昔話
「ニコたちから連絡がない」
「何かあったのかな…」
応答がない。あの2人ならすぐ返事は返ってくるはず…
「…って言っても俺らもここを離れられねぇ」
なゆたは少し考える。
「クロガネ」
「はっ」
どこからかクロガネが現れる。
「人間界に行き、ニコとサクヤの様子を見てきて欲しい。街のことはボクらに任せて」
「仰せのままに」
なゆたは境界を出しクロガネを送る。
「なにもないといいんだけどな」
「境界ってそんなポンポン出せるもんなん…?」
「さてと…街に行って聞き込みでもしてこよう。お団子屋さんに行かなくては…」
「なゆた?聞き込みが本題やからな?」
3人は街に降りる。
活気溢れる街になゆたはヤマトの袖を握る。
「昨日も行ったじゃねぇか」
「そうだけど…人多いの苦手…」
「とりあえずまぁ、聞き込みと行きましょか〜」
ヤマトと白夜は次々、妖怪に聞き込みに入った。
なゆたは昨日の団子屋に行き座る。
「人多…疲れた…」
「おや、昨日の王様じゃないか」
「ろくろ首の…」
「団子食べてくかい?」
「食べる…!」
なゆたは目を輝かせ団子を待つ。
街は賑やか。
笑い声が響く。
「平和だろ?ほら、団子だよ」
「ありがとう」
「また王様に会えるなんてね。昨日のあんちゃんは一緒じゃないのかい?」
「あっちで聞き込みしてる」
なゆたは団子を食べながら空を見る。
「聞き込み?」
「酒呑童子と茨木童子…あと、祢々切丸に…」
「しゅ、酒呑童子だって…?」
ろくろ首は顔を青ざめる。
なゆたは口を止めジッと見つめる。
「何か知ってる?」
「そりゃあ…封印される前から話してた仲だからね」
なゆたは少し目を見開き、ヤマトと白夜を呼ぶ。
「なゆた?聞き込みしとったんとちゃうん?」
「してる。情報はちゃんと聞いた」
「情報?」
なゆたはろくろ首を呼び、店内に座る。
「教えて、昔のこと…前王、父のこと」
「…今から何百年も前さ、あいつは…酒呑童子は山から街に降りては喧嘩をしてた。そこに前王…茨木童子様も居られた」
「昔は王を決める時、一番強い奴が王になるっていう決まりがあったんだよ。みんなが思った。次の王は酒呑童子だと」
酒呑童子はこの国で一番強かった…けど、なぜ父が王になったんだろ…
「酒呑童子は断ったのさ」
"俺より茨木童子が王に相応しい"
「そんなこと言って茨木童子様が王となった。そこから何十年経ったある日、ある巫女と陰陽師が現れた」
「ひとつの大きな刀を持って」
祢々切丸。
3人は確信した。
「酒呑童子を封印する。そう巫女と陰陽師は言った。一瞬だった。あんだけ強かった酒呑童子があっさり封印された」
「茨木童子様は大暴れしてね。国が崩壊しかけたんだ」
「そこにまた巫女が現れた」
"このまま暴れ続けるのであればお前も封印する"
「茨木童子様は暴れ出すどころか…」
「その巫女を嫁に貰った…それがボクの母親なんだね」
「そうさ。巫女も断ると思ったんだがね…」
"お前の傍に居ればお前は暴れないと約束するか?"
"約束する。お前は美しい"
「茨木童子様の一目惚れだ。そこからすぐ嫁になり子を生した。それが黄泉様だ。意外にも、巫女は逃げもせずずっと」
「愛おしそうに茨木童子様と黄泉様を見ていた」
「…ちょ、おばさん待ってくれ。巫女も妖怪に惚れたって言うのか?」
ヤマトが立ち上がる。なゆたはただ真剣に話を聞いていた。
「そうだね。巫女は街によく降りていた。いい子だったあの子は…人間なのに妖怪にも笑いかけ手を取った。だが、状況は急変した。2人目を宿した時、巫女は妖気に耐えられなくなった。なゆた様が産まれすぐに亡くなった」
「ボクが生まれてすぐに亡くなったのは知っている…」
なゆたは俯き、強く拳を握る。
「ある日、前王は赤ん坊を連れて山に行ったんだ。噂では酒呑童子の封印された場所に行ったとか…」
「もう確信だな」
「ボクの中に酒呑童子がいる…」
「そしてまた陰陽師が来た。詳しい話は城でされてたみたいだからあたしら庶民には知らない話さ。ただ噂では…」
「酒呑童子を封印から解き、殺すと聞いた」
「ありがとう。教えてくれて」
なゆたは立ち上がる。
「もういいのか?」
「うん。なんとなく分かってきた。これからどうするか話し合おう」
ヤマトと白夜も立ち上がり店を出る。
「まぁ…記憶で見たのを少し詳しく聞いたって感じか…」
「ボクの中に酒呑童子がいるならあそこの封印されている場所には何もないってこと?」
「生まれ変わりなのか、ボクの中にいるのか…」
「まぁ、そうなるな…前王はそれを隠すため結界を貼ったと考えるのがええやろ。ヤマト」
ヤマトはただ黙り俯く。
「おーいヤマト」
「え?あ、あぁ…わりぃ…なんだ?」
「酒呑童子となゆたの暴走は繋がっとるかもしれん。それに…」
「祢々切丸を店に置いとくのは危ないんとちゃうか?」
なゆたはハッとしたように顔をあげる。
「ニコたちから連絡ない…もしかしたら危ないかもしれない」
「なんでそう思うんだ?」
「なんとなく…嫌な感じがする…」
「一旦、戻ろう。様子見てまた来ればいい。仲間が最優先だよ」
なゆたの言葉にただ頷く。
境界を出し、また人間界に行く。
◇◆◇◆
「やはり、祢々切丸は返してもらわないとですね」
鉄の匂い
壊れた椅子
割れた酒の瓶
荒れた店内
青い髪をした女性は血を流し倒れる2人の半妖を見下ろした。




