気晴らしに
「気晴らしに付き合って」
ニコにそう言われ着いていき目の前には、
「海…?」
「そ!海も開いたし新しい水着買ったし!オフだし!!!思いっきり今日は遊ぶわよ!!」
次の瞬間、
サクヤが素早くニコにパーカーを着させる。
「ちょっと…なにしてんのよ」
「そんな露出狂みたいな格好やめろ。不愉快だ」
「不愉快ってなによ!」
パーカーを脱ぎ地面に叩きつける。
「ヒメ〜?って、なにしてんの…」
パラソルの下でフードをかぶり小さくなるなゆた。
「暑い…外嫌い…暑い…帰りたい…」
「もー、せっかくの海よ?ほら!日焼け止め塗るからそれ脱いで」
目の前に現れる2つの大きな物体がふわふわと揺れる。
「…………はぁ」
なゆたは自分の胸を見てため息をつく。
「ほらほら〜!脱がすわよ〜!」
「やめてよぉ…ニコの前で脱ぎたくないよぉ…」
メソメソするも無理やり脱がされ日焼け止めを塗られる。
「おーい、ヤマト?」
「…え?あ、あぁ…どうした?」
「なんや、可愛い女でもおったか?」
「そーだな…あの子とか?」
「ええんちゃうん?行く?」
その瞬間、ヤマトの頭になにかが衝突する。
「いっってぇ!誰だよ!!」
振り返るとなゆたがボールを投げていた。
ヤマトを睨みつけながら。
「いや、ははっ…冗談ですよ…なゆたさん…」
焦るヤマトに白夜は指をさしてゲラゲラと笑う。
「だっせぇ!!!」
「どこか行ったら許さない…殺す…」
「やだこの子物騒!!兄ちゃんはそんな子に育てた覚えはありません!」
先程の暗い空気はどこかに消える。
白夜がじっとなゆたを見る。
「にしても、前々から思っとったけど…」
「なゆた…随分とまぁ、可愛らしい体型やな」
その瞬間、今度は白夜の頭に先程のボールが衝突。
「いった!なに?!」
「てめぇ、どこ見て言ってんだクソ狐」
横を見ると冷たい空気を纏ったヤマト。
「いやいやいや、事実言っただけやん!」
「貧乳はな!!価値が高いんだ!なゆたの巨乳なんて想像できるか?!」
「できるわけないやん!!!」
なゆたはサクヤの裾を引っ張り無言で指を指す。その目は、
"あいつらどうにかして"
と言わんばかりの目。
サクヤはため息をつく。
「2人とも、海に入って少し頭を冷やせ」
「とか言って〜、こういうサクヤくんみたいな奴がいっちばんムッツリやったり〜?」
「サクヤ〜!背中に日焼け止め塗って!」
ビキニ姿で抱きつくニコに表情変えず指を指す。
「物心ついた時から"これ"見てるからなにも思わない」
サクヤは手を引かれニコに日焼け止めを塗る。
「あれが勝ち組っちゅーやつか…」
「なんか、負けた気分だな…」
「てか、ニコちゃん…服着てた時から思ったけど戦闘で邪魔やないんかなあれ…」
「知らねぇ…」
白夜は海を眺める。
「なぁ、犬っころ。お前ってやっぱ犬かきしかできひんの?」
「んなわけねぇだろ。殺すぞ」
「何なんこの組織。すぐ殺すとか言うやん…やなくて!やったら勝負しようや」
「勝負?」
「あそこに旗あるやろ?先に泳いであの旗に触った方が勝ち。負けたら、そこらの女ナンパしてくるっちゅーのは?」
「乗った」
2人は腕を伸ばし準備する。
「行くで…よーい、どん!!」
一気に海の中に入り泳ぐ。
そんな2人を横になゆたは座って見る。
「なゆたも泳ぐか?」
「ボク、泳げない…」
「ほらこれ」
サクヤから渡されたのは浮き輪。
「ありがとう」
「あまり遠くに行くなよ」
なゆたは浮き輪を持ち海の中に入る。
冷たくて潮の匂いが鼻を差す。
見上げると溶けるぐらい熱い太陽。
けど、
それが何処か心地いい。
プカプカと波に揺られる。
「祢々切丸…能力…」
水面に映る誰かの記憶。
そして、
赤い空
妖怪の叫び声
泣き声
その泣き声の主は、
ヤマトの声。
ふと気がつくと沖から離れていた。一気に青ざめる。
「ど、どうしよう…戻らないと…」
慌てていると浮き輪が滑る。海に投げ出されるも足がつかない。
やばい…っ、泳いだことないから泳ぎ方知らない…っ
パニックになり溺れる。
次の瞬間、
誰かに抱きかかえられる。
「何してんだ、なゆた」
「ゲホッ、ゲホッ…っ、兄ちゃん…」
「カナヅチはまだ直んない?」
「直るものなのそれ…」
「さぁ?」
なゆたを浮き輪に乗せそのまま運ぶ。
「…ありがとう…」
「海どうだった?」
「…一生海で暮らしていくんかと思った…」
「人魚にでもなるつもりだったのかよ…」
戻ると、サクヤが網で肉を焼いている。
「え、なになに?!BBQ?!」
ヤマトはなゆたの手を掴みそのまま走る。
「花火もあるわよ」
「花火…!」
なゆたは嬉しそうに花火の袋を抱える。
ふと、遠くを見ると白夜が女の子に声をかけていた。
「あれ何してるの?」
「ヤマトとの勝負に負けたんだとさ」
「ほら、なゆたお肉どうぞ」
「ありがとう…」
食べていると白夜が戻ってくる。
「よー、負け狐。どうだった?」
「めっちゃ盛り上がったで。あ、俺にも肉ちょーだい」
「ほら、あんたの分」
波の音が響く。生ぬるい風が頬を伝う。
「俺、飲み物買ってくる」
ヤマトはその場を離れる。
なゆたは気にせず肉を口に運んだ。
「ヒメ、食べたら泳ぎに行く?」
「もう海の藻屑になりたくない…」
「藻屑ってあなた…」
ニコが呆れる横で目線を別に向ける。
2人の女性がヤマトに話しかけている。
「ねぇ、ニコ」
「どうしたの?」
「ニコってナンパをどうやって断ってる?」
ニコは少し考えたあと、笑う。
「恋人いるって嘘を言うわね。彼氏がいるのでーって」
「恋人…彼氏…」
「ふーん」
「ボクも飲み物買ってくる」
だが、足はヤマト向かって歩き出す。
「いや、連れがいるんで…」
「少しだけでもお話しませんか?」
どうしよう。困った。まじでめんどくさい。逃げ出してもいいけど追いかけられたら困るしなぁ…
困っていると腕に誰かが抱きつく。
「ヤマト」
「な、なななゆた?!いや、あの。これは違うくって…」
なゆたは2人の女性を見る。そして小さな口をゆっくり開く。
「恋人になにか用ですか」
「…………へ?」
ヤマトは情けない声を出して固まる。
女性たちは気まずそうにその場を走り去る。
「……なゆたさん…?こ、恋人っていうのは…」
「ナンパの撃退方法。ニコに教えてもらった」
「あ、うん…そういうこと…それよりどうしたんだ?飲み物?」
「ちがう。兄ちゃんが遅いから心配で来た」
ヤマトは笑う。
「じゃあ、2人で行くか」
「…うん」
手を繋ぐ。だが、その手は絡まり恋人繋ぎ。
「…なゆた?」
「これだったらナンパされる心配ない。任せて」
いや、任せられねぇ…戦闘では全然背中預けられるけどこれは不安しかねぇよ…
「不安しかないんですが…」
「不安なんてない」
「ロリコンに見られない?これ」
「大丈夫。身長も変わらない」
「いやいやいや!!40cm以上の身長差あるからね?!俺たち!」
「牛乳飲む」
「牛乳で身長は伸びねぇよ…」
頑なに手を離さないなゆたに諦め、手を握り返す。
伝わる体温、脈。全てが安心する。
「黄泉に怒られないといいけど…」
「何か言った?」
「なんでもないよ。何飲む?」
空はだんだん海が太陽を食している。
みんながいる場所に帰り弄られる。
なゆたはそんな光景を見て、
笑った。




