リンネ
「ったく、遅かったじゃない」
「わりぃって」
ニコが腕を組み不機嫌そうにヤマトを見る。
そこにサクヤがやって来てため息を吐く。
「ポテサラが間に合ったからいい。2人とも準備しろ」
「はいはーい」
「それよりヤマト」
「ん?」
ニコは手を顎に当て、ジッとネックレスを見る。
「それ、いつから付けてたの?」
「…あー、これ?分かんねぇんだよな。気づいたら付けてたって言うか…」
「大切な人から貰ったってことだけは覚えてる」
「なによそれ。また彼女でも作ったの?」
「ちげぇよ。彼女とか今は要ら───」
ふとリンネの顔が浮かぶ。
「そうだな…彼女はいないけど、」
「いい女だなーって奴は1人いるかな」
「へー、ヤマトが?女性に対して?いい女と…言い寄られていつもその場のノリで付き合うあんたがいい女ねぇ…」
ニコは揶揄うように笑い、キッチンの中に入る。
「俺ってそんなんだった?!」
ヤマトもカウンターに向かい、酒の準備をする。
「ほな、開けるで」
営業中の看板を立てる。
しばらくすると、扉が開く。
そこには、
銀髪の少女。
ヤマトは目を見開く。
「リンネ!」
嬉しそうな声。すぐリンネの元に行く。
「来てくれたんだな!」
「君が来いって言ったんでしょ」
リンネは周りを見渡す。
金髪の青年
桃色の髪をした女性
黒髪の片目を隠した青年
「あら?あらあら?随分と可愛らしいお客さん!…成人してるわよね…?」
「してますよ」
リンネはカウンターの端の席に座る。
「ちょっとヤマト」
ニコはヤマトを呼びカウンターの下に屈む。
「もしかして、いい女っていうのあの子…?ロリコンなの?あなた」
「それ悪口だからな?そうだよ。昼間会って一目惚れした」
「珍しいこともあるのね」
「すみません」
呼ばれる。向かおうとすると白夜が向かう。
「はぁい。なんでしょうか」
ニコニコと笑顔で接客。リンネはジッと見つめる。
「初めまして…」
その言葉になんの疑いも無く、
「初めまして!お店の店員さんにそんなこと言う子初めて見たわぁ…おもろい子やね」
「おい、白夜…」
後ろからヤマトの声。振り向くと肩を震わせる。
「そいつは俺の客だ。俺が接客する。散れクソ狐」
「はぁ?!呼ばれたから注文取ろうとしただけですけど〜?それが嫌やったら横におったらええやろバカ犬」
ギャーギャーと喧嘩する2人にため息が出る。
「狐と犬…同じイヌ科なのに喧嘩するの面白いね」
その言葉で2人の動きが止まる。
「…え?」
「なんで、俺らが────」
「自分で言ってたでしょ。クソ狐とバカ犬って。確かに、金髪のお兄さんは狐っぽいし、ヤマトは犬っぽい。ピッタリだね」
「けど、バカとかクソとかって言葉は良くないんじゃないかな…」
「ご最も…」
「お嬢さん名前なんて言うの?俺は白夜」
「リンネ」
「リンネちゃんね!何飲む?」
「んー…」
リンネはヤマトを見る。
そして、
「キャロル」
ヤマトは目を開く。
「それは…」
「キャロル?人参?」
白夜は首を傾げる。
「ちげーよ、人参はキャロットな。わかった。今作ってくるから待っててくれ」
ヤマトはカウンターの中に入り手際よくカクテルを作る。
チラッとリンネを見る。肘をつき静かに外を見る姿は懐かしさを覚える。
「はい、お待たせしました。キャロルです」
「ありがとう」
美味しそうに飲む。
「キャロルの意味は────」
「カクテルの言葉ってその場の雰囲気。公式にはないんだよ」
それでも、ヤマトを指名しキャロルを頼む。
ヤマトは心が軽くなる。
「なぁ、明日どっか出かけないか?」
「それは…」
眉を顰める。ヤマトの瞳を見て何も言えない。
「分かった…いいよ」
「やっぱり君のお願いは断れない」
「やっぱり?」
「なんでもない。それより無くなった」
「はっっや!!味わって飲めよ…」
「味わったよ。次はヤマトのオススメで」
そこにサクヤがやってくる。
「…成人済みか…?」
「みんなそれ言う…」
不機嫌そうに頬を膨らませる。幼さが残る顔。
「すまない。こちら、お通しだ」
出されたのは生チョコ。リンネは目を輝かせる。
「甘いやつ…」
「あれ?ポテサラじゃねぇの?」
「幼そうだったからな。まさか成人しているとは…ポテサラの方が良かったか?」
「ううん、こっちがいい」
美味しそうに1口運ぶ。
「はい、こちらホーセズネックになります」
「ありがとう」
リンネはまた周りを見る。
「どうした?」
「ここはいい場所だね。落ち着く」
「本当にな。明日、10時に今日のカフェ前に集合な」
「……わかった」
時間が経つ。
「へー!リンネちゃんって1人で暮らしているのね!」
ニコはリンネに夢中だ。隙を見ては話に行く。
「ニコはこの3人と?」
「そーなのよ…むさ苦しくてしょうがないわ。あなたのような可愛らしい子がいたらいいのに」
「それは…残念だね」
グラスが空になったことに気づく。
「リンネ、なんか飲むか?」
「そうだね。次で最後にする…」
「ブルドッグで」
「ブルドッグね。りょーかい」
月は輝く。
綺麗な金色の瞳。
「お待たせしました」
「ブルドッグ…そうだよ。夢は見た…」
ポツリと呟く言葉は誰にも届かない。
一気に飲み干し、席を立つ。
「じゃあ、また明日」
「楽しみにしてるからな」
会計を済ませそのまま去る。
リンネは少し歩いたところで木の上に座る。
「敵はボクだけでいい。それ以外はボクが倒す。だから、このまま幸せに暮らしてよ
兄ちゃん」
金色に輝いていた瞳は悲しそうに黒く滲む。




