜はため息。
「おい、これ4番テーブルに持っててくれ」
「はいよー」
サクヤから皿を受け取り客に持っていく。
毎日来るって言ってたんだけどなぁ…いや、行ける時は行くって言ってたか…完全な俺の早とちり…最悪だ…
カラン
ドアが開く。
「いらっしゃ───」
「あら!リンネちゃん!」
その言葉に顔を向ける。
無表情の少女。いつもと変わらない大きなパーカーに黒のシャツ。
「忙しそうだね」
「リンネ!」
さっきとは変わってヤマトは笑顔になる。
「今日は来ないんかと思った」
「…忙しかったから。お腹すいたしお酒飲みたいしここかなって」
「なんか飯作るよ!俺の奢り」
ヤマトは嬉しそうにキッチンに行く。
リンネはいつもの席。
「リンネちゃんが来ないってずっと上の空だったのよあいつ」
「そうなんだ…悪いことしたね」
「リンネちゃーん!これでやっとヤマトも機能するわ!ありがとさん」
「白夜…あの人、そんなに落ち込んでたの…?」
「せやで〜?ずーーっと外見て鬱陶しいかったわ…何飲む?」
「ウイスキーフロートがいい」
「……おっけ!サクヤくんに言ってくるわ!」
「絶対なんのカクテルか理解してないでしょ…」
「バレた?まだお酒には慣れへんの」
白夜はサクヤの元に行き注文を言う。
リンネはただ空を見て昨日の事を思い出す。
そんなの分かってる。距離が近いって…離れるべきだって…そう思っていたのに…
「ボクはまたここに来てしまう…」
「リンネ?」
目の前にはヤマト。
「これ、俺特性チャーハン。調味料にこだわったんだけど食べてみてくれ」
「美味しそう…」
「これはカクテル。ウイスキーフロートね」
「ありがとう…いただきます」
手を合わせ1口。
「美味しい」
「だろ?よかった。口に合って」
嬉しそうに笑うヤマトにリンネは見つめる。
もっとこうしてたい。
この時間を過ごしたい。
けど、
離れなくちゃいけない。
感情が混ざって呼吸をするのが苦しい。
「……ほんと、美味しいなぁ…」
一滴の涙。ヤマトは目を見開く。
「リンネ…?!どうした?!」
「何も無い。今日は少し疲れたみたい」
涙を拭いまた食べる。
「ボクは…もっとみんなと───」
その瞬間、店内の妖気が荒れる。
4人は顔を顰める。
「まさか…」
帳が降りる。
「最近、帳が降りること多くない…って、まって…リンネちゃん!」
帳の中にリンネ。ヤマトはすぐリンネを庇う。
「大丈夫だ…くっそ…」
眠ってもらうか?だが、もう異型が来る気配がする…このままだと俺らが妖怪だってことがバレる…どうすれば…
その瞬間、リンネは電源が切れたかのように倒れる。
「リンネ…?」
その後ろには白夜。背中に札が貼ってある。
「これは人間用。妖怪とかには効かへんけど眠らす札や。眠ったってことは人間なんやろこの子は。さてと、寝てくれたしさっさと倒そうか」
「そうだな…」
息を吐く。それと同時に赤い耳と尾。
空間から大剣を取り出す。
「せっかくリンネが来てくれたっていうのに邪魔すんなよ!クソどもが!」
一気に踏み込み数多い異型を次々なぎ倒す。
「営業中よ!邪魔しないでちょうだい!」
4人は一気に片付ける。
その様子をリンネは横になりながら見つめていた。
異型は全て居なくなり帳も消える。
目を閉じるリンネから札を取りソファで寝かせる。
「…起きるんだろうな?」
「術自体は人間用やから弱い」
その言葉が合図かのように、
リンネはゆっくり目を開ける。
「…あれ、ボク…」
「おはよぉさん!リンネちゃん!具合とかどう?」
「大丈夫…ボク何して…」
「疲れてたんだろ。起きれるか?」
「…うん」
席に戻るリンネを見つめる。
「術は大丈夫ってとこかな…リンネちゃん。妖怪やと思ったけどちゃんと術が発動したってことは人間って考える方がええかもな」
「人間、か…それでも俺はあの子に惚れた」
それだけ言い、ヤマトはリンネの傍に行く。
「お酒貰ってもいい?」
「もちろん。何にする?」
「そうだね…じゃあ、シェリーで」
時間が止まる。
「シェリー…?」
純粋な瞳はヤマトを刺す。
口元を抑え表情を悟られないように。
心のどこかで湧く感情はヤマトを揺さぶる。




