新王ここに
目が開けられないほどの晴天。
外には大勢の妖怪が集まりザワついてる。
「そろそろだな。なゆた、大丈夫か?」
なゆたは隅っこに小さくなり震える。
「あんな多く集まるとか聞いてない…」
「いやいやいや、お前が集めろって言ったんやろ…」
ヤマトは傍に行き背中をさする。
「終わったらさ、街に行って美味しいもん食ってこようぜ」
「……うん…」
小さく返事し深呼吸。
静かに立ち上がり歩き出した。
自分より小さいのに背中は大きく見える。
「行こう、2人とも」
2人はなゆたの後ろから着いていく。
目に染みる太陽。目を細め、ゆっくり開く。
そこには、
期待の目
憎悪の目
興味の目
殺意の目
目線が集まる。
震える手を握りしめ前に出る。
「…」
ザワザワとする会場。なゆたは目を透かし真っ直ぐ見つめ手を前に出す。
「静まれ」
"圧"
その圧に圧倒されザワついていた会場が一気に静かになる。
大きく息を吸う。
「8年前、前王である茨木童子が人間に打たれ王不在の日が続いた」
「半妖と人間を生み出した前王は非難されながらも王座に座り国の平和を願った。だが、」
「人間の手によって殺された。我ら妖怪が人間にやられっぱなしでいいのか」
「このまま黙ったままでいいのか」
「思うところはないのか?」
「半妖である我は思う。人間にひと泡吹かせてやりたいと。だが」
「私1人ではどうすることも出来ない。そこで貴様ら力が欲しい。よって、」
「私は王となり、貴様らの鉾となり盾となりこの国を守ることを誓う」
「不満、従えない、そんな気持ちがあるなら…」
なゆたは黒い霧から刀を取り出し剣先を前に出す。
「相手してやる。勝った者を王として認めよう」
「我らは妖怪だ。人間に恐れられている妖怪。だったら、人間にやられっぱなしだと名誉に傷がつく。我らに楯突く人間を容赦なく打とうじゃないか」
ヤマトと白夜の2人は後ろで手を組み、ただなゆたを見る。
さっきまで小さくなり怯えていた少女が圧を出し大勢の前に立っている。
静寂。
なゆたは小さく汗を流す。
その瞬間、
1つ拍手。
そしてまた拍手。
その場に拍手が響いた。
なゆたは息を吐き、刀を消す。
「…ボクは…泣き虫でいじっぱりで1人じゃ何もできない…だから、みんなボクのこと助けてね」
いつものなゆた。その"いつも"を大勢の前に見せる。
だが、
次の瞬間、
1人の妖怪が前に出る。
その妖怪は"大嶽丸"
大きな体はなゆたを覆う。瞬時にヤマトが剣を握るもなゆたに止められる。
「俺は認めん。女でまだ子供…しかも半妖だと?笑わせるな」
「そんな差別必要ないと思うけど」
「さっき言ってたな?お前に勝ったら王になれると。なら、勝負しようじゃないか」
「…大嶽丸。同じ鬼として嬉しく思うよ。いいよ。やろうか」
「ちょうど、ボクが本当に王として相応しいのかみんなに見てもらわなきゃ」
なゆたは刀を出し、前に突き出す。
「いいよ。いつでも来て」
大嶽丸が地面を蹴る。地面は割れ、なゆた一直線に殴りかかる。
だが、
なゆたはゆらりと交わし大嶽丸の背中を刀の頭で殴る。すぐさま腹に蹴りを入れる。
蹲る大嶽丸を見て刀を肩に乗せる。
「妖怪の中でも恐れられた大嶽丸…まだやれるだろう?かかってきなよ」
「ボクを倒して王になりたいなら全力で」
なゆたの表情は余裕そうに見下す。
起き上がり斧を出す。
「そうこなくっちゃ」
両者どちらともなく地面を蹴り武器を振るう。
「ほら、女の子供で半妖のボクに押されてるよ。がんばれがんばれ」
「舐めやがって…っ!」
足が地面に沈む。重いなゆたの刀は離れることがない。
「このあと、買い物行きたいからお終いね」
斧から刀を離し見えない速さで首を狙う。
切られる。
そう思ったが首は切られない。
切られる手前で止める。
「大事な仲間を殺す訳にはいかない」
大嶽丸は目を伏せ斧を仕舞う。
「俺の負けだ。あんたを…いや、貴女様を王として認め従います」
「よかった。はい、仲直り」
なゆたは小指を絡め元の位置にもどる。
「今日からよろしく。みんな」
"半妖だから"
そんな概念が壊れた音がする。
なゆたは振り返り中に戻る。2人も後を追いかけ玄関門が閉まる。
その瞬間、
なゆたは地面に寝っ転がる。
「なゆた様?」
「疲れた…怖かった…」
さっきまでの王の姿とは思えないほど小さく弱々しく床に伏せ、寝っ転がる。
ヤマトは横に行き持ち上げる。
「床、汚いから」
「う"ーん……」
嫌そうな顔をするなゆたを抱え王座に座らせる。
「よくがんばったな。えらいぞ」
頭を撫で褒める。
「ほんとにがんばった…なんで半妖なのにみんなあっさり受け入れるの…」
「それは半妖だからじゃなくてなゆただからだろ。皆はなゆたを認めたんだ。長い言葉言えて偉いなぁ」
わしゃわしゃと頭を撫でる。
「ほんま、よぉやるわ。俺らがおらんくても大丈夫やったんやない?」
「……そんなことないよ」
なゆたは俯き小さく呟く。
「2人が後ろにいたお陰で頑張れたんだ。だから、」
顔を上げ優しく笑う。
「ありがとう」
笑う顔が増えた。
表情が柔らかくなった。
最近は特にそう感じさせられる。
だから、
俺も嬉しい。
「こちらこそ、俺の妹でいてくれてありがとう。なゆた」
そこでお腹が鳴る。
犯人は、
「……いっぱい喋って無駄な交戦したらお腹すいた…」
「早く街に降りてたくさんなんか食べよう」
その言葉に2人は吹き出す。
「ほんっと気が緩むなぁ!お前とおったら」
「よーし!街行ってなんか食ってくるか!」
わけのわからない2人になゆたは眉を顰める。
けど、
これはまだ始まったばかり。
序の口。
本当の戦いはこれから始まる。




