ニコラシカ
静かな店。
日が沈む。
「みんないる?」
階段から降りてくるなゆた。
その格好は店の服ではなく軍服。
「話があるんだけど」
なゆたは椅子に座り全員を見る。
「ここはボクらがボクらで居れる場所。なのに何回も何回も邪魔される」
鋭く冷たい視線。
「さすがに黙って受け止めるのももうめんどくさいよね」
「どうするつもりや…?」
「ボクはなんだと思う?」
「俺らの王だ」
サクヤが静かに答える。
「そう。ボクは王になった。なのに妖怪を纏められていない。あの国に全然行けてない。それが王と名乗っていいものなのか」
静かに立ち上がり、振り返る。
なゆたのマントが風に舞う。
「ボクは一度、あの国に帰り…」
「王としての役目を果たす。王になりましたってだけが王とは名乗れない。妖怪を纏めての王だ」
「そう、父がそうしてきたように」
ヤマトの目が開く。
目の前にいるのは妹でも仲間でもない。
妖怪の王。
威圧
空気が重くなる。
「なゆ、た…」
「店はしばらくしない。白夜とヤマトは一緒に着いてきて。ニコとサクヤはボクたちの居場所を守っていて」
「もし、敵が来て壊されそうになったら、その時は…」
「容赦なく殺せ」
「邪魔者は排除しろ」
「徹底的に守り抜け」
「仰せのままに」
なゆたは小さくため息を吐く。
「ここは、ボクらが笑っていられる場所なのに…」
「なゆた」
振り向くと手を握られる。
「もう行くよ。服、着替えて──」
「まだこの服を着ている間に…」
「お前は王だけどそれ以前に俺の妹でもあるんだ。1番近くで支えさせてくれ」
なゆたは王の顔ではなくいつもの顔で小さく笑う。
「そのつもりだよ。兄ちゃん」
手を離し階段を上がる。
「本当に人間でも殺していいのよね?」
「いいよ。誰であろうと殺していい。白夜」
着替え終わった白夜が手袋をはめる。
「ここら辺一帯に結界貼れる?」
「お易い御用や」
狐火から札が現れ床に貼る。
「これでこの店周辺は人間が入れん。入れた場合、ただの人間やないってことや」
「ありがとう」
なゆたはキッチンに行き、カクテルを作る。
お盆に乗せ机に置いた。
「それは?」
「これはニコラシカ」
なゆたは黒い霧から短剣を出す。そこにヤマトも戻ってくる。
「…なゆた?」
なゆたは短剣で自分の手のひらを切る。
慌てて止めようとするもなゆたに止められる。
そして、
溢れた血を1滴ずつグラスに落とす。
「ボクの能力が入ってる。妖力があがる。ヤマト、君に能力が無くても飲んで。ボクの血でそれぞれが繋がる」
「離れていても声が届く」
「なゆたの血入りとか重いなぁ」
「重い…?ってなに?」
「なゆたとヤマトみたいな人のことや」
「お前からも血を出させてやろうかクソ狐」
「上等やコラ。やってみぃや」
なゆたはジッとグラスを見つめる。
「ニコラシカの意味は…まぁ、いいや。必ず平穏な日常を取り戻す」
グラスを上げ他もグラスを上げる。
「勝利を願って」
「乾杯」
一気に飲み干し、グラスを置く。
「ここ来てからいろんなカクテル飲むよぉなったわ」
「これからもボクが作ってあげるよ」
「だから、行こう」
なゆたは手を前に出す。
次の瞬間、
境界が現れる。
静かに門が開く。
「じゃあ、行ってくる。留守を頼んだよ2人とも」
「気をつけて」
なゆたとヤマト、白夜は歩き出し妖怪の国に向かう。
静かな空間。
強く拳を握り一歩一歩力強く進む。




