仲直り
家に戻るとどこかぎこちない空気。
ニコはどう声をかけていいか分からずにいた。
「はい!!」
白夜がいきなり大きな声を出す。
「な、なによ…」
「そんないつまで経っても喧嘩腰やったらなゆたも困るんとちゃうん?仲直りしぃや。ニコちゃんは気にしすぎ。ヤマトは感情に振り回されすぎ。戦いにも影響が出る。この辺にしときや」
白夜の言葉にニコがおずおずと口を開く。
「……ヤマト、その…叩いてごめんなさい。あなた達の関係をずっとそばで見てきたのに、言葉で片付けるのはよくなかったわ。あの子のそばにいてってお願いしているのは私も一緒なのに…」
「俺の方こそ、感情的になりすぎた。すまない。俺はやっぱりなゆたのことを妹として好きだ。これが俺たちの愛情表現。だから、一線を超えそうになった時は、」
強く拳を握る。
「お前らが止めてくれ」
「はい!!仲直り出来たね!!いいで!なゆた!入ってきて!!」
ドアの隙間から顔を覗かせるなゆた。両者を睨む。
「本当に仲直りしたの…」
ヤマトとニコは慌てて肩を組む。
「したに決まってんじゃん!なぁ!ニコ!」
「そうそう!!めちゃくちゃ仲良しよ!ねー!ヤマト!」
ぎごちなく笑う2人を見てやっと部屋に入る。そして、2人の手を繋ぐ。
「喧嘩は良くない。それがボクのことで喧嘩するなら…」
ジッと顔を上げただ無表情。
「ボクはここからいなくなるから」
ヒュッと喉がなる。
「二度と喧嘩しません!!!」
サクヤは安心したように息を吐き、キッチンの中に入る。
なゆたはムスッとしたまま。
「喧嘩して誰かが居なくなるのは嫌だ」
「そうだよな。ごめんな、大人げなかった」
「私の方こそごめんなさい。なゆた。お詫びとして今日、一緒にお風呂入りましょ」
「それは大丈夫。間に合ってる」
「えーーん!!たまには入りましょうよー!!」
「ニコ、無駄に身体触ってくる。怖い」
「お前、次なゆたにそんなことしたら容赦しないからな」
「あら?自分が男で一緒に入れないからって嫉妬しないでくれる?」
またヤマトとニコの喧嘩が始まる。
なゆたはため息をつきながらキッチンに向かう。
「もうあれはほっといた方がいい。これを運んでくれ」
「おいなりさん…?」
「そー!俺特性おいなりさん!食べるやろ?」
勢いよく顔をあげる。
「白夜が作ったの?」
「せやで〜。美味しそうやろ」
「美味しそう…あの2人無視して早く食べよう」
「そうしよか!ほっといて食べようや」
それでもなゆたはヤマトに目を向ける。
ヤマトの和らいだ表情。
それでもどこか隠している。
それでもいい。
ヤマトが横にいるなら。
「…兄ちゃんは……」
「なんか言った?」
「何も無いよ。食べよう。おいなりさんがボクを呼んでいる」
なゆたは目を少し輝かせジッといなり寿司を見つめる。
「2人とも。飯だ。さっさと食べて開店するぞ」
「はーい」
「おいなりさんだ!美味しそー!いただきまーす」
どこか黒くても今が平和ならそれでいい。
その平和を維持させるだけ。
なゆたは外にいるカラスを見て笑う。
まるで、
邪魔しないで
と言ってるかのように。
◇◆◇◆
「桜木くんは妹いるんだっけ」
「はい。年の離れた妹が」
「その妹に抱きついたりキスしたりできる?」
「そんなことしませんよ。気持ち悪い」
神咲はそっと目を細める。
「もし、どちらか壊せばどちらかも共倒れしてくれますかね…」
「兄妹でそんな行為…近親恋愛じゃないですか」
「…そうね」
神咲はただ目を光らせる。赤い犬をただ見つめて。




