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XYZ

「狐、これ4番テーブル」


「はいはーい」


流しに背を向けた瞬間、


「サクヤ、キュウリと梅のたたき。あと、生ハムのポテサラ1つ」


なゆたが注文を取っている…?


サクヤは驚きで目を開く。

首を傾げるなゆたは伝票を置きホールに戻る。入れ違いで白夜が戻ってくる。


「珍しくなゆたが動いとんな…槍でも降ってくるんちゃう…?」


「あぁ…本当に降ってくるかもしれん…」


チラッと覗く。客に注文を聞く姿。


「前に進めたんかいな。あんたらは…」


「狐、空いたグラス持ってきてくれ」


「はいはーい」



酔った客ってこんなめんどくさいっけ…


なゆたは客に絡まれている。


「連絡先教えてよ。いつも座ってたし話しかけれなかったんだよね〜」


「ご注文は」


「君で」


「はぁ…」


めんどくさい。早く帰ってくれないかな…


「すみません、決まったらまた来るんで」


その場を去ろうとする。

だが、手を掴まれ動けない。


「君、何歳?高校生っぽそうだけどバイト?」


「…」


その時、


後ろから声。


「すみませーん。うちの従業員に何か用ですか」


振り返るとヤマトが立っている。静かに近づきなゆたを引き、胸の中に収める。


「こいつ、俺のなんでナンパは辞めてもらっても」


「おにーさんの?ロリコンなの?」


「この子はしっかり成人済みなんで。あ、なんならこの子と飲み比べします?無限にテキーラ飲みますけど。帰るか潰されるか選んでください」


男2人は居心地悪そうに帰る。


「大丈夫か?」


「うん」


「今日は偉い日だな。何かあったか?」


「…たまには動こうかと思って」


身体を離し、頭を撫でる。


「無理だけはすんなよ。あと、ああやって絡んでくるやつがいたら助けを呼びな。すぐ駆けつけるから」


「わかった」


頷き、また注文を取りに行く。

ヤマトもキッチンに戻り料理を運ぶ。


「大丈夫だったか」


「おー、なんとか。今日はみんな働くなゆたに夢中だよ」


「珍しいこともあるんだな」


「ほんと、槍でも降ってくるんじゃね?」


閉店間際。客も落ち着きを見せている。

なゆたは隙を見ていつもの位置で顔を伏せていた。


「ヒメ〜!助かったわ!ありがとう!」


「ニコはいつもこんな大変なことしてるんだね…」


「大変じゃないわよ?むしろ、色んな人とお話出来て楽しいわ」


「…変わってる…」


「お酒飲む?」


「飲む」


ヤマトが来る。

コトッとグラスを置く。

鮮やかなオレンジ。


「これは?」


「アプリコットクーラー。サクヤからだ」


「美味しそう」


炭酸と柑橘の酸味。


いつもゆっくり飲むなゆたが一気に飲み干す。


「美味しいこれ」


「俺もなゆたにカクテル作ってこようかな」


なゆたが立ち上がる。


「じゃあ、ボクも兄ちゃんたちに作る」


そう言いキッチンに向かう。そこには食器を洗うサクヤ。


「どうしたなゆた」


「カクテル作る」


「それなら作るから待ってろ」


「ちがう。ボクがみんなに作る」


迷うことなく、酒を取り出し手際よく作る。


「なゆた、酒作れるんかいな」


「忙しい時は自分で作ってる。酒の作り方を勉強してた」


「いや、忙しい時は働き…?」


次々出来上がるカクテル。一人一人に渡す。


「ニコにはピンクレディ、サクヤにはジンバック、白夜にはキールロワイヤル」

「そして、兄ちゃんにはXYZ」


「へぇー、美味しそう。なんやって?キール…?」


「キールロワイヤル」


客はいない。


「なゆた」


グラスを渡される。透明なカクテル。


「ジンライムだ」


「ジン好き」


5人はグラスを持ち、乾杯する。


コトン、と


透明な音が店内に響く。


「やっぱヒメが作るお酒丁度ね。美味しい」


「アルコールを弱くしてあって飲みやすいな」


「……XYZねぇ」


「どうしたん?ヤマト」


「いや?何もねぇよ。ほんと、良いカクテルだな」


嬉しそうにグラスを見つめる。


カクテルの言葉は公式じゃない。


それでも、


XYZを選んでくれたのは心が踊る。

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