↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
134/181

静かな侵食

「この団子美味いな」


「あそこまた行こう…!」


城に戻り3人は資料を広げる。


「3人だけで調べるには大変だな。そういえばクロガネは?」


「街の警備。王不在で荒れてたから抑えとるんや」


「荒れてる…」


なゆたは口を閉ざし考える。


「何人か、昔からいる妖怪に聞き込みしてもいいかもね」


「そうだな。それより今から行くのか?」


「うん。こういうのは早めに片付けたい」


酒呑童子の過去。3人はそれについて調べる。

ふと白夜はなゆたの指、ヤマトの首に気づく。


「どうしたんやそれ」


「お守りもらった」


「……へー……」

「ちなみにやけど、人間の世界でアクセサリーをプレゼントする意味あるんやけど知っとった??特に右手の指輪」


「知らない」


「……さぁな」


ヤマトは目を逸らす。


(こいつ…っ、確信犯やん!!)


もう何も言うまいと白夜はため息をつく。


「ニコたち大丈夫かなぁ…」


「大丈夫や。あの2人は強い。それより今から行くんやろ。これ」


渡されたのは1つの札。


「俺が独学で調べたやつやから結界を解けるかはわからん」


「でも試してみる価値はある。ありがとう」


なゆたは立ち上がり、お面を付ける。

ヤマトと白夜も立ち上がり外に出る。


暗い道。


白夜は人差し指で狐火を出し、明かりを灯す。

町から離れた山奥。


歩けば歩くほど、


強い妖気が漂う。


「…近いな」


「封印されてもこの妖気…どんな化け物やったんや酒呑童子っちゅーのは」


森を抜けると目の前にあったのは、


鳥居の向こうに見える祠。


「結界が貼られとる」


「大丈夫か?なゆた」


「…うん。やろう」


なゆたは札を結界に近づける。


白い光。


3人は腕で顔を隠す。


その瞬間、


呑まれるほどの強い殺気と妖気。

思わず息を飲み込む。


「無事に結界が解けたみたいやね」


3人は中に入る。


空気が重く、足を進めるので精一杯。


「これが封印されてる祠…」


なゆたは無意識に近づき手を当てる。


その瞬間、


"茨木童子、俺は何れ封印されるだろう"


"その時は──────"


「…っ?!」


意識が戻ったかのように手を離す。


「今の…」


「大丈夫か?!」


「うん…」


祠を見る。

茨木童子と酒呑童子の記憶。


なゆたは拳を握り、もう一度触れた。


"巫女がこの地にやってくる。俺は力を使いすぎた"


"俺が封印されたら俺の魂を"


"宿らせてくれ"


目の前に映る光景。なゆたは目を見開く。


目の先にいるのは、


黄泉そっくりの女性


"貴様がどうしてここに?"


"私は、生贄としてやってまいりました"


美しく紫の瞳は揺れる。


"俺は酒呑童子を封印した貴様が憎い"


"だが、美しさには勝てぬ"


手を取り合う。


「ボクの…母親…」


知らない景色


知らない話


情報が一気に流れ、


なゆたはふらつきお面が落ちる。

倒れそうになる1歩手前でヤマトが支える。


「なゆた…!」


「何か見たんやな…」


「ボクは…」


呼吸が荒い。


動揺で焦点が合わない。


「だ、って…ボクは…酒呑童子なんか…っ」


"お前は俺だろう"


「ちがう…っ!!!」


急に声を荒らげる。

見えない何かと話している感覚。

ヤマトは咄嗟に抱きしめ頭を撫でる。


「なゆた、大丈夫だ。俺らがいる。戻ってこい」


低く重く、


けど、


優しい声。


呼吸は少しずつ正常に戻る。


「なゆた、何見たか覚えとるか?」


思い出す。


思い出そうとすると、


頭痛が響く。


まるで"なにかに"拒否されているかのように。


「一旦戻ろう。封印解いたけど大丈夫だよな?」


「いや、俺のやつで仮封印しとく。来た時すぐ開けられるように」


「わりぃ」


ボーッと魂が抜けたかのようにどこか見つめるなゆたを抱えて戻る。


「ホンマに大丈夫かいな」


「わかんねぇ…何を見たんだなゆたは…」


焦りと不安。


なゆたは何かに焦りを感じていた。


祢々切丸。


「陰陽師と巫女ってどこにいるんだ…」


「わからへん。奴らは俺ら妖怪がたどり着けんよう身を隠しとる。術使っても相性悪い」


「なるほどな…あっちから来ない限りどうすることもできないわけだ」


耳を動かしてヤマトは立ち止まる。

それと同時に白夜は遠くを見つめ目を細める。


「なんか来るな…」


「あぁ、こっちはなゆたがいるってんのに…」


警戒していると現れたのは異型。


「異型?!なんで妖怪の国にいるんだ」


「ヤマト、なゆた連れて先に行け」


「いや、いい。なゆたちょっと揺れるぞ」


なゆたをお姫様抱っこに変え、くるりと回る。そして、異型に思い切り蹴りを入れる。


灰のように消える。


「一体だけか?」


「そうっぽいな。なんでこんなところに異型が…?そもそも異型ってなんだよ」


「妖怪が人間界に出た時、妖力が弱いと潰れて変形してしまうんや。脳が潰されるから知性のない化け物になる」

「俺の異型はただの人形やけどな」


「それがここにいるのはおかしくないか…?」


「なにかが変わってきとる。急いで戻ろう」


2人は足を急がせる。

城が見え肩を下ろす。


「2人とも、無事だったか」


後ろから声。振り返るとクロガネがいる。


「クロガネ…お前も無事だったか」


「先程、急に妖気が暴れだして弱い妖怪が苦しみだしてな。なにか知っているか」


「…っ」


封印を解いたから。


2人はすぐに察しつく。


「これは…なかなかにめんどくさいことになったで…」


苦しそうに眉をひそめ眠るなゆた。


ヤマトはただ抱きしめることしかできない。


「能力さえあったら…俺は…」


悔しい


憎い


人間が嫌い


憎悪


嫌悪


黒い感情が静かに侵食する。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。