迫り来る不穏
「随分ぐっすりね」
「久々に休めたし疲れたんだろ」
なゆたはヤマトにおぶられ眠る。
「それにしても、なゆたがギリ成人超えてるようには見えないわね…」
「ほんとにな」
帰り道、道を示すように星は輝く。
ニコはなゆたを見て少し眉を下げる。
「次は何に悩んでいるのかしら」
「さぁな…」
荷物持ちの白夜とサクヤが後ろから着いてくる。
「こんな日が続くといいな」
「えぇ、本当に」
◇◆◇◆
「如月部隊が全滅…?」
「はい、先程通達がありました」
暗い部屋。
汗を流す。だが、その顔は笑う。
「あの鬼の忌み子か…」
「なんでも、その組織は百鬼夜と聞いております」
「産まれたと聞いた時、驚いたがまさかここまでとは…」
けど、いい。強い方が倒しがいがある。
「忌み子の王。お前はどうやってここに来る」
「陰陽師様なら大丈夫ですよ」
陰陽師と呼ばれた女性は足を組み直す。
◇◆◇◆
なゆたの部屋に行くと祢々切丸が大事そうに置かれている。
なゆたをベッドに寝かせ、そっと祢々切丸に触れる。
「でっけぇな…」
その瞬間、
"なにかあれば酒呑童子はこれで封印する"
"酒呑童子は妖怪の国も人間の国も滅ぼす"
"我々陰陽師と巫女は酒呑童子が生まれ変わった場合、次は消滅させる"
咄嗟に手を離す。
流れてくる知らない記憶。
知らない人物。
「酒呑童子って…」
なゆたを見る。
鬼の中でも格別ってことはどこかでわかっていた。
誰でも知っている酒呑童子。
大昔にいた大妖怪、酒呑童子は人間によって封印され殺された。
「笑えねぇ冗談だな…」
ただ静かに眠るなゆたを見て無意識に拳に力が入る。
なゆたは記憶がなくなってすぐに言った。
"祢々切丸を壊さなくちゃ"
理由を聞いても答えなかった。
「まさ、か…」
冷や汗が出る。
その答えを噛み締めヤマトは静かに部屋を出る。
朝は嫌い。
でも、起きた時のみそ汁の匂いは好き。
下に降りて、
「あ!ヒメおはよう!ぐっすり眠れた?」
「おはようなゆた。今日の味噌汁はなめこだ。顔洗ってこい」
みんなの顔を見るのも好き。
「おはよう。あれ、兄ちゃんは?」
「おー!なゆた!おはよ!」
「きゃあぁぁぁあ!!!ヤマト!!なんで毎回服着てないのよ!!ヒメの目に毒でしょ!!!」
ニコは咄嗟に抱きつく。
「苦しい…」
「全裸ってわけじゃねぇから!!暑いの!!」
「それでも服は着なさいよ!変態!!!」
「海でほぼ裸みたいな水着着てたお前が言うのかよ!」
このうるさい朝は好き。
みんながそばに居てくれるから。
カラン
ドアが開く。
一斉に目線が向く。その先には、
「おはようさん。なんやら騒がしいなぁ…って、お前なんで服着てないん…?」
白夜が立っている。
また、ヤマトと白夜の喧嘩が始まる。
なゆたは目を細め少し微笑む。
「兄ちゃん、恥ずかしいから服は着ようよ」
「なゆたまで?!しゃーなしに着てくるわ…」
いつもの日常。
いつもの朝。
不穏は誰にも気づかれず迫り来る。




