遊園地
暑い日差しが刺す。
ただボーッと遠くを見る。
予定の時間よりまだ10分前。
「早いね」
声がする。見上げると綺麗な銀髪。
「楽しみだったから」
笑い、立ち上がる。
少女は無表情。
それでも俺はこの気持ちに逆らえない。
「どこ行くの?」
「楽しいところ」
俺は、ただ出会って間もない少女に惚れた。
惚れたと分かったのは歳が4つしか変わらないと知った時。
色んな女性と付き合った。
けど、
付き合っても楽しくなかった。
当時は理由がわかっていた。
なのに今は分からない。
「どうしたの」
覗き込まれる。
「なんもない。リンネも早いな来るの。まだ10分前だって言うのに」
「人を待たせるのは好きじゃないから」
夏なのに大きいパーカー。前は開けてあり中から黒のシャツが見える。
「で、どこ行くか聞いていい?」
「それは…着いてからのお楽しみってやつで」
「えぇ…」
リンネは眉を顰め息を吐く。
「そのパーカー…暑くねぇの?めちゃくちゃでかいけど」
「暑い。けど、脱ぎたくない」
「暑いんかよ。そりゃあなんで?」
「貰ったから」
ズキッと胸が痛む。
「それ、は…恋人とか…?」
「違う。恋人はいない」
即答。その言葉に肩を下ろす。
「よかった」
「よかった?」
「なんもない。こっちの話しだ。あ、ほら着いた」
リンネは前を見る。現れたのは、
「…遊園地?」
「そう。客からチケット譲ってもらってさー、行く人いなかったんだよ」
初めての遊園地。
「人多い…」
リンネは無意識にヤマトの袖を掴む。
「人気な所だからな。…はぐれないように手繋いでいい?」
「…随分と大胆なんだね…けど、いいよ」
手を繋ぐ。
「…」
ジッと手を見つめる。
懐かしい感覚。
懐かしい大きさ。
この少女に出会ってからそんな気持ちになる。
俺は何を忘れてる?
「何するの?」
「あー…じゃあ、やっぱ最初は…」
ジェットコースターの列に並ぶ。
リンネの目が揺らぐ。
「次の方どうぞー!」
呼ばれ座る。初めてのジェットコースター。
リンネは恐怖に包まれる。
「手、握るか?」
横を見ると優しい顔。そっと手を伸ばししっかり手を握る。
機械が動き出し進む。
心臓が大きく早く鼓動を打つ。
頂点
一瞬止まったと思えば一気に下がる。
「…っ?!」
リンネはギュッと目を閉じる。初めての浮遊感が気持ち悪い。
握られる力が強くなる。
そっと目を開け横を見るとヤマトが楽しそうに笑う。
気づけば長くて短いジェットコースターは終わった。
「あー、楽しかった!どうだった?」
「怖かった…早かった…気持ち悪い…」
「あっはっは!そりゃあよかった!次何にする?」
「まだ乗るの…?」
「当たり前だろ?ほら行こうぜ!」
太陽のように眩しい笑顔。リンネは目を細め歩き出す。
すると、
カチューシャを付けた人達。
「あれは何をつけているの?」
「カチューシャか?あー、ここではそれも人気なんだって。俺は恥ずかしくて付けれねぇけど」
そんな耳付けなくたって犬の耳はもう付いてるし…今は隠してっけど…
「可愛いねあれ」
「…付けたいの?」
「1人でつけるのは恥ずかしいからいい」
「じゃあ、一緒に付ける?」
リンネは少し嬉しそうに店に向かう。
「リンネはこれとか似合いそう」
「じゃあ、君はこっちね」
お互いがお互いのカチューシャを選び付ける。
「似合ってんじゃん!可愛い」
「…どうも…」
リンネは恥ずかしくなり取ろうとするが、嬉しそうに付けるヤマトを見て手を下ろす。
「次はー…リンネ?」
リンネは立ち止まりジッと何かを見つめる。駆け寄り目線を向けるとアイスクリーム屋。
「食べる?」
「食べる」
「いらっしゃいませ!あら、お揃いのカチューシャなんてカップルですか?」
「カッ?!プルではないですね…えーっと…抹茶のソフトクリームと…リンネは?」
「イチゴミルクソフトクリームください」
「はーい!お待ちください!」
「これ、お揃いのやつだったんだ…」
「な、全然知らずに付けてたわ」
「お待たせしましたー!抹茶のソフトクリームとイチゴミルクソフトクリームでーす!それでは楽しんで!」
椅子に座り1口食べる。
冷たく甘い味が口いっぱいに広がる。
「うっま」
「イチゴミルクにしてよかった…」
「リンネは甘いもん好きなんだな。そういえば初めて会った時もパフェ食ってたな…」
「甘いものは好き。特に好きなのは和菓子。団子とかたい焼きとか…」
たい焼き
団子
"半分こ"
"2個も食べる"
頭にかかるノイズ。
あれは誰と話してた…?
「ヤマト」
名前を呼ばれハッとする。
「それ、1口ちょうだい」
「あ、あぁ。いいよ」
カップを渡そうとするとリンネは口を開く。
すぐに察しスプーンでひとくち掬い、食べさせる。
「…苦い、けど…美味しい」
「これが苦いとはとんだ甘党だな」
「はい。ヤマトにもあげる」
ヤマトも口を開け食べる。
「イチゴミルクも美味いな」
暑いのにソフトクリームのせいで体は少し冷える。
食べ終わり2人は立ち上がる。
「さーてと!どんどん周るぞ〜!」
「…うん。そうだね」
ずっと楽しそうにするヤマトを見てリンネは少し、
悲しそうに笑う。




