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互いの本音

「あ、そっか」


なゆたから殺気が消える。


なんて思った瞬間、


なゆたは刀を取り出す。


「本で読んだ。ショックや刺激があると生き物は脳が刺激されて記憶が戻るって」


なんで今までやらなかったんだろう


刃先を自分に向ける。


「兄ちゃんは絶対ボクが守るから」


思い切り刺す。


そのつもりだった。


刺す寸前で止められる。


「……なんで…なんで止めるの」

「兄ちゃん」


ヤマトが止める。


「なにしてんだよ」


冷たく鋭い言葉。


「関係ない」


「関係ないわけないだろ。何してんだよ一体」


俯く。


本気で怒っている声。

刀を離すと黒い霧の中に消えていく。


「兄ちゃんはボクをどうしたいの」


「適切な距離だろ」


「適切って何?」

「言われたから?言われたから距離を取るの?」

「そんなの兄ちゃんが望んでいるの?」


「なゆた、俺はお前の兄だ。兄なら兄らしくしなくちゃいけない」


なゆたを握る手が強くなる。


「兄、らしくってなんだよ…」


手を引き離しヤマトと距離を取る。

ヤマトは近づこうと1歩踏み出す。


次の瞬間、


「来ないで!!」


大きな声。

その言葉に足を止める。


「ボクには兄ちゃんしか…ヤマトしかいないのに…またボクから離れていくの…?」


「ちがっ…そうじゃ────」


「だってそうじゃん!!」

「傍にいるって嘘だったの…?兄様みたいにボクがヤマトを殺してしまうから…?」

「それならボクはいなくなったほうが───」


「いい加減にしろ!!!」


ビクッと肩が震える。


「なぁ、俺たちは兄妹だ。けど血の繋がりはない。それでもいいと思ってる。なゆたもそれを望んでる。けどな、」

「俺だって兄である前に男なんだよ」


「意味が、わからない」


「お前が分からないから困るんだ。もし最悪の場合になったら俺は次こそお前の傍に居れなくなる」

「そうなりたくないから距離を取る」

「分かってくれ…」


「ボクは⎯⎯⎯⎯」


「兄ちゃんなら良いって言うな。自分を大事にしろ」


わからない。なんで距離を取りたい…?


なゆたの目が揺れる。


「もし、なゆたが俺に痛くされ苦しくされ、ただの兄妹として見れなくなった夜があるなら俺はこの百鬼夜から消えなくちゃならない」


ボクが兄ちゃんを苦しめていた…?


「なゆた、俺はお前が好きだよ。なゆたは?」


「ボクも…兄ちゃんが好き…」


「そうか。俺も妹として好きだ」

「そう思ってる」


ヤマトはその場にしゃがみ込む。


「俺は、俺の意思に弱い。あのクソ母親そっくりだ…いつか理性を失ってお前との関係を殺すようなことがあるとって思うと怖いんだ…」


なゆたはゆっくり1歩ずつヤマトに近づく。


「兄ちゃん」


顔をあげると綺麗な金色の瞳。


「それでも、ボクは…兄ちゃんと一緒にいたい…抱きつかれるのも手を握るのも兄ちゃんとじゃないと安心できない…」


金色の瞳が潤う。


「俺は情けないな…答えが見つかったはずなのに…」


「ボクは、兄ちゃんのこと…」

「誰にも渡したくない」


「それは俺だってそうだよ。白夜に食べさせてもらってたのを見て苦しかった」

「なぁ、俺は汚くてズルくて弱い。なゆたを閉じ込めたいと思ってる。それでもお前はいいか?」


「…いいよ」


綺麗な瞳がまっすぐヤマトを見る。


「ボクは兄ちゃんになら殺されてもいい」


「ほんと…俺らは似た兄妹だな」


弱々しく笑う。


黒い感情をぶつけても笑った。

だから、心地がいい。

お互いがお互いを依存しているから。

きっとこれは兄妹という距離じゃない。

わかってる。


「ボクらシスコンとブラコンでしょ」


「なゆた?それ悪口だからな?誰から聞いた?ぜってぇ白夜だろ」


「次ボクから距離取ろうとしたら白夜にくっつくから」


「それだけは勘弁して…」


なゆたは立ち上がり手を差し出す。

ヤマトは笑い、手を取る。


握られた温度。


やっぱりこの体温と手の大きさが安心する。


「そのパーカーデカくね?」


「これ兄ちゃんの」


「通りで1枚無くなってると思ったよ…暑くねぇの?」


「暑くない。そろそろ兄ちゃんの匂いが無くなったから着て」


パーカーを渡されヤマトは大事そうに抱きしめる。


「俺の匂いって…同じ柔軟剤使ってんだから…」


「いいの」


店に戻るとニコが駆け寄る。


「やっっと戻ってきた!!!見ての通り、店内大慌てよ!!早く手伝って」


ヤマトとなゆたは目を合わせ小さく笑う。


カラン


またドアが開く。


「いらっしゃいませー!」


「ませー」


月が顔を出し、店内は賑やかになる。

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